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5 オバケと同居
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しおりを挟むダリが消えた――。
一瞬のうちに、わたしの部屋からすべての煙が、かき消えた。
なにが起きたの……?
ドアの外側。廊下の闇に、見慣れない木の棒がつき立っているのが見える。わたしの身長ほどもある長い棒が。
そんなものが、廊下にあるはずない。それに、細い棒が、支えなしに立っていられるはずもない。
だれかが……あの棒を持って、廊下にいる……。
「……だれ……?」
口から出た、わたしの声は震えた。
廊下から、物音はしない。
さっきの「カランっ!」は、外のだれかが、棒を廊下につき立てた音に決まっているのに。
吐き気が消えていた。
わたしは、ベッドから立ちあがった。震える胸をこぶしでおさえて、カーペットの上をそろそろと移動する。
「えいっ!」
ドアを開けると、目の前に、青白い光の球が浮いていた。
……え……?
一、ニ、三、四つ。
光を強めたり弱めたりしながら、球がただよう。
中に、着物の旅姿の男女が見える。
《ろっこんしょうじょう》
《ろっこんしょうじょう》
光の球から声がきこえてくる。
と、思ったのは一瞬で、光は、ふわりと天井に浮かんだと思うと、闇に吸い込まれるようにして消えた。
な、な、なにっ!?
廊下の電気のスイッチを手でさぐる。パチンと廊下に蛍光灯がともる。
「きゃ、きゃ、きゃああああっ!! 」
明るくなった廊下を見たとたん、わたしは、その場に尻もちをついた。
四角い木の車が置いてあった。車輪まで木でできた、年代もののリアカーが。
「な、な、なんでっ!? 」
昼間、公園で見かけた土車が、今、自分の家の廊下にある。
上に乗っている、流木のような物体を、間近で見てしまった。
ミイラ――だった。
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