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ピンク頭の暖かくなると湧いて出る系の変な人と書店で遭遇してから数日、念のため僕とユーリは外出を控えています。
「ピンク頭の変な人」
「ニコ様? なんですかそれ」
「この間、書店にいた変な人のこと。改めて文章にして紙に書いてみたら、危険人物感が増すよね。特にこの“ピンク頭”ってさ、頭の中がお花畑っぽいと思うんだけど、どう思う?」
僕が『ピンク頭の変な人』と書いた紙を掲げるとユーリが変な顔をしました。
その変な人だけど、ちょっと派手な感じではあったけど割と仕立ての良い服装をしていたので、僕の予想では成金の平民か評判のよろしくない下級貴族あたりの線が濃厚です。
なんでかって、仕立てはよくても服のセンスがよくなかったし(ぶっちゃけ下品)、九歳児の僕より年上なのに貴族としてのマナーがてんでなってなかったから。
僕とかユーリのフルネームまで知ってるってことは、僕が侯爵子息で第一王子の婚約者だとわかってるってこと。その上であの書店での怪しげな態度。ないわー。
まあ、そういうことで、クリス父さまとミシェル母さまに「本屋さんに行ったら、こうこうこんな変な人がいたんだよー」って話したら「うちの可愛いニコが変質者に目をつけられたかもしれない!」ってなって、ほとぼりが冷めるまで外出禁止になってしまいました。
普段の僕なら外に出られなくて不満ぷりぷりになるところだけど、今回ばかりは父さまと母さまの言いつけに素直に従いました。それだけあのピンク頭の変な人を前にした時、なんともいえない嫌な感じが拭えなかったから。これは、他人からの悪意を感じやすくなる僕のスキルからくるのもある。だから余計に父さまと母さまから心配されるんだけど。
一応、クリス父さまの騎士団の伝手を使って、内緒でピンク頭の変質者のことを調べてもらっています。
思いっきり騎士団の私的利用だけど、別に良いのです。みんながお口チャックしてれば無かったことになるのです。お饅頭の下に小判ならぬ、差し入れのクッキーの下にエールで「くっくっく……グランチェスト、お主も悪よのう」だけど、気にしない気にしない。
「ニコ、先日ニコに目をつけた変質者の素性が判明した」
夕食時、おもむろにクリス父さまが言った。
おお、さすがは騎士団の皆様、派手目な容姿で変な人という限られた情報しかなかったのに、思ったよりも早かったね。
「名前はマティス・バークレー、十二歳。最近バークレー男爵のところに養子として引き取られた者だ」
「養子、ですか」
「ああ。男爵と平民との間にできた庶子らしい。男爵は自分に子がいたことをずっと知らなかったのだが、最近になってマティスの母親だと名乗る者が、自分の子を男爵の子だと言って男爵家へ乗り込んだそうだ」
十二歳にもなってから庶子だと主張するのもちょっと変な話だよね。男爵とはいえ相手は貴族、下手したら不敬を問われるかもしれないのに強気な人だなあーーそれとも空気と常識が読めないタイプなのかな?
だけど、そんな人ならもっと早いうちに「この子はあなたの子です!」って名乗るか、妊娠がわかった時点で男爵家に特攻しても良さそうなものなのに。なんだか胡散臭い話だなあ。
これは「あれれえ? こんなところに◯◯があるよ?」とか言ってあざとく事件の痕跡を発見する少年のように立ち回らないといけない感じ?僕、蝶ネクタイは似合わないよ?
「彼は今期から学園に通い始めたらしいから、アンソニー様と同学年になるな。度々寮を抜け出しては街中を彷徨いたり、おかしな言動が多くて学園ではちょっとした有名人らしい」
あらら、普段からアレな人なんだ。多分『有名人』と書いて『問題児』と読むんだよ。これは近寄ったらダメな人確定だね。
「自分を物語の主人公だと思い込んでいて、アンソニー様を始め複数の高位貴族の子息たちへ絡みに行っているという話だ。まあ、アンソニー様は歯牙にも掛けていないそうだし、他の高位貴族もほとんどが婚約者持ちだ。まともな思考なら、やたらと粉をかけて回るような者を相手にはしないな。ただ、一部例外はいる様だが」
そうだよねえ。貴族、特に高位貴族になると婚約とか結婚とかって家同士の契約的な面もあるもんね。その一部の例外な人たちはピンク頭の人と同じで、脳内お花畑なんだろうなぁ。
自分のことをヒロインを守る正義の味方だと思ってそう。ピンク頭の人ーーマティスくんだっけ?その彼が言うことは絶対で、マティスくんの背後で「そうだそうだ!」とか言ってる場面が想像できるよ。
「我が家とバークレー男爵家との間にこれといった関わりはないし、よほどバークレー男爵家がうちへ接点を持とうとしない限り、今後、関わり合うこともないだろう」
「では父さま、またお出かけしても大丈夫ですか?」
「ああ。その代わり、ユーリの他にも護衛を連れて行くこと」
こうして、条件付きではあるけど僕は晴れてお出かけ解禁となったのでした!
