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第2章 天空の城と伸びる塔の謎
第41話 魔法陣鍵ミッション
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「ねえ、大丈夫??」
ふいに言葉を途切らせた歩斗を心配するユセリの声が、扉を越えて塔の中に薄ら響き渡る。
「……あっ、うん、大丈夫だよ! なんか変な声が聞こえたような気がして──」
「ちょっとアユ、母親に対して『変な声』って失礼じゃない?」
「うわっ! で、出たぁ~」
聞こえるはずの無い声が再び聞こえて驚く歩斗。
いや、そもそも香織を探すために入ってきたのだが、暗い部屋に閉じ込められていることで若干冷静さを失っていた。
「もうアユったら、人を幽霊扱いしないでちょーだい。今度焼きそば作る時、アユの分だけニンジン3倍にしちゃうわよ?」
「えー!? それはヤダ~……って、もしかして本物?」
現実感に満ちた言葉を耳にしたことで、はからずも冷静さを取り戻す歩斗。
どうやら声の出所は足下。
ちょうど2つ目の魔法陣があった地面の下から聞こえて来た。
「幽霊なわけ無いでしょもう」
「ごめんなさい! ってか、何でそんな所に居るの??」
歩斗は地面に向かって語りかけた。
「ねえ、誰と喋ってんの??」
扉の向こうからユセリの声。
「あっ、ごめんごめん! 急に幽霊……じゃなくて母さんが喋りかけてきたから」
「うそっ? 見つかったの?? 良かった~!!」
「いや、見つかったっていうか、見つかってはいないっていうか……」
「ねえアユ、お友達と一緒なの?」
「いや、一緒っていうか、一緒ではないっていうか……」
「ねー、ちゃんと教えてよー!」
「ちゃんと説明してちょうだい」
「……ひぃぃ!!」
歩斗はまるで嫁と姑に挟まれる夫のような板挟みに遭い……なんて風にはさすがに思わないものの、自身も塔の中に閉じ込められているという状況も相まって頭がパンクしかけてしまった。
がしかし、6年生になった事で少しだけ大人になったのか、すぐに冷静さを取り戻し、それぞれにざっくりと今の状況を説明し始めた。
「そっかぁ。なんでママさんが下の階に落ちちゃったのかは分からないけど、下に行くための階段が見つからないってことは、地面の方の魔法陣鍵がそのスイッチになってるっぽいね」
「スイッチ? あの魔法陣鍵ってやつを開ければ階段が出てくる的な??」
扉の前に戻ってきた歩斗が、その向こうに居るユセリに向かって聞き返す。
結局、話を聞いたところによると香織は歩斗より先にこの部屋に閉じ込められ、暗がりをうろついてると穴に落ちてしまい、恐らく地下1階と思しき場所にいるようだった。
ユセリによると、それは何らかのトラップらしいとのこと。
誰が何のために仕掛けたのか、まではさすがに分からず。
「そうそう! やるじゃん歩斗」
「へへへっ。そんじゃ、まずこのドアの魔法陣鍵を開けてから──」
「えっ、なに言ってんの? とにかくママの方が先でしょが!」
「そ、そっか」
「うん。私を頼ってくれるのは嬉しいけど、こんな怪しすぎる塔の地下で独りぼっちなんて不安でしょうがないはずだよ」
ユセリの言葉に対し、歩斗は「いや、そんな感じはしないけど……」とつい口走ってしまった。
「それは歩斗を不安にさせないようにしてるだけだから!」
「あー、そういうやつ」
「良いから、とにかく鍵の模様が入った魔法陣を探して!」
「お、おう!」
歩斗はユセリに急かされ、まず香織に現状をざっくりした説明した後、今まで以上に目を大きく見開き、顔を下に向けて地面を重点的にチェックし始めた。
集中力が増したおかげか、成果は思いのほか早く出る。
「あった! 真ん中に鍵の形が描いてあるやつ!!」
歩斗が立ち止まったのは2つ目の魔法陣から数歩ばかり離れた場所。
その魔法陣には今までの鍵穴形とは違い、黒丸に縦棒、その縦棒に短い横棒が2つという一目で“鍵”と分かる模様が描かれていた。
「それそれ! 歩斗ナイス!!」
「でへへ、それほどでも」
「照れるのはあとで! 早く〈魔法陣鍵ミッション〉に挑戦して!!」
「おう! ……って、なにそれ?」
歩斗がキョトンとなってしまうのも無理は無い。
そもそも、魔法陣鍵が鍵と鍵穴の2組で構成されているとして、どうやって鍵を鍵穴に差し込むのかについてはまったく聞いて無かったのだ。
「うん、緊急事態だから簡単に説明するよ。魔法陣鍵を解くためには、鍵の方の魔法陣に設定されてる難易度の魔法陣鍵ミッションをクリアしなきゃいけないの。ってことでとにかく鍵の模様に触れてみて!」
「お、おっけー」
ユセリに言われるがまま、歩斗は恐る恐る魔法陣の真ん中に手を伸ばした。
そして、指先が鍵の模様に触れた瞬間。
ボワッ!
