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二章

約束の行方③

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「だ、っ……だめ……♡♡ ……抜か、ないで……っ♡♡」
「っ……♡♡♡♡♡!」

 紛れもない懇願を、ついに言葉にして伝えてしまった。『義妹いもうとを助けるため』、との大義名分は脆く崩れ去り、快感を貪る一人の女として求めに応じていたのだ、という隠し通すことのできなかった真実があらわになる。約束を守るためだから仕方ないのだと自分に言い聞かせエミリアを求めてしまっていたことなんて、とっくに気付いていた。だからこそ、認めるわけにはいかなかった。
 彼女の言う通り、私は淫乱な女なのだと思う。はじめての行為にも快感しか覚えず、何度体を重ねても、もっとして欲しいと願ってしまっているほどなのだから。けれどエミリアは、義姉わたししか頼れないのだと打ち明けてすがってくれた。それなのに彼女との約束を利用して快楽に溺れているのだと知られたら、軽蔑されてしまうに違いないと思っていた。意地悪く責め苛まれても、必死に堪えていた。言葉にして認めてしまえば、私たちの関係は決定的に変化してしまうのだと思い込んでいた。その変化がなにをもたらすのか想像もつかない私は、ただ恐れて目を背けようとしていた。にわかには信じがたい、エミリアの告白を耳にする前までは。
 ––義妹いもうとは嘘をついてまで、無自覚な振る舞いをした責任を取ってもらいたかったのだと言った。約束を守り、性欲を発散させてくれて助かっている、とも言っていた。

「やっと……、認めてくれたのね♡♡♡♡♡ いまも疼いて仕方ないんでしょう♡♡♡♡? ふふ、またきゅうきゅう締め付けて……、早く犯して欲しいってねだってる♡♡♡♡」
「……っ、ひどい……わ、……エミリアの、せいじゃない……っ!」

 はっとして口を押さえたけれど遅かった。エミリアに感化され、隠し続けていなければならないはずの言葉まで伝えてしまった。嘘をつかれていた怒りや憎しみが湧き上がるより、意味を正さず安易に約束を交わして一線まで越え、深みにはまってしまっている後ろめたさに、……いまさらではあるが激しく動揺していた。千々に乱れる感情を制御することができず、どのような変化が待ち受けているかもわからないのに言い放ってしまった。
 息を呑んだエミリアは、浅紫の瞳に驚きをたたえて私を見つめている。失望や侮蔑に歪むと覚悟して見守っていた美貌は、私の予想に反して笑み崩れていった。嘲るわけでも呆れるわけでもなく、心からの喜びをあらわすような、無邪気な笑みだった。警戒すべき反応ではないはずなのに、私の肌がぞわっと粟立ったのはなぜなのだろう。混乱する思考で理由を探しはじめる前に、エミリアが口を開いた。

「……本音が聞けて良かった。義姉ねえさんの言う通りね。私が貴女に快感を教え込んで、本性を暴いてしまったのだもの。……いいえ、淫乱になってしまったのも、きっと毎晩お願いしていた私のせいよね。……いずれにせよ私は、責めを負うべきだと認めるわ」
「っ……エミリア、私……」
義姉ねえさんの優しさに付け込んで助けてもらっていたのは、私だものね。義妹わたしのちんぽなしじゃいられない体にしてしまった責任を果たすわ。……もちろん、卒業した後も」

 罵るわけでも詰るわけでもない言葉に呆然とする一方、どこかで安堵していた。自分でもわからなかった恐れの正体は、誰にも理解されなくても、どれほど歪であっても、エミリアとの関係が終わってしまうことだったのだ。私はいつの間にかエミリアのいない生活など考えられないほど、彼女に依存していたのだと気付く。

「……っ、それは、…………約束、なの?」

 問いかける声が震えてしまう。義姉わたし義妹エミリアの関係を変えたきっかけを使って、彼女を縛ろうとしている。誰かに対してではなく、自分に対しての新たな言い訳欲しさのために、身勝手で強引なくせに優しさを垣間見せる義妹いもうと弱み責任感を利用しようとしている。己の醜悪さに吐き気を催しそうになって俯くと、エミリアが顔を覗き込んできた。中途半端に口元を押さえていた片手に、そっと唇を寄せられる。

