11 / 26
10
しおりを挟むカラカラカラ……。
かわいたかるい音がして、もねは目をさましました。
(あ……チュピちゃんが、回し車をまわしてる……)
なんだか、ひさしぶりにきいたような気がします。
だけど、毎日、ねむる前にきいていたような気もします。
カラカラカラ……。
音は、部屋のくらやみから、小さく小さくきこえてきます。
こもりうたのように、やさしい音です。
もねはまた、うつらうつらしてきました。
(……え?)
もねは、パチッと目をあけました。
(どうして? チュピちゃんは死んじゃったのに!)
くらやみをさぐって、電気のコードをひきます。
蛍光灯のひかりがまぶしくつきます。
まばたきしてから、もねは、メタルラックのほうを見ました。
ピンク色のゲージが、まだそこにおいてありました。
だけど、中身は空っぽで、プラスチックのそこが見えます。
きれいにあらわれた回し車だけが、ぽつんと金網に、とりつけてあります。
回し車はとまっています。カタリとも、動きません。
あたりまえです。
チュピちゃんはもういないのです。
なみだがあふれそうになりました。
もねは、また、部屋の電気を消しました。タオルケットをにぎりしめて、ぎゅっと目をとじました。
カラカラカラ……。
ドキッとしました。
回し車のまわる音です。
もねは、くらやみに目をこらしました。
ゲージのまるいりんかくさえ見えません。
「チュピちゃん……いるの……?」
とたんに、音がとまりました。
もねは、あわてて、りょうてで口をおおいました。
しばらくすると、また、カラカラカラカラと、きこえてきました。
ドキドキ、ドキドキ、しんぞうがなります。
チュピちゃんは、ゆうれいになって、回し車をまわしているのでしょうか。
なぜだか、こわくありません。ゆうれいはこわいけど、チュピちゃんなら、べつです。
カラカラカラカラ……。
(チュピちゃん、そこにいるんだ……)
なんだか、むねの中が、やわらかくなってきました。
もねは、そっと、まぶたをとじました。
回し車の音は、チュピちゃんの歌う、こもりうたのように、ずっと、ずっとひびいていました。
0
お気に入りに追加
3
あなたにおすすめの小説
たぬき
くまの広珠
児童書・童話
あの日、空は青くて、石段はどこまでも続いている気がした――
漁村に移住してきたぼくは、となりのおばあさんから「たぬきの子が出る」という話をきかされる。
小学生が読める、ほんのりと怖いお話です。
エブリスタにも投稿しました。
*この物語はフィクションです。実在の人物、団体、場所とは一切関係ありません。
「羊のシープお医者さんの寝ない子どこかな?」
時空 まほろ
児童書・童話
羊のシープお医者さんは、寝ない子専門のお医者さん。
今日も、寝ない子を探して夜の世界をあっちへこっちへと大忙し。
さあ、今日の寝ない子のんちゃんは、シープお医者んの治療でもなかなか寝れません。
そんなシープお医者さん、のんちゃんを緊急助手として、夜の世界を一緒にあっちへこっちへと行きます。
のんちゃんは寝れるのかな?
シープお医者さんの魔法の呪文とは?
イケメン男子とドキドキ同居!? ~ぽっちゃりさんの学園リデビュー計画~
友野紅子
児童書・童話
ぽっちゃりヒロインがイケメン男子と同居しながらダイエットして綺麗になって、学園リデビューと恋、さらには将来の夢までゲットする成長の物語。
全編通し、基本的にドタバタのラブコメディ。時々、シリアス。
【完】ことうの怪物いっか ~夏休みに親子で漂流したのは怪物島!? 吸血鬼と人造人間に育てられた女の子を救出せよ! ~
丹斗大巴
児童書・童話
どきどきヒヤヒヤの夏休み!小学生とその両親が流れ着いたのは、モンスターの住む孤島!?
*☆* *☆* *☆* *☆* *☆* *☆* *☆*
夏休み、家族で出掛けた先でクルーザーが転覆し、漂流した青山親子の3人。とある島に流れ着くと、古風で顔色の悪い外国人と、大怪我を負ったという気味の悪い執事、そしてあどけない少女が住んでいた。なんと、彼らの正体は吸血鬼と、その吸血鬼に作られた人造人間! 人間の少女を救い出し、無事に島から脱出できるのか……!?
*☆* *☆* *☆* *☆* *☆* *☆* *☆*
家族のきずなと種を超えた友情の物語。
おねこのさんぽみち
はらぺこおねこ。
児童書・童話
おねこのうたを詩や物語にしてみました。
今まで書いた詩を……
これから書く詩を……
徒然るままに載せていきます。
また。ジャンルがなにになるかわかりませんのでおそらく一番近い「児童書・童話」で書かせていただきます。
第二音楽室の化け物
おにぎり
児童書・童話
健太はコメノ小学校に通う5年生だ。
ピアノ教室に通う健太は一週間後に控える発表会に向けて、「カノン」を練習していた。
この日、健太は体操服を忘れたのを思い出して放課後の小学校に忍び込んでいた。
ロッカーから体操服を取って教室を出ようとすると、どこからかピアノの音が聞こえてくる。
その落ち着いた旋律に聞き覚えがあった。
「カノン」だ。
音楽室に行ってみるが、そこには誰もいなかった。
一体誰が奏でているのだろう。どうしても気になった健太はその旋律を辿ることにした。
そして遂に、三階の男子トイレと女子トイレの間、『第二音楽室』があるのを見つけた。
しかし、この学校には音楽室は一つしかない。疑問に思いながらも健太は第二音楽室に足を踏み入れた。
そこで健太が見たもの。それは恐ろしく黒く、ドロドロの化け物であった。
恐ろしい見た目に叫ぼうとするが、その化け物が奏でる「カノン」の旋律に言葉を失った。それはどこか寂しげであり、儚げであった。
健太は耳を離せなかった。自分が理想とする旋律がそこで流れていたのだ。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる