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5 オバケと同居

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 頭はつるつる。肌はカサカサにひからびていて、土色をしている。

 目のあるところはへこんでいて、眼球もなにも入っていないようだ。

 ほお骨は浮きでていて、口元の肉はそげ落ちていて、顔の上からでも、頭蓋骨の形がよくわかる。

 体と同じ土色のボロ布を、肩からたすきがけにして、体をおおって。ミイラは、手に長い木の棒を持ち、土車の上に座っている。


「な、な、な、な、だ、だ、だ、だ」


 あごがかみ合わなくて、「なんで、ここに?」とも「だれなの?」ともきけない。


 まさか、わたしのことを追いかけて、家にまで、入ってきたの?


 階段の下に、明かりがともって、わたしはまた「きゃっ」ととびあがった。


「香蘭ちゃん? どうしたの? 夜中に大声なんか出して?」


 ママがパジャマの上にカーティガンをはおって、階段の下からこちらを見あげている。


「ママ、ママ、ママ。みい、みい、みい、みいら……」


「あら? 香蘭ちゃんたら、それはなぁに? どうして、そんな、きたない箱がうちの中にあるの?」


 ママが、階段をギシギシのぼってくる。


「さ、さわっちゃダメっ!! 」


 土車にのばしたママの腕に、わたしはしがみついた。


「ま、ママ、み、ミイラが! ミイラが乗ってるっ!」


「……え? ミイラ……?」


 わたしを腕にぶらさげたまま、ママはぽかんとした顔になる。

 その顔が、あきれ顔にかわった。


「香蘭ちゃんたら、ま~た、おかしな想像しちゃってるの?」



「……想像?」


 わたしはあらためて、土車の上を見た。

 ミイラはピクリとも動かずに、車の上に座っている。無表情のまま。目はあるのか、ないのかさえわからない。


「香蘭ちゃん。こんなきたない木の車、いったいどこから運んできたのか知らないけど。オバケごっこなんかしてないで、朝になったら、外に捨ててきなさいね。真夜中なんだから、さわがないで、早く寝なさい。ママもゆっくり寝たいの。おやすみ」


 ママはめんどくさそうに、トントンと階段をおりて、一階の自分の寝室にもどっていく。


「……おやすみなさい……」


 尻もちをついたまま、わたしはぼうぜんとして、ママを見送った。


 ママには、土車しか見えてない……。

 つまり、土車には実体があって、ミイラには実体がない……。


 ……信じられない……。

 体も透けてなくて、こんなに、ふれたらさわれそうなのに……。


 気づいたとたんに、ゾクっとして、わたしは自分の手を後ろに引っ込めた。

 このミイラは、ダリじゃない。

 ぜんぜん別の何かだ。


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