上 下
48 / 58

第34話 決着と仲直り

しおりを挟む


「ハアッ・・・!!今から私の最高威力の技を使うけど・・・もちろん優しい騎士様は避けないでくれるわよね?」

「なるほど、ギルドで決闘した時の記録でも見たか・・・私の性格をよく分かってくれているらしい」

 かなりの自信だ、考えるに今まで誰も耐えた事ない“必殺”だろう・・・”彼女の本意”は分かっている。

 なら受け止めるしかないな!

「こい、君の”本意”に応えて見せよう」

「そう・・・全部分かっていたのね?いいわ!貴方の力!試してあげる!!」

「“剣士の円舞”(ソード・オブ・ロンド)!!!」

 !?なんだと・・・!最強スキル・・・もとい、お手軽ブンブンスキルとして名高い“剣聖の円舞”(ナイト・オブ・ロンド)・・・の下位互換スキル!

「ハァッ!!終わりよッ!!」

「フッ!!」

 俺がスキルの発動に合わせて剣を振り切ると“パキン”と金属が割れたような音が鳴り響きリゼの姉・・・その剣は半ばから折れていた。

「今のを見切ったの・・・?ありえないわ・・・」

「勝った・・・?あの姉上にヴァルディ殿が・・・?」

「ヴァルディさん!すごいニャ!!!近衛騎士長に勝つなんてニャ!!」

「これで君のお眼鏡には叶ったか?」

「・・・ええ、私の完敗よ・・・私の妹を貴方に任せていいかしら?」

「初めから勝つ気は無かったのだろう?」

 リゼの姉にそう問いかけるとため息混じりに肯定した。

「全てお見通しってわけね・・・でも一つだけ間違っていることがあるわ、私は本気で貴方に勝つつもりだった」

「でも、勝てる気はしなかったわ・・・ただの兵士にはわからないかも知れないけれど、国王陛下の前で見せた貴方の殺気はこの私がすくんで動けない程のモノだったしね」

「それにずっと手加減していたのでしょう?その上、私を傷つけないように気を付けながら戦っていた・・・戦いにすらなっていなかった」

「じゃあね、リゼ・・・せいぜい死なないようにね?」

 本当は妹であるリゼの事が心配で仕方がなかったのだろう、そこで俺は今日この国の貴族を敵に回した。

 だからわざわざ勝てない相手と知りながら決闘を申し込んだ・・・妹を守るだけの力があるのかを確かめるために。

「あ、姉上・・・」

「ヴァルディさん・・・なんとかしてやれないかニャ・・・?」

「ヴァルディさん、ボクからもお願いします」

「ヴァルディさん・・・」

「なんとか・・・なる?」

 寂しそうに去っていくリゼの姉の背中を見てノワル達は各々、なんとか出来ないかと俺に聞いてくる。

 フフ、全くこの子達はお人好しだ、嘘とはいえ罵倒されたというのに・・・元からなんとかするつもりだったがそんな目で見られたらなにもしない訳にはいかないじゃないか!

