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父と娘
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男はリズの家の2階で眠っている。
帰り際に医者は言った。
「彼の腹の傷はナイフで刺された物だろう。しかし、身なりはどこぞの貴族様のようだ。ゴロツキとは違うと思うが、はて。何者かな。」
リズは温めたスープを飲みながら考える。
これからどうしようか。
そこに父が帰って来た。
家に入るなり、上着も脱がずに神妙な顔で訊く。
「お前、自分の花婿拾って来たって本当か?」
リズは思わずむせた。
「そんな分けないでしょ!人助けをしたの!」
リズが怒ると父は豪快に笑った。
父は小柄だが声は大きい。
「そうか!まぁ、好きなヤツが出来たらいつでも言え!持参金ちゃんと貯金してるからな!」
それは父のいつもの口癖。
リズは父と血は繋がっていない。
父の妻は体が弱く、雪の降る日に亡くなったのだという。
妻を埋葬した帰り、心が沈んでいた父は少し遠回りをした。
人気のない路地裏をとぼとぼと歩いていると、赤子の泣く声が聞こえた。声を辿るとボロにくるまれた赤ん坊が道端に捨てられていた。
それがリズである。
父はリズとの出会いを妻がもたらした大切な縁だと思っていた。
妻と二人分の家族の愛情をリズに注ぎ、リズは父もあったことのない彼の妻も大切な家族だと感じて育ったのだった。
「とりあえず、溺れてた人は命に別状はないみたい。2階に寝かせてる」
「そうか。しかし、刺し傷とはひでぇ事するヤツがいるな。お貴族様なら金目当ての輩に狙われたかな」
父は顔をしかめ、次に真剣な顔でリズに訊く。
「ところで、お前も春の川に飛び込んだんだろ?風邪引いてないか?」
「もちろん!私は雪の中で産まれたから、体が丈夫なの!」
これは雪道で拾われたリズの口癖。
実際、リズは滅多に風邪を引いたりしない。
「もう遅いから、明日警吏に訊いてみるよ」
翌日、リズは町の中心部へと向かった。
帰り際に医者は言った。
「彼の腹の傷はナイフで刺された物だろう。しかし、身なりはどこぞの貴族様のようだ。ゴロツキとは違うと思うが、はて。何者かな。」
リズは温めたスープを飲みながら考える。
これからどうしようか。
そこに父が帰って来た。
家に入るなり、上着も脱がずに神妙な顔で訊く。
「お前、自分の花婿拾って来たって本当か?」
リズは思わずむせた。
「そんな分けないでしょ!人助けをしたの!」
リズが怒ると父は豪快に笑った。
父は小柄だが声は大きい。
「そうか!まぁ、好きなヤツが出来たらいつでも言え!持参金ちゃんと貯金してるからな!」
それは父のいつもの口癖。
リズは父と血は繋がっていない。
父の妻は体が弱く、雪の降る日に亡くなったのだという。
妻を埋葬した帰り、心が沈んでいた父は少し遠回りをした。
人気のない路地裏をとぼとぼと歩いていると、赤子の泣く声が聞こえた。声を辿るとボロにくるまれた赤ん坊が道端に捨てられていた。
それがリズである。
父はリズとの出会いを妻がもたらした大切な縁だと思っていた。
妻と二人分の家族の愛情をリズに注ぎ、リズは父もあったことのない彼の妻も大切な家族だと感じて育ったのだった。
「とりあえず、溺れてた人は命に別状はないみたい。2階に寝かせてる」
「そうか。しかし、刺し傷とはひでぇ事するヤツがいるな。お貴族様なら金目当ての輩に狙われたかな」
父は顔をしかめ、次に真剣な顔でリズに訊く。
「ところで、お前も春の川に飛び込んだんだろ?風邪引いてないか?」
「もちろん!私は雪の中で産まれたから、体が丈夫なの!」
これは雪道で拾われたリズの口癖。
実際、リズは滅多に風邪を引いたりしない。
「もう遅いから、明日警吏に訊いてみるよ」
翌日、リズは町の中心部へと向かった。
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