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裸で召喚された聖女は自己肯定感強め
しおりを挟む突然だが…私は容姿が悪い。
もう兎にも角にもメイクしようが痩せようが胸を強調しようが全く意味をなさないレベルで容姿が悪い。
……努力はした。
肌は吸い付くような肌を目指したし、髪の毛も所謂サラサラちゅるんだ。
胸もはっきり言ってパインパインの美乳だし、キュッと上がったお尻は最高の出来上がりだと思う。
だが、その努力は私の顔で全て帳消しになってしまう。
…顔を隠せば峰不◯子なのにと何度悔しい思いをしたことか。
後ろ姿でナンパされ、振り返ると相手が固まる。
私はきっとメデューサなのだろう。
まぁ…幸い、周りの人達に恵まれたことにより虐められることはなかった。
そのおかげで顔が悪い以外はやや自己肯定感強めの性格だ。
ありがとうよ父、母。そして周りの友達や大人達。
この顔で気が弱い系の性格に育っていたとしたら…考えるだけで恐ろしい。
まぁ、そんな私はお風呂に入ってたら落ちた。
何言ってんだと思うだろうが、本当に湯船に浸かってたらいきなり落ちた。
一日の疲れを湯船に浸かり癒していた所、急にお尻の下にある浴槽の床がなくなり…どこをつかむことも出来ずにそのまま落下。
いや、咄嗟に浴槽の縁を掴んだのだけれど、濡れている手では滑ってしまい意味をなさなかったのだ。
そして落ちる時、お湯も一緒に落ちて来たので驚いた拍子に大量の水が口へと入ってきた。
これはやばい、このままだと死んでしまうと思った瞬間…真っ裸のまま大量の水と共に冷たい石の上に投げ出されたのだった。
「ごほっつ、ゲホっつ」
(ちょっ…気管に水が入った…。)
何度も気管に入った水を出す為咳をした。
やっとまともに息が吸える様になった私は、状況を把握する為周りを見渡す。
ほんの数秒の事だっただろうが、体にかかった負荷は大きかったらしく状況が上手く読み込めない。
落ちた事も意味がわからないが、今の私の状況も全く意味がわからなかったからだ。
なぜか?それは…私の周りにはたくさんのコスプレをした人達が両手で顔を覆って立っていた。
読み込めるわけがない、意味がわからない。
「せ、聖女様…これを…」
私がびっくりして硬直していると、左後ろの方から女の人の声がした。
その女の人はメイド服のようなものを着ていて、私に向けて大きなタオルを差し出してくれた。
その時、今の私は真っ裸なことを思い出す。
…この状況に動揺していてすっかり忘れてしまっていたのだ。
「きゃぁああああああああ!」
私は勢いよくそのタオルを引ったくり、体に巻く。
なるほど、だから皆顔を隠してたのかと思いながら羞恥に悶える私。
そんな時、厳つい声が部屋にどこか弱々しく響く。
「せ、聖女様、そちらに目を向けても良いですか?」
「ま、まぁいいですけど…」
多分私に話しかけてるのだろうと思い返事をすると、皆がサッと手を下ろす。
皆の頬が赤いのは男のサガなんだろう。かわいそうに、身体だけは良いもんな私…。
「おお…なんと美しい」
「聖女様じゃなくて女神様じゃないのか」
「選んでほしい」
「こっち見ないかな」
「さっき目を隠さなければよかった…」
私を見た男達は皆、ザワザワと騒ぎ始める。
まて。身体の評価良すぎないか?自己肯定感更にあがるぞ?
自慢のボディーを褒められてご満悦になる辺り、私はかなりチョロい性格だろう。
「静かにせんか!」
先程の厳つい声の主が皆にそう言うと、途端に部屋が静かになった。
「聖女様、すみません。このままではお風邪をひいてしまわれるかもしれないので、ひとまず話は後にしようと思うのですが…どうでしょうか?」
そう言われた私は今の状況はわからないけれど、一先ず服が着たかったのでその言葉に同意することに。
「で、では、聖女様。お手を此方に…」
そう言われた私はメイドさんの手をとり立ち上がると、皆が壁によってくれた。
皆が開けてくれた道をメイドさんの案内の元に通り、ベルサイユ宮殿のような内装の建物の中をどんどん歩いてゆく。
(見た事ないから想像だけどね)
そして、豪華な扉の部屋でメイドさんが立ち止まると、両サイドにいる騎士の格好をした人達がドアを開けてくれた。
部屋の中には大きなベッドや机や椅子やドレッサーやソファーなどがあった。
…多分これが豪華絢爛と言うのだろう。
そう思わせるほどの美が、嫌味にならない様上品に配置してあった。
この時、ふわふわの絨毯の上を裸足で歩く私の心は、汚した場合『お金取られたらどうしよう』だった。
それからメイドさんに『少々お待ちください』と言われ待っていると、数名のメイドさん達が部屋に来てなんかバタバタし始めた。
先程のメイドさんが『此方へどうぞ』と言った方へ行くと、写真でしか見たことのない夢の猫足バスタブがある部屋だった。
(めっちゃかわゆいんですけど!)