「分かった、なんとかしてみよう」

「君、ちょっと待ってくれるかな?渡したい物がある」

「え?何かしら?」

「どうやら私の仲間たちは君とリゼ殿に仲良くしてもらいたいようでね、これをあげよう」

 俺はアイテムボックスから丸い球体を二つ取り出し片方をリゼの姉に渡す。

「宝石かしら?だいぶ高価な物みたいだけれど・・・」

「それに話しかけてみてくれ」

「?『こうかしら』!!!?何!?」

「これは、“通信石”と言ってな、どんなに離れていても対になる石を持っていれば声と姿が写し出される」

「これで君たちはいつでも会話できる、王宮仕えの近衛騎士長となれば会いに来る時間など取れないだろうしな」

 信じられないというような顔で・・・しかし今までの無愛想な表情というわけではなく嬉しさを滲ませた笑みを浮かべ感謝の言葉を伝えてきた。

「貴方、本当に不思議な方・・・ありがとう、私は国王に仕える身です、貴方に仕える事は出来ませんがそれ以外でできる事ならなんでも致しましょう」

「私は、アイナ・クレールと申します、本当にありがとう」

「アイナ殿、礼なら私の仲間達に言ってくれ、私を動かしたのは紛れもなく彼女達だからな」

「皆様もありがとうございます、先程の無礼お許し下さい」

「リゼ・・・困ったことがあったらお姉ちゃんに言いなさい、分かったわね?」

「はい!姉上!」

 アイナはリゼを抱きしめながらそう言うと耳元で何かを呟いた、なんだ?よく聞こえなかったな。

「リゼ、あんまりモタモタしているとあの騎士様はお姉ちゃんが貰っちゃうわよ(ボソッ)」

「あ、姉上ッ!!!!!!」

「フフッ!またね!」

 これで王宮での波乱は終わった、すんなり終わればいいと思っていたが思った通りにはいかなかったな。

 ルルがもう限界だったようであの後すぐに寝てしまった・・・すっかり陽が沈みかけている街でルルをおんぶしながら帰路に着いた。

 そして尾行してくる影が一つ、流石に誰も気づいてはいないようだ。

「ハァ宿屋に帰ってもまだ気は休まりそうもないな・・・(ボソッ)」

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

「では皆、今日は本当にお疲れ様だった、ゆっくり休んでくれ」

「「「「「はい!また明日」」」」」

 “バタン”

「そろそろ出て来たまえ、何用かな?」

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
集団転移に巻き込まれ、クラスごと異世界へと転移することになった主人公晴人はこれといって特徴のない平均的な学生であった。 異世界の神から能力獲得について詳しく教えられる中で、晴人は自らの能力欄獲得可能欄に他人とは違う機能があることに気が付く。 そこに隠されていた能力は龍神から始まり魔神、邪神、妖精神、鍛冶神、盗神の六つの神の称号といくつかの特殊な能力。 異世界での安泰を確かなものとして受け入れ転移を待つ晴人であったが、神の能力を手に入れたことが原因なのか転移魔法の不発によりあろうことか異世界へと転生してしまうこととなる。 龍人の母親と英雄の父、これ以上ない程に恵まれた環境で新たな生を得た晴人は新たな名前をエルピスとしてこの世界を生きていくのだった。 現在設定調整中につき最新話更新遅れます2022/09/11~2022/09/17まで予定

クラス転移で無能判定されて追放されたけど、努力してSSランクのチートスキルに進化しました~【生命付与】スキルで異世界を自由に楽しみます~

いちまる
ファンタジー
ある日、クラスごと異世界に召喚されてしまった少年、天羽イオリ。 他のクラスメートが強力なスキルを発現させてゆく中、イオリだけが最低ランクのEランクスキル【生命付与】の持ち主だと鑑定される。 「無能は不要だ」と判断した他の生徒や、召喚した張本人である神官によって、イオリは追放され、川に突き落とされた。 しかしそこで、川底に沈んでいた謎の男の力でスキルを強化するチャンスを得た――。 1千年の努力とともに、イオリのスキルはSSランクへと進化! 自分を拾ってくれた田舎町のアイテムショップで、チートスキルをフル稼働! 「転移者が世界を良くする?」 「知らねえよ、俺は異世界を自由気ままに楽しむんだ!」 追放された少年の第2の人生が、始まる――! ※本作品は他サイト様でも掲載中です。

【しっかり書き換え版】『異世界でたった1人の日本人』~ 異世界で日本の神の加護を持つたった1人の男~

石のやっさん
ファンタジー
12/17 13時20分 HOT男性部門1位 ファンタジー日間 1位 でした。 ありがとうございます 主人公の神代理人(かみしろ りひと)はクラスの異世界転移に巻き込まれた。 転移前に白い空間にて女神イシュタスがジョブやスキルを与えていたのだが、理人の番が来た時にイシュタスの顔色が変わる。「貴方神臭いわね」そう言うと理人にだけジョブやスキルも与えずに異世界に転移をさせた。 ジョブやスキルの無い事から早々と城から追い出される事が決まった、理人の前に天照の分体、眷属のアマ=テラス事『テラスちゃん』が現れた。 『異世界の女神は誘拐犯なんだ』とリヒトに話し、神社の宮司の孫の理人に異世界でも生きられるように日本人ならではの力を授けてくれた。 ここから『異世界でたった1人の日本人、理人の物語』がスタートする 「『異世界でたった1人の日本人』 私達を蔑ろにしチート貰ったのだから返して貰いますね」が好評だったのですが...昔に書いて小説らしくないのでしっかり書き始めました。

転生したら脳筋魔法使い男爵の子供だった。見渡す限り荒野の領地でスローライフを目指します。

克全
ファンタジー
「第3回次世代ファンタジーカップ」参加作。面白いと感じましたらお気に入り登録と感想をくださると作者の励みになります! 辺境も辺境、水一滴手に入れるのも大変なマクネイア男爵家生まれた待望の男子には、誰にも言えない秘密があった。それは前世の記憶がある事だった。姉四人に続いてようやく生まれた嫡男フェルディナンドは、この世界の常識だった『魔法の才能は遺伝しない』を覆す存在だった。だが、五〇年戦争で大活躍したマクネイア男爵インマヌエルは、敵対していた旧教徒から怨敵扱いされ、味方だった新教徒達からも畏れられ、炎竜が砂漠にしてしまったと言う伝説がある地に押し込められたいた。そんな父親達を救うべく、前世の知識と魔法を駆使するのだった。

