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1章
武器であり弱点
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クロツバサはチハイザメ、ウネリツノと並ぶ三怪物の一角である。クロツバサは空の覇者として、この世界を牛耳っていた。
それ以上の情報は渡さないよ。
クロツバサはこれだけの数の魔物に睨まれてれても余裕そうにしている。これが、空の覇者なのか。
黒い雲を媒介に落とす紫のイカヅチがソラヘビを、巨大な風の刃がギガバードを、凶悪な鉤爪がガーゴイルを、次々撃ち落としていく。
「あいつらも、かなりやりづらそうにしてるな」
飛行組の中で1番古参であるキジクジャクがあれこれ指示をしているようだが、それでもやりづらそうだ。彼らは上空で戦っているため、俺たちの指示は下からではほぼ聞こえないだろう。………リスクはあるが、俺も上に行くべきだ。
「キジクジャク、戻ってこい!」
俺は魔物杖を使い自分のそばまでキジクジャクをワープさせた。完全に説明するタイミングを逃してしまっていたが、これが新調した魔物使いの杖の能力である。仲間モンスターを杖のそばまでワープさせることができるのだ。流石、魔物使いのための魔物使いによる魔物使いの国は違うね!
「キジクジャク、乗せてくれ!」
「ツクツク!」
俺はキジクジャクに乗り込み自ら危険区域である上空へと飛んでいった。リスクまみれだが、このまま下から見ていたら間違いなく全滅する。
デスビーが自慢の毒針で刺し、スカイシャークは毒々しい色の皮に噛みつき、青龍は空気すらも凍てつく氷のブレスを吹き、ヴァイが燃え盛る威力絶大な炎のブレスを吹いている。だが、そこまでやってはじめて1割削れたかどうか、ってところだろうか。
それに対し、連合軍の戦闘不能者は80を超えている。俺の仲間である、サンダーバードのサバルも、既にその中に含まれている。
今は魔物杖の中に入れて休ませていて、本人曰く命に問題はないがこれ以上はもう戦えない、だそうだ。
「わかった、ゆっくり休んでいてくれ」
サバルはカミナリを操る鳥だからか、クロツバサの放つデスプラズマを無効化できる。だがあのデカブツがサバルを脅威だと思ったのか、滑空鯨やギガントフライなどの壁を無視して優先的にサバルを攻撃しにいったのだ。
「もしかしてあいつ、意外に賢い?」
デカくて強いやつだとは思ってたが、そこに賢さを加えられるのはマジで困るな…
クロツバサは死角の範囲がかなり大きい。それが弱点だと調査書には書かれていた。まさか、その弱点を補う無数の目があるなんて普通は思わないだろう。
「それがより一層気持ち悪さを引き出してるんだけどな」
「ツ…」
「あ、やっぱ魔物視点からでもあれ気持ち悪いんだ」
ちょっと待て、目か。もしかして…
その無数の目は武器なだけでなく、弱点でもあるんじゃないか?
「滑空鯨!俺の指示を聞いてくれ!」
俺は自分のすぐそばにいた誰のものかすらわからない滑空鯨にある作戦のために協力をしてくれないかと頼む。滑空鯨は一瞬困惑したが、俺の必死な表情を見てすぐに許諾した。
その作戦とは…
「ホゲェェェェェェェェ!!」
白色の鯨が、クロツバサの死角…いや、死角だと思われていた側面に突っ込む。もちろんクロツバサはすぐに目を展開して鯨の位置を正確に把握し、瞬時に攻撃しようとする。だが、
「鯨の背中にいた俺たちには気づけなかったようだな?」
「クェー!」
ベガ、マティス、ヴァイの3人が風の刃を、毒針を、火球を展開された目に向けて乱射する。今まで全く動じていなかったクロツバサが目に見えて悶えた。どうやら、今のはかなり効いたみたいだ。自分の弱点を看破されたクロツバサが目を急いで閉じていく。だが、1つだけ閉じない目があった。いや、正確に言えば"閉じれない目"、なのだが。
「ヒョーロロ!!」
アルタイルが、必死に閉じようとしている目をもちまえの怪力で無理矢理開けさせているのだ…!
クロツバサはアルタイルに向けてデスプラズマを放とうとする。サバルなら効かなかったが、アルタイルは普通にデスプラズマは効く。そしてもし当たれば致命傷となるだろう。もしかしたら、即死するかもしれない。
俺はそれに備えて、あるモンスターを出した。
雷撃の準備が整った。その鉄槌は空の覇者である自分を辱めた愚かな鷹に降り注ぐ。その無慈悲な攻撃は、あの鳥の命を奪い…!