と煙が出て、魔法陣の下に文字が浮かび上がってきた。
「見えた?」
「うん。えっと……『魔物10体討伐(難易度E)』だって。どゆこと??」
小首を傾げる歩斗とは正反対に、ユセリの声は明るかった。
「それなら大丈夫! 歩斗ならいけるいける!!」
「よっしゃ! ……って、なんだよも~。まだ何も分からないよ~。魔物10体倒せってこと? ここで??」
「半分正解。ねえ、ちゃんと召喚チョーカー付けてる?」
「……うわっ、しまった!」
「うそっ、忘れてきちゃった!?」
「ううん、せっかく着けてきたんだからもっと早く使って一緒に魔法陣探して貰えばよかったなぁって」
えへへ、と歩斗は誰も無い部屋の中で照れくさそうに頭をかいた。
「もう、焦らせないでよ! ねえ、その文字の他にも何か書いてない?
「これ以外に? ……あっ、あった! なんだこれ? ヤバワピノシケトメ──」
「うん、そんじゃその文字を最初から最後まで読んでからもう一度鍵のマークをタッチしてみて」
「りょーかーい。えっと……ヤバワピノシケトメリュベケケサ」
歩斗は、言われたとおり意味不明な文字列を読み上げてから指で鍵マークを触れてみた。
すると……。
「うわっ……!」
魔法陣がキラキラと輝きだし、そこから溢れ出た無数の光が歩斗の体に押し寄せる。
「な、なにこれヤバッ──」
あまりの眩しさに思わず目を瞑る歩斗。
その直後、フワッと体が浮くような感覚に襲われたかと思うと、今度は全身に風が吹き付けてくるような感触が──。
「えっ……なにこれ!?」
瞼を開けて目に飛び込んできたのは、真っ青な空に若草色の草原。
そして10体の……魔物!
ふいに言葉を途切らせた歩斗を心配するユセリの声が、扉を越えて塔の中に薄ら響き渡る。
「……あっ、うん、大丈夫だよ! なんか変な声が聞こえたような気がして──」
「ちょっとアユ、母親に対して『変な声』って失礼じゃない?」
「うわっ! で、出たぁ~」
聞こえるはずの無い声が再び聞こえて驚く歩斗。
いや、そもそも香織を探すために入ってきたのだが、暗い部屋に閉じ込められていることで若干冷静さを失っていた。
「もうアユったら、人を幽霊扱いしないでちょーだい。今度焼きそば作る時、アユの分だけニンジン3倍にしちゃうわよ?」
「えー!? それはヤダ~……って、もしかして本物?」
現実感に満ちた言葉を耳にしたことで、はからずも冷静さを取り戻す歩斗。
どうやら声の出所は足下。
ちょうど2つ目の魔法陣があった地面の下から聞こえて来た。
「幽霊なわけ無いでしょもう」
「ごめんなさい! ってか、何でそんな所に居るの??」
歩斗は地面に向かって語りかけた。
「ねえ、誰と喋ってんの??」
扉の向こうからユセリの声。
「あっ、ごめんごめん! 急に幽霊……じゃなくて母さんが喋りかけてきたから」
「うそっ? 見つかったの?? 良かった~!!」
「いや、見つかったっていうか、見つかってはいないっていうか……」
「ねえアユ、お友達と一緒なの?」
「いや、一緒っていうか、一緒ではないっていうか……」
「ねー、ちゃんと教えてよー!」
「ちゃんと説明してちょうだい」
「……ひぃぃ!!」
歩斗はまるで嫁と姑に挟まれる夫のような板挟みに遭い……なんて風にはさすがに思わないものの、自身も塔の中に閉じ込められているという状況も相まって頭がパンクしかけてしまった。
がしかし、6年生になった事で少しだけ大人になったのか、すぐに冷静さを取り戻し、それぞれにざっくりと今の状況を説明し始めた。
「そっかぁ。なんでママさんが下の階に落ちちゃったのかは分からないけど、下に行くための階段が見つからないってことは、地面の方の魔法陣鍵がそのスイッチになってるっぽいね」
「スイッチ? あの魔法陣鍵ってやつを開ければ階段が出てくる的な??」
扉の前に戻ってきた歩斗が、その向こうに居るユセリに向かって聞き返す。