悠々自適な転生冒険者ライフ ~実力がバレると面倒だから周りのみんなにはナイショです~

こばやん2号
ファンタジー
とある大学に通う22歳の大学生である日比野秋雨は、通学途中にある工事現場の事故に巻き込まれてあっけなく死んでしまう。 それを不憫に思った女神が、異世界で生き返る権利と異世界転生定番のチート能力を与えてくれた。 かつて生きていた世界で趣味で読んでいた小説の知識から、自分の実力がバレてしまうと面倒事に巻き込まれると思った彼は、自身の実力を隠したまま自由気ままな冒険者をすることにした。 果たして彼の二度目の人生はうまくいくのか? そして彼は自分の実力を隠したまま平和な異世界生活をおくれるのか!? ※この作品はアルファポリス、小説家になろうの両サイトで同時配信しております。

異世界転生~チート魔法でスローライフ

リョンコ
ファンタジー
【あらすじ⠀】都会で産まれ育ち、学生時代を過ごし 社会人になって早20年。 43歳になった主人公。趣味はアニメや漫画、スポーツ等 多岐に渡る。 その中でも最近嵌ってるのは「ソロキャンプ」 大型連休を利用して、 穴場スポットへやってきた! テントを建て、BBQコンロに テーブル等用意して……。 近くの川まで散歩しに来たら、 何やら動物か?の気配が…… 木の影からこっそり覗くとそこには…… キラキラと光注ぐように発光した 「え!オオカミ!」 3メートルはありそうな巨大なオオカミが!! 急いでテントまで戻ってくると 「え!ここどこだ??」 都会の生活に疲れた主人公が、 異世界へ転生して 冒険者になって 魔物を倒したり、現代知識で商売したり…… 。 恋愛は多分ありません。 基本スローライフを目指してます(笑) ※挿絵有りますが、自作です。 無断転載はしてません。 イラストは、あくまで私のイメージです ※当初恋愛無しで進めようと書いていましたが 少し趣向を変えて、 若干ですが恋愛有りになります。 ※カクヨム、なろうでも公開しています

捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~

伽羅
ファンタジー
 物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。

ブラフマン~疑似転生~

臂りき
ファンタジー
プロメザラ城下、衛兵団小隊長カイムは圧政により腐敗の兆候を見せる街で秘密裏に悪徳組織の摘発のため日夜奮闘していた。 しかし、城内の内通者によってカイムの暗躍は腐敗の根源たる王子の知るところとなる。 あらぬ罪を着せられ、度重なる拷問を受けた末に瀕死状態のまま荒野に捨てられたカイムはただ骸となり朽ち果てる運命を強いられた。 死を目前にして、カイムに呼びかけたのは意思疎通のできる死肉喰(グールー)と、多層世界の危機に際して現出するという生命体<ネクロシグネチャー>だった。  二人の助力により見事「完全なる『死』」を迎えたカイムは、ネクロシグネチャーの技術によって抽出された、<エーテル体>となり、最適な適合者(ドナー)の用意を約束される。  一方、後にカイムの適合者となる男、厨和希(くりやかずき)は、半年前の「事故」により幼馴染を失った精神的ショックから立ち直れずにいた。  漫然と日々を過ごしていた和希の前に突如<ネクロシグネチャー>だと自称する不審な女が現れる。  彼女は和希に有無を言わせることなく、手に持つ謎の液体を彼に注入し、朦朧とする彼に対し意味深な情報を残して去っていく。  ――幼馴染の死は「事故」ではない。何者かの手により確実に殺害された。 意識を取り戻したカイムは新たな肉体に尋常ならざる違和感を抱きつつ、記憶とは異なる世界に馴染もうと再び奮闘する。 「厨」の身体をカイムと共有しながらも意識の奥底に眠る和希は、かつて各国の猛者と渡り合ってきた一兵士カイムの力を借り、「復讐」の鬼と化すのだった。 ~魔王の近況~ 〈魔海域に位置する絶海の孤島レアマナフ。  幽閉された森の奥深く、朽ち果てた世界樹の残骸を前にして魔王サティスは跪き、神々に祈った。  ——どうかすべての弱き者たちに等しく罰(ちから)をお与えください——〉

処理中です...