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12 お返し

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ついにみんなの魔石が尽き、私の出番になっていた。


「ダメだと思ったらすぐに降参してください」


アルノーの心配を背に広場へ出る。




ズサっ
ーーシーマの前に立つ。



圧倒的に不利な状況に、広場から心配の視線を浴びるなかシーマはニヤニヤと笑う。


「全員からどうせ負けると思われてるぞ」

私にじりじりと歩み寄りながらまだ喋る。

「余り物のお荷物なんて相手にならねーよ」

あの頃と変わらない私をバカにする視線と目が合う。


「まあ、降参なんかさせねーけどな」

いきなり魔法を打ってきた。

ズバァァンー

パリン

私は瞬時にバリアの魔石を使う。

魔石がすぐに割れた。なるほど、1度しかバリアが耐えられないほどの攻撃の高さだ。


「チッ、弾いてんじゃねーよ!」

次々と攻撃を打ってくる。


パリン、パリン、パリンーー
魔石がどんどんとと減っていく。

こちらに攻撃をさせないためか、魔法攻撃の手数を増やしている。

ズバン、ズバァアンーー



「ほら、お前の魔力で攻撃してこいよ。魔石しか使えねーとか魔力持ち失格だろ」


私は空いた片手で特殊加工した普通に見える小石を、シーマにばら撒くように投げつける。

それはまるで相手を挑発するように。


「はっ!?ここで石とかお前舐めてんのか?」

シーマの足元には小石が散らばっており、それをどんどん踏みつける。

「てめえ、ぶざけるのもいいかげんにしろよ」

バチバチバチーー


私の挑発に乗り、さらに強い攻撃魔法を仕掛けようとするシーマの言葉に、私は強力なバリアの魔石を使った。

今度は魔石も簡単に割れることなく、さらに強力に手数を増やした一方的な攻撃魔法を、すべて弾いている。


「バリアばっかりうぜえな!!もうこれで最後にしてやるよ!!!」

シーマはこのバリアが破れるほどの全力魔法を仕掛けてくるみたいだ。




ーー私はずっと、この時を待っていた。


思わず口角をあげてしまう。

ここから動かないと思ったのかシーマが詠唱している姿を確認すると、自分の正面にバリアに似た魔石を投げる。


パァァァン


先ほどシーマの足元にばら撒いた石は、相手の割った先に瞬間移動ができる、特殊加工して作ったものだ。

シーマの後ろで割れた石の先に瞬間移動すると、そっと近づきシーマが放とうとしている片方の腕をグッと掴む。


「は?おま、」

「私の魔力は、人が使う魔法を増強できる」

掴んだ腕にありったけの魔力を流し、さっと離れる。


「お望み通り私の魔力で、攻撃してあげる。ちなみにアンタが放とうとしてる目の前にあるのは鏡よ」


魔法を放った瞬間、すぐさま浮遊の魔石を使い、上空高くに逸れる。



シーマは慌ててバリアを張るが簡単に破れ、跳ね返ってきた魔法ともに光に包まれる。






ドゴォオオオーーーン






おぞましいくらい大きな音と共に、辺りは煙に包まれる。


その光景が収まるまで冷たく見下ろすと、ゆっくり地面に降り立ち、シーマが倒れているのを確認した。

まともに喰らえば、跡形も残らないくらい強力だ。ネームタグの緊急回避が発動したんだろう。


指1本動かせないシーマに言葉を返す。


「自分の魔法にやられるなんて、魔力持ち失格ね」


静かな会場に私の声だけが響いた。




「・・・・・・・・・・勝者、魔法支援室」


魔法支援室の勝利が判定され、静まり返る広場に一気にどよめきと、歓声が上がった。


私はシーマが救護班に運ばれるのを横目に、周囲の声に包まれるなか国王の方を見上げる。


(これが、私の実力よ)


国王は満足したのか笑顔で手を叩いている。

隣にいるミハイルはどこか複雑そうな顔をしていた。
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