私の心がキュンキュンしてる間に、メイドさんは手慣れた様子でタオルを剥ぎ取りバスタブの中へと誘導してきた。
(ちょっと恥ずかしいけれど、とりあえずされるがままにしよう)
そう思った私は目を瞑ってバスタブに浸かり、洗ってもらうことやマッサージしてもらうことを堪能した。
(なんか…驚きすぎると逆に騒げないね。まぁ、騒いで何かあったら怖いし、今は大人しく言うことを聞いておこう)
流れには逆らわない。それが私である。
(それにしても、マッサージの手つきがなんかいやらしいのはなんなんだ…?)
先程からマッサージしてるメイド達の顔は赤く、目は爛々としており、なんならハァハァ言ってる奴もいる。
(いや、なんだ?めっちゃ必死ってこと?それともそっち系?えっ、こわいこわい)
優里は貞操の危機を感じる勘だけはとても鋭かった。
この時メイド達は皆、女神の様な完璧な女性のお世話をする事に幸せを感じていたのだ。
この世界では男も女も関係なく婚姻するので、このメイド達もあわよくばと聖女様に仕事ぶりでアピールしていたのである。
…アピールしていたのだが、途中からはその身体の素晴らしさに皆が夢中になってしまい、結果的に優里を怖がらせているのには全く気づいてないのだった。
そんな少し怪しいが至福のバスタイムも終わり、驚くほど肌触りの良いマーメードドレスに着替えさせられた優里。
エスコートされるがまま、今はドレッサーの前に座っていた。
メイド達はいまだにハァハァしながら優里のお世話をしている。
髪の毛を結うメイドや化粧をしてくれるメイドやネックレスなどを首に当て選ばせてくれるメイドなど、沢山のメイドに至れり尽くせりされる優里。
(えーっと、不細工が更に不細工メイクされてるんだけど…これは虐め?本気?でも、みんなの目はあれは捕食者の目なんだよな。え、もしかして…)
優里の考えが確信に近づいたその時、全ての行程が終わりさっきのおじ様の所へ案内される事になった。
「おお!女神様の様にお美しい…!ささ、こちらへ!」
さっきのおじ様がニコニコしながらソファーに座る様催してくる。
「ありがとうございます」
それを営業スマイルで対応する私。
勿論周りのメイドがずっと私を見ているからだ。
優里は見られすぎて『寧ろこの人たちは暗殺者とかかも知れない』とまで考えだしていた。その考えはすぐに否定したが…。
(こんなに堂々と暗殺対象の目の前に出てくる暗殺者はどうなんだ、絶対違う。)
状況が読めなさ過ぎて思考がおかしくなっている気がする。
長々とおじ様から話を聞いた私が理解した事を話すならば、どうやらこの世界は思った通り異世界である。
そしてこの世界に私を呼んだのはこの国の王様と神殿長様らしい。
理由は聖女の持つ莫大な魔力を持つ子供を産んで欲しいからだとか。
つまり、簡単にまとめると…
『この世界での生活は全て国が保障するから、沢山夫を持ち沢山子供産んでね!』
である。…畜生!
…まぁいい、仕事は出産だ。至れり尽くせりの生活の為ならば仕方がない。
それ以外で何かを無理強いさせる事も無いらしいし、せいぜい怠惰な妊活ライフと妊婦ライフ?をおくらせてもらうとするか…。
ただ一つ気になるのは、私の顔面なのだが…皆が皆大丈夫だ美しいと言ってくれるので不安しかない。
(これ、私が選んだ人はNOと言えないんじゃない?)
とてつもなく幸先が不安である。
まぁ、聞いてみて様子を見て駄目そうなら違う人集めたら良いか。
優里はとても楽観的な女でもあった。
私はおじ様(王様とか陛下とか呼ぼうとしたらそのままでいいと言われた)に旦那になりたい人が居たら連れてきてねと頼み自分に与えられた部屋に行く事にした。
(王様をあごで使う様な感じだけど、頼んだ方が多分色々と考慮して人選してくれるだろうしな…)
そんな事を考えて歩いていた私はまだ知らなかった。
この世界は 顔だけ美醜逆転 の世界だという事を。
この世界にて私は絶世の美女と思われている事に…。
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