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しおりを挟む金色に光るチュピちゃんは、もねのてのひらで立ちあがって、じっと外を見ています。
うちわみたいな耳をぴんとはって、アーモンド形の大きな目で。
下のほうにあいている、四角いあなから、ふわりとホタルの光がでてきました。服の入っているあなでした。
光は、ふわふわ、空へのぼっていきます。
まんなかのほうのあなからも、ふわりとホタルが出てきました。人形の入っているあなからでした。
光は、ふわふわ、のぼっていきます。
「あ……」
次にでてきたホタルは、あの、男の子がすわっていたあなからでした。
「イチロー!」
あなの中では、男の子が、わんわんないています。
「え?」
もねは、ホタルの光を見なおしました。ただの金色に光に見えます。
(だけど、あの子、カメの名前をよんでた……)
「ピッピ!」
となりのあなから、みのりちゃんの声がしました。
あなの外に、ぼんやりとまるい光がでてきました。
金色の光は、みのりちゃんのあなの前をただよっています。
もねには、ただの金色のまるい光にしか見えません。
「ピッピ……」
だけど、みのりちゃんはないています。
(……どうして?)
光は、空に向かってのぼりだしました。
たくさんの光にまぎれて、星のようです。
もねは、みのりちゃんのことばを思いだしていました。
――なんでも屋さんのおじいさんにね、言われたの。とっても、大事にしていたものと、おわかれしなきゃならないときは、ホタルまつりに行きなさい――
「もしかして、このホタルって、ぜんぶ……」
そのときです。
チュピちゃんが、動きだしたのです。
もねのてのひらから、うでにつたってのぼってきます。
「えっ! チュピちゃん?」
もねは、あわてて体をよじりました。
そのまに、チュピちゃんは、もねのせなかをかけていきます。
もねは、むちゅうでさけびました。
「やだ! やだ、チュピちゃん! わたしは、おわかれなんか、しないからっ!」
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