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1章

ナイトメア種

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世界に発生している異変がわかったところで今の俺ではどうすることもできない。
とりあえずカリヨネッタをそのまま目指すことにした。ちなみに、仲間たちにこのことを話したところファラクやアリサなどには思い当たる節があったらしい。
やばいな、これ。想像以上に深刻かも…




「何よ、あのデカブツ」

「あれはベヒモスだ。あの見た目だが、性格は温厚らしい」

「へぇ」




「うわ、ナイトメアデスワームか!」

「レベルは35みたいやで。そなら、勝てるわ」
「クェー!」

バサ、ファラク、ブライガー、ベガ、そしてアガスが前線に出る。他の仲間モンスターやパーティーメンバーはオーガやサタンフロッグ、ナイトメアグレムリンと交戦中だ。

オーガは自慢の暴力で自然を制してきた、武闘派だ。こんな目の前のカメなど、瞬く間に捻り潰…

「!?」
「—ッ」

メアリに行手を阻まれ、

「ガァァァァァァ!」
「それそれそれそれそれ」
「グォォ」
炎と岩と毒の弾丸を浴び続け、瞬く間に倒れた。


サタンフロッグは幼稚園児並みの大きさを持つ、カエルである。バジリスク以外に天敵はいない。このカエルに舌で舐められると様々な病魔に犯される危険性がある。例えば、竜をも泣かせる「竜殺病」、人の精神を狂わせる「ラジャムサ症候群」などだ。

持ち合わせる様々な病魔を用いて獲物を弱らせる、それがサタンフロッグだ。しかし、今回ばかりは相性が悪すぎた。

「シャー!」

自分よりも小さな蛇。自分よりも戦闘力が低いであろう蛇。何故、自分は体がすくんでいるのだ?
自分の唯一の天敵はバジリスクだけ。どんなにレベル差があっても一目睨まれただけで硬直させられてしまうバジリスクだけではなかったのか?

そのちいさな蛇の名前はアオ。種族名はヘビタイショウ。ヘビタイショウは、バジリスクの下位種である。サタンフロッグの頭の中ではわかっている。これはバジリスクではないと。だが、本能が言う。これはバジリスクだと。


結果、この世界でトップレベルに厄介な能力を持つサタンフロッグは、自分よりレベルも、体も、強さも小さい蛇に完敗させられることとなった。


ナイトメア種。それは、ただでさえ凶暴な魔物が、さらに凶暴になった姿。この種族は、魔物使いでも仲間にすることはできない。

グレムリンは弱い魔物である。ただのグレムリンなら。ナイトメア種となったグレムリンは超危険生物となる。

「グキヤッキャ!」
「モヒィ!」

ナイトメアグレムリンはオリオンと死闘を繰り広げている。だが、時々飛んでくる矢と鳥がうざったい。彼は素早い動きでまず鳥を捕まえようとした。

しかし、その判断が、仇となった。

支援魔法によって攻撃の威力が上がった伏兵のドクカゲがグレムリンに向かって毒の射線を放った!オリオンもアルタイルもキジクジャクもハリムも、狙いは初めからナイトメアグレムリンを殺すことではない。なるべく傷を露出させるためだった。

みるみるうちにナイトメアグレムリンは弱っていく。ナイトメア種となることで身体能力は上がったものの、貧弱な耐性は何一つ改善されなかったのが敗因だ。


デスワームは、砂漠によく生息している生き物だ。デスワームは通常種でもそこそこ強い。稀に、ワイバーンやグリフォンと戦って勝つこともある。そんなデスワームがナイトメア種となったのだ。弱いわけがない。

ナイトメアデスワームは、その自慢の巨体を使い敵対生物たちを押し潰そうとした。デスワームの体は、ほぼ鉄と同じ成分でできている。当たればひとたまりもない。はずだった。

「やっぱ強いやん。ナイトメア種って怖いんやなぁ」

「…!」
 
「ゴォォ」

アガス、バサ、ファラクの3人がかりで受け止められていた。グリフォンはさっきから風の刃で攻撃している。まるで、自分の気を逸らすため…?

異変に気付いた。ネコはどこだ。ネコがさっきまでいたはずだ。どこへ行った…

ネコを探していると、真上から声が聞こえてきた。

「よう、体がほぼ鉄と同じ成分でできてるってんならこれが効果抜群だよな?——酸だよ。」


オオトカゲの毒がナイトメアデスワームによりばら撒かれる!ナイトメアデスワームは悲鳴を上げながらブライガーを叩き落とそうと体をゆらそとする。しかし、それは下の怪力三人組によって防がれる。

ナイトメアデスワームの悲鳴は止まらない。
鋼の鎧が、オオトカゲの毒によりどんどん溶けていっていき、やがて…デスワームの肉が見えたのと同時に、毒がなくなった。

ブライガーはその肉を引きちぎる!ブライガーは血肉喰らいの専門家である。デスワームの肉を喰らい出してすぐ、デスワームは動かなくなった。


全く、まさかナイトメア種と2体同時に遭遇するとは思わなかった。ナイトメア種以外にもオーガだのカエルだのいたし。
だが、あともうちょっとでカリヨネッタに着く。それまでの辛抱だ。
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