「ピンク頭の変な人」
「ニコ様? なんですかそれ」
「この間、書店にいた変な人のこと。改めて文章にして紙に書いてみたら、危険人物感が増すよね。特にこの“ピンク頭”ってさ、頭の中がお花畑っぽいと思うんだけど、どう思う?」
僕が『ピンク頭の変な人』と書いた紙を掲げるとユーリが変な顔をしました。
その変な人だけど、ちょっと派手な感じではあったけど割と仕立ての良い服装をしていたので、僕の予想では成金の平民か評判のよろしくない下級貴族あたりの線が濃厚です。
なんでかって、仕立てはよくても服のセンスがよくなかったし(ぶっちゃけ下品)、九歳児の僕より年上なのに貴族としてのマナーがてんでなってなかったから。
僕とかユーリのフルネームまで知ってるってことは、僕が侯爵子息で第一王子の婚約者だとわかってるってこと。その上であの書店での怪しげな態度。ないわー。
まあ、そういうことで、クリス父さまとミシェル母さまに「本屋さんに行ったら、こうこうこんな変な人がいたんだよー」って話したら「うちの可愛いニコが変質者に目をつけられたかもしれない!」ってなって、ほとぼりが冷めるまで外出禁止になってしまいました。
普段の僕なら外に出られなくて不満ぷりぷりになるところだけど、今回ばかりは父さまと母さまの言いつけに素直に従いました。それだけあのピンク頭の変な人を前にした時、なんともいえない嫌な感じが拭えなかったから。これは、他人からの悪意を感じやすくなる僕のスキルからくるのもある。だから余計に父さまと母さまから心配されるんだけど。
一応、クリス父さまの騎士団の伝手を使って、内緒でピンク頭の変質者のことを調べてもらっています。
思いっきり騎士団の私的利用だけど、別に良いのです。みんながお口チャックしてれば無かったことになるのです。お饅頭の下に小判ならぬ、差し入れのクッキーの下にエールで「くっくっく……グランチェスト、お主も悪よのう」だけど、気にしない気にしない。
「ニコ、先日ニコに目をつけた変質者の素性が判明した」
夕食時、おもむろにクリス父さまが言った。
おお、さすがは騎士団の皆様、派手目な容姿で変な人という限られた情報しかなかったのに、思ったよりも早かったね。
「名前はマティス・バークレー、十二歳。最近バークレー男爵のところに養子として引き取られた者だ」
「養子、ですか」
「ああ。男爵と平民との間にできた庶子らしい。男爵は自分に子がいたことをずっと知らなかったのだが、最近になってマティスの母親だと名乗る者が、自分の子を男爵の子だと言って男爵家へ乗り込んだそうだ」
十二歳にもなってから庶子だと主張するのもちょっと変な話だよね。男爵とはいえ相手は貴族、下手したら不敬を問われるかもしれないのに強気な人だなあーーそれとも空気と常識が読めないタイプなのかな?
だけど、そんな人ならもっと早いうちに「この子はあなたの子です!」って名乗るか、妊娠がわかった時点で男爵家に特攻しても良さそうなものなのに。なんだか胡散臭い話だなあ。
これは「あれれえ? こんなところに◯◯があるよ?」とか言ってあざとく事件の痕跡を発見する少年のように立ち回らないといけない感じ?僕、蝶ネクタイは似合わないよ?
「彼は今期から学園に通い始めたらしいから、アンソニー様と同学年になるな。度々寮を抜け出しては街中を彷徨いたり、おかしな言動が多くて学園ではちょっとした有名人らしい」
あらら、普段からアレな人なんだ。多分『有名人』と書いて『問題児』と読むんだよ。これは近寄ったらダメな人確定だね。
「自分を物語の主人公だと思い込んでいて、アンソニー様を始め複数の高位貴族の子息たちへ絡みに行っているという話だ。まあ、アンソニー様は歯牙にも掛けていないそうだし、他の高位貴族もほとんどが婚約者持ちだ。まともな思考なら、やたらと粉をかけて回るような者を相手にはしないな。ただ、一部例外はいる様だが」
そうだよねえ。貴族、特に高位貴族になると婚約とか結婚とかって家同士の契約的な面もあるもんね。その一部の例外な人たちはピンク頭の人と同じで、脳内お花畑なんだろうなぁ。
自分のことをヒロインを守る正義の味方だと思ってそう。ピンク頭の人ーーマティスくんだっけ?その彼が言うことは絶対で、マティスくんの背後で「そうだそうだ!」とか言ってる場面が想像できるよ。
「我が家とバークレー男爵家との間にこれといった関わりはないし、よほどバークレー男爵家がうちへ接点を持とうとしない限り、今後、関わり合うこともないだろう」
「では父さま、またお出かけしても大丈夫ですか?」
「ああ。その代わり、ユーリの他にも護衛を連れて行くこと」
こうして、条件付きではあるけど僕は晴れてお出かけ解禁となったのでした!
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