「マレム、頼んだぞ!」
「。」
マジックゴーレムのマレムが、その雷撃からアルタイルの命を守った。防御完全特化のマレムだ。このくらいの攻撃、あと2発は耐えれる。そして俺はもう1匹仲間を出した。
——ファラクだ。
毒が効くならドクカゲも出していたのだが、どうやらクロツバサは毒に耐性があるらしく、クロツバサの目にオオトカゲの毒を流し込んでも余裕で耐えていた。
さて、今仲間モンスターの中で最も攻撃力が高いのはファラクだ。マレムがアルタイルを守っている間にファラクに目を削れるだけ削ってもらうことにする。
「ゴァーッ!!」
ファラクがやる気を見せている。ここでどれだけ削れるかでだいぶ変わってくるんだ、頼むぞ。
ーークロツバサ討伐戦は、まだまだ始まったばっかりだ。
それ以上の情報は渡さないよ。
クロツバサはこれだけの数の魔物に睨まれてれても余裕そうにしている。これが、空の覇者なのか。
黒い雲を媒介に落とす紫のイカヅチがソラヘビを、巨大な風の刃がギガバードを、凶悪な鉤爪がガーゴイルを、次々撃ち落としていく。
「あいつらも、かなりやりづらそうにしてるな」
飛行組の中で1番古参であるキジクジャクがあれこれ指示をしているようだが、それでもやりづらそうだ。彼らは上空で戦っているため、俺たちの指示は下からではほぼ聞こえないだろう。………リスクはあるが、俺も上に行くべきだ。
「キジクジャク、戻ってこい!」
俺は魔物杖を使い自分のそばまでキジクジャクをワープさせた。完全に説明するタイミングを逃してしまっていたが、これが新調した魔物使いの杖の能力である。仲間モンスターを杖のそばまでワープさせることができるのだ。流石、魔物使いのための魔物使いによる魔物使いの国は違うね!
「キジクジャク、乗せてくれ!」
「ツクツク!」
俺はキジクジャクに乗り込み自ら危険区域である上空へと飛んでいった。リスクまみれだが、このまま下から見ていたら間違いなく全滅する。
デスビーが自慢の毒針で刺し、スカイシャークは毒々しい色の皮に噛みつき、青龍は空気すらも凍てつく氷のブレスを吹き、ヴァイが燃え盛る威力絶大な炎のブレスを吹いている。だが、そこまでやってはじめて1割削れたかどうか、ってところだろうか。
それに対し、連合軍の戦闘不能者は80を超えている。俺の仲間である、サンダーバードのサバルも、既にその中に含まれている。
今は魔物杖の中に入れて休ませていて、本人曰く命に問題はないがこれ以上はもう戦えない、だそうだ。
「わかった、ゆっくり休んでいてくれ」
サバルはカミナリを操る鳥だからか、クロツバサの放つデスプラズマを無効化できる。だがあのデカブツがサバルを脅威だと思ったのか、滑空鯨やギガントフライなどの壁を無視して優先的にサバルを攻撃しにいったのだ。
「もしかしてあいつ、意外に賢い?」
デカくて強いやつだとは思ってたが、そこに賢さを加えられるのはマジで困るな…
クロツバサは死角の範囲がかなり大きい。それが弱点だと調査書には書かれていた。まさか、その弱点を補う無数の目があるなんて普通は思わないだろう。
「それがより一層気持ち悪さを引き出してるんだけどな」
「ツ…」
「あ、やっぱ魔物視点からでもあれ気持ち悪いんだ」
ちょっと待て、目か。もしかして…
その無数の目は武器なだけでなく、弱点でもあるんじゃないか?
「滑空鯨!俺の指示を聞いてくれ!」
俺は自分のすぐそばにいた誰のものかすらわからない滑空鯨にある作戦のために協力をしてくれないかと頼む。滑空鯨は一瞬困惑したが、俺の必死な表情を見てすぐに許諾した。
その作戦とは…
「ホゲェェェェェェェェ!!」
白色の鯨が、クロツバサの死角…いや、死角だと思われていた側面に突っ込む。もちろんクロツバサはすぐに目を展開して鯨の位置を正確に把握し、瞬時に攻撃しようとする。だが、
「鯨の背中にいた俺たちには気づけなかったようだな?」
「クェー!」
ベガ、マティス、ヴァイの3人が風の刃を、毒針を、火球を展開された目に向けて乱射する。今まで全く動じていなかったクロツバサが目に見えて悶えた。どうやら、今のはかなり効いたみたいだ。自分の弱点を看破されたクロツバサが目を急いで閉じていく。だが、1つだけ閉じない目があった。いや、正確に言えば"閉じれない目"、なのだが。
「ヒョーロロ!!」
アルタイルが、必死に閉じようとしている目をもちまえの怪力で無理矢理開けさせているのだ…!
クロツバサはアルタイルに向けてデスプラズマを放とうとする。サバルなら効かなかったが、アルタイルは普通にデスプラズマは効く。そしてもし当たれば致命傷となるだろう。もしかしたら、即死するかもしれない。
俺はそれに備えて、あるモンスターを出した。
雷撃の準備が整った。その鉄槌は空の覇者である自分を辱めた愚かな鷹に降り注ぐ。その無慈悲な攻撃は、あの鳥の命を奪い…!
「マレム、頼んだぞ!」
「。」
マジックゴーレムのマレムが、その雷撃からアルタイルの命を守った。防御完全特化のマレムだ。このくらいの攻撃、あと2発は耐えれる。そして俺はもう1匹仲間を出した。
——ファラクだ。
毒が効くならドクカゲも出していたのだが、どうやらクロツバサは毒に耐性があるらしく、クロツバサの目にオオトカゲの毒を流し込んでも余裕で耐えていた。
さて、今仲間モンスターの中で最も攻撃力が高いのはファラクだ。マレムがアルタイルを守っている間にファラクに目を削れるだけ削ってもらうことにする。
「ゴァーッ!!」
ファラクがやる気を見せている。ここでどれだけ削れるかでだいぶ変わってくるんだ、頼むぞ。
ーークロツバサ討伐戦は、まだまだ始まったばっかりだ。
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