上 下
1 / 10

どんぶらこ、どんぶらこ。

しおりを挟む
父は鍛冶場で鉄を打ち、娘は川に洗濯に。
それはいつもの日常、のはずだった。

「あれ、なんだろう」
川の傍らに桶を置き、いつもの川を見渡した視線の先に何かがプカプカ浮かんでいる。
朝の光に水面がひかり、目を眇て見定める。
それが何か理解し、リズは思わず息を飲んだ。

「ーーあれ、人!?」

木の枝としがみつくような人の影だ。
認識してから数秒、上着を脱いでシミーズだけとなり、意を決して飛び込んだ。

春の川はまだ冷たい。
薄い布でも水を吸って体にまとわりつく。
リズは懸命に水を蹴り、流されている人の所までたどり着いた。
生きているか死んでるか確認する余裕はない。
服を掴んで必死に引っ張る。
リズが自分の長所は体が丈夫な事と、普通の女の子より力が強い事と考えている。
今回、2つともとても役に立った。

何とか川縁までたどり着き、その誰かを草原に押し上げる。
そこでようやく助けた人物が男性であることに気づいた。

銀の髪と長い睫毛、すっと通った鼻筋の下にある唇が微かに動く。

「よかった。息してる」

一先ずほっとする。
少しでも体を暖めようと洗濯前のシーツを男に掛けようとして、男の着る白いシャツに赤いシミが出来てる事に気づいた。
赤いシミはゆっくりと広がっていく。
リズの血も一緒に流れたかのように血の気が引いた。

「どうしよう、早く手当てしないと!」

リズは男を抱えあげると、無我夢中で走り出した。
しかし、さすがのリズでも大の男を抱えてそう長くは走れない。
何とか道までたどり着いたが、よろけてもうダメだと思ったときに馬が通った。

「リズ姉ちゃんどうしたの?」

馬上にいたのは、近くの宿屋の娘のエリーだった。

「その子貸して!」

リズは馬を借りて町へと走った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる

よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です! 小説家になろうでも10位獲得しました! そして、カクヨムでもランクイン中です! ●●●●●●●●●●●●●●●●●●●● スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。 いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。 欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・ ●●●●●●●●●●●●●●● 小説家になろうで執筆中の作品です。 アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。 現在見直し作業中です。 変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

レベルアップに魅せられすぎた男の異世界探求記(旧題カンスト厨の異世界探検記)

荻野
ファンタジー
ハーデス 「ワシとこの遺跡ダンジョンをそなたの魔法で成仏させてくれぬかのぅ?」 俺 「確かに俺の神聖魔法はレベルが高い。神様であるアンタとこのダンジョンを成仏させるというのも出来るかもしれないな」 ハーデス 「では……」 俺 「だが断る!」 ハーデス 「むっ、今何と?」 俺 「断ると言ったんだ」 ハーデス 「なぜだ?」 俺 「……俺のレベルだ」 ハーデス 「……は?」 俺 「あともう数千回くらいアンタを倒せば俺のレベルをカンストさせられそうなんだ。だからそれまでは聞き入れることが出来ない」 ハーデス 「レベルをカンスト? お、お主……正気か? 神であるワシですらレベルは9000なんじゃぞ? それをカンスト? 神をも上回る力をそなたは既に得ておるのじゃぞ?」 俺 「そんなことは知ったことじゃない。俺の目標はレベルをカンストさせること。それだけだ」 ハーデス 「……正気……なのか?」 俺 「もちろん」 異世界に放り込まれた俺は、昔ハマったゲームのように異世界をコンプリートすることにした。 たとえ周りの者たちがなんと言おうとも、俺は異世界を極め尽くしてみせる!

パーティを抜けた魔法剣士は憧れの冒険者に出会い、最強の冒険者へと至る

一ノ瀬一
ファンタジー
 幼馴染とパーティを組んでいた魔法剣士コルネは領主の息子が入ってきたいざこざでパーティを抜ける。たまたま目に入ったチラシは憧れの冒険者ロンドが開く道場のもので、道場へ向かったコルネはそこで才能を開花させていく。 ※毎日更新 小説家になろう、カクヨムでも同時連載中! https://ncode.syosetu.com/n6654gw/ https://kakuyomu.jp/works/16816452219601856526

完結【進】ご都合主義で生きてます。-通販サイトで異世界スローライフのはずが?!-

ジェルミ
ファンタジー
32歳でこの世を去った相川涼香は、異世界の女神ゼクシーにより転移を誘われる。 断ると今度生まれ変わる時は、虫やダニかもしれないと脅され転移を選んだ。 彼女は女神に不便を感じない様に通販サイトの能力と、しばらく暮らせるだけのお金が欲しい、と願った。 通販サイトなんて知らない女神は、知っている振りをして安易に了承する。そして授かったのは、町のスーパーレベルの能力だった。 お惣菜お安いですよ?いかがです? 物語はまったり、のんびりと進みます。 ※本作はカクヨム様にも掲載しております。

異世界着ぐるみ転生

こまちゃも
ファンタジー
旧題:着ぐるみ転生 どこにでもいる、普通のOLだった。 会社と部屋を往復する毎日。趣味と言えば、十年以上続けているRPGオンラインゲーム。 ある日気が付くと、森の中だった。 誘拐?ちょっと待て、何この全身モフモフ! 自分の姿が、ゲームで使っていたアバター・・・二足歩行の巨大猫になっていた。 幸い、ゲームで培ったスキルや能力はそのまま。使っていたアイテムバッグも中身入り! 冒険者?そんな怖い事はしません! 目指せ、自給自足! *小説家になろう様でも掲載中です

愚かな父にサヨナラと《完結》

アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」 父の言葉は最後の一線を越えてしまった。 その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・ 悲劇の本当の始まりはもっと昔から。 言えることはただひとつ 私の幸せに貴方はいりません ✈他社にも同時公開

惑星エラムより愛をこめて 第二部 大和撫子編 【ノーマル版】

ミスター愛妻
ファンタジー
 惑星エラムの女王である、黒の巫女ヴィーナスさん。  パラレルワールドに彷徨い込んだ今、テラの試練が否応なしに降りかかる。  どこに行こうと、何をしようと、女が増えて望まぬままに惑星の未来が、快楽の代価としてその肩にのしかかる。  さすがの女好きもそろそろお疲れ、普通の生活をと夢見るが、そんな簡単にはいかない。  目の前にご馳走がやってきて、しかもフォアグラの様に無理やりに、どうしても食べさされる羽目になる。  そして崩れ行く平和の中、さらなるなにか巨大な秘密が見え隠れする。  とにかく秘密のカギは日本にあるようで、秘密を求め、さらにつかの間の青春も楽しもうと、戦後が違う日本に女学生としてやって来た……  この日本はちょっと変、なにかおかしい……。  本作はミッドナイトノベルズ様に投稿していたものから、R18部分を削除、FC2様、カクヨムで公開しているものです。しかしそうはいってもR15は必要かもしれません。  一話あたり2000文字以内と短めになっています。    表紙はシャセリオー,テオドール 海から上がるヴィーナスでパブリックドメインとなっているものです。

処理中です...