「ええ。……約束よ、義姉ねえさん……♡」

 私の腰を支えてくれているエミリアは、指切りができない。その代わりのつもりだろう、彼女は私に口づけてくれた。

「はっ♡♡ ……さっそく新しい約束を履行したいんだけど、いい♡♡♡? 私が動くより、もっと自分で動いてみる♡♡♡♡?」
「んぅっ♡♡ ぁっ、……んんっ♡♡♡ っ…………して、エミリア♡♡♡♡」
「ええ……♡♡♡♡♡ たくさんイかせてあげるわ♡♡♡♡」
「んぁあーーっ♡♡♡♡♡! ……ぁっ♡♡♡♡ ぁあっ♡♡♡♡」
「はぁ……っ♡♡♡♡♡ 奥まで蕩けきって、絡みついてくる♡♡♡♡ 甘イキおまんこ気持ちいい……♡♡♡♡ でもこんなんじゃ、足りないわよね♡♡♡♡ もっと気持ちいいこと、して欲しいわよね♡♡♡♡?」
「ぁっ……ぁんっ♡♡♡♡♡ はっ♡♡♡♡ もっと、……ほし、い♡♡♡♡」
「ーー……っ♡♡♡♡♡! あぁ……、フローラ♡♡♡♡ ずーー……っと、可愛がってあげる♡♡♡♡ これからは朝も昼も夜もこのドスケベまんこにフローラの大好きなちんぽハメまくって、可愛がってあげるから♡♡♡♡♡」
「ひ、ぁあんっ♡♡♡♡! ぁっ♡♡♡♡ んぁっ♡♡♡♡ ぁあっ♡♡♡♡!」

 最後の意地をかなぐり捨ててしまったら、これまで以上の快感に全身を侵された。腰を抱えられた私を貫き揺さぶる激しい衝動に、意識を塗り替えられていく。もはやエミリアを求めることしか考えられない。責めに耐えるばかりだったときとは比較にならない快楽に、あられもなく喘ぐことしかできない。息を荒げたエミリアが興奮して口走る卑猥な言葉にすら感じて、蜜を撒き散らして悦んでしまう。私の心も体もエミリアを求めて止まないのだと、じゅっぷ♡♡じゅっぽ♡♡と抉られる媚肉が淫らに収縮して訴えてしまう。

「はっ♡♡♡ ふふ、四六時中ちんぽハメられる想像しながらイっちゃったの♡♡♡♡? えっろ♡♡♡♡♡ でも、仕方ないわ♡♡♡♡ ♡♡♡♡ 思う存分乱れて、フローラ♡♡♡♡♡」
「ぁ、んっ♡♡♡♡ イくの、とまらな……っ♡♡♡♡♡ ぁんっ♡♡♡♡ んぁあっ♡♡♡♡♡♡!」
「だらしないイキ顔も最高よ♡♡♡♡ は……っ♡♡♡ 今度は上からどちゅどちゅ潰してあげる♡♡♡♡ 痙攣まんこ抉られるの好きだものね♡♡♡♡♡」
「ふ、ぁあっ……♡♡♡♡♡! ぁっ♡♡♡♡ あんっ♡♡♡♡ いいっ♡♡♡♡♡ んぁっ♡♡♡♡ すきっ♡♡♡♡♡ すきぃっ♡♡♡♡♡♡」

 ぐるん、と体勢が入れ替わったと思ったら脚を抱え上げられて、子宮を抉じ開けるような抽挿がはじまった。意識が飛んでしまいそうな快感の連続にはしたなく喘ぐ私が、のしかかってきたエミリアにまともな返答ができたのだとは思えない。けれど赤らんだ頬をふと緩めたエミリアはひどく穏やかな眼差しで私を眺め、唇を吸い上げてきた。呼吸まで共有しているかのような感覚に陥った私は、奥を責め苛む昂ぶりを思いきり締め付け、かつてない絶頂を迎えた。
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