結局、話を聞いたところによると香織は歩斗より先にこの部屋に閉じ込められ、暗がりをうろついてると穴に落ちてしまい、恐らく地下1階と思しき場所にいるようだった。
ユセリによると、それは何らかのトラップらしいとのこと。
誰が何のために仕掛けたのか、まではさすがに分からず。
「そうそう! やるじゃん歩斗」
「へへへっ。そんじゃ、まずこのドアの魔法陣鍵を開けてから──」
「えっ、なに言ってんの? とにかくママの方が先でしょが!」
「そ、そっか」
「うん。私を頼ってくれるのは嬉しいけど、こんな怪しすぎる塔の地下で独りぼっちなんて不安でしょうがないはずだよ」
ユセリの言葉に対し、歩斗は「いや、そんな感じはしないけど……」とつい口走ってしまった。
「それは歩斗を不安にさせないようにしてるだけだから!」
「あー、そういうやつ」
「良いから、とにかく鍵の模様が入った魔法陣を探して!」
「お、おう!」
歩斗はユセリに急かされ、まず香織に現状をざっくりした説明した後、今まで以上に目を大きく見開き、顔を下に向けて地面を重点的にチェックし始めた。
集中力が増したおかげか、成果は思いのほか早く出る。
「あった! 真ん中に鍵の形が描いてあるやつ!!」
歩斗が立ち止まったのは2つ目の魔法陣から数歩ばかり離れた場所。
その魔法陣には今までの鍵穴形とは違い、黒丸に縦棒、その縦棒に短い横棒が2つという一目で“鍵”と分かる模様が描かれていた。
「それそれ! 歩斗ナイス!!」
「でへへ、それほどでも」
「照れるのはあとで! 早く〈魔法陣鍵ミッション〉に挑戦して!!」
「おう! ……って、なにそれ?」
歩斗がキョトンとなってしまうのも無理は無い。
そもそも、魔法陣鍵が鍵と鍵穴の2組で構成されているとして、どうやって鍵を鍵穴に差し込むのかについてはまったく聞いて無かったのだ。
「うん、緊急事態だから簡単に説明するよ。魔法陣鍵を解くためには、鍵の方の魔法陣に設定されてる難易度の魔法陣鍵ミッションをクリアしなきゃいけないの。ってことでとにかく鍵の模様に触れてみて!」
「お、おっけー」
ユセリに言われるがまま、歩斗は恐る恐る魔法陣の真ん中に手を伸ばした。
そして、指先が鍵の模様に触れた瞬間。
ボワッ!
と煙が出て、魔法陣の下に文字が浮かび上がってきた。
「見えた?」
「うん。えっと……『魔物10体討伐(難易度E)』だって。どゆこと??」
小首を傾げる歩斗とは正反対に、ユセリの声は明るかった。
「それなら大丈夫! 歩斗ならいけるいける!!」
「よっしゃ! ……って、なんだよも~。まだ何も分からないよ~。魔物10体倒せってこと? ここで??」
「半分正解。ねえ、ちゃんと召喚チョーカー付けてる?」
「……うわっ、しまった!」
「うそっ、忘れてきちゃった!?」
「ううん、せっかく着けてきたんだからもっと早く使って一緒に魔法陣探して貰えばよかったなぁって」
えへへ、と歩斗は誰も無い部屋の中で照れくさそうに頭をかいた。
「もう、焦らせないでよ! ねえ、その文字の他にも何か書いてない?
「これ以外に? ……あっ、あった! なんだこれ? ヤバワピノシケトメ──」
「うん、そんじゃその文字を最初から最後まで読んでからもう一度鍵のマークをタッチしてみて」
「りょーかーい。えっと……ヤバワピノシケトメリュベケケサ」
歩斗は、言われたとおり意味不明な文字列を読み上げてから指で鍵マークを触れてみた。
すると……。
「うわっ……!」
魔法陣がキラキラと輝きだし、そこから溢れ出た無数の光が歩斗の体に押し寄せる。
「な、なにこれヤバッ──」
あまりの眩しさに思わず目を瞑る歩斗。
その直後、フワッと体が浮くような感覚に襲われたかと思うと、今度は全身に風が吹き付けてくるような感触が──。
「えっ……なにこれ!?」
瞼を開けて目に飛び込んできたのは、真っ青な空に若草色の草原。
そして10体の……魔物!
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