ナイショの妖精さん

くまの広珠

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2 もうひとつのカップル

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 大声でさけんじゃったら、帰りかけていたクラスメイトたちが、いっせいにこっちを見た。


「え? ウソっ!?  マジかよ、窪っ!」

「おい、それヒミツだって」

「紀伊美、本当~?」

「そういえばこないだ、紀伊美、同じ塾の人がカレシだって言ったよね……」


 男子たちは窪のところへ、女子たちは青森さんのところへあつまっていく。

 みるみる騒ぎが大きくなる。


 あ……。マズイこと言っちゃった?


 青森さんのほっぺた、真っ赤っ赤。


 リンちゃんが、青森さんの後ろから、ポンッと肩を抱いた。


「そ。ナイショにしてたけど、紀伊美、二学期の終わりのころ、塾で窪から告白されたんだよね。それからつきあってるの。クリスマスなんて、東京に遊びに行ったんだから」


 クラス中、「え~っ!? 」って大もりあがり。


「なにそれ~っ!?  ラブラブじゃん~っ!」

「窪って、意外と肉食系っ!? 」

「じゃあ、うちのクラスのカップル第一号は、葉児と和泉じゃなくって、窪と青森だったんだなっ! 」


 あ……この騒ぎ、身に覚えがある……。


 ヨウちゃんとつきあいだしたとき、あたしも、みんなに大騒ぎされた。

 ヨウちゃん自体がめだつから、つきあい出したらいろいろ言われることは、わかってたけど。それでもすごくはずかしくて、家に帰っちゃいたくなった。


 キャアキャア騒ぐクラスメイトたちの中で、窪は、ぎゅっとこぶしをにぎりしめている。


「ち、ちがうっ! つきあってるわけねぇだろ……」


 歯のすき間から、声がもれた。


「なんでオレが、青森なんかと、つきあわなきゃならないんだよっ!! 」


 教室が静まり返った。

 みんな顔を青くして、窪と青森さんを交互に見てる。


「……ヒドイ……智士君……」


 青森さんの目から涙があふれた。


「紀伊美っ!? 」


 リンちゃんの腕から逃れて、青森さんがかけだす。

 前のドアに立つヨウちゃんの横を通って。ドアわくに手をかけ、ふり返った青森さんの目が、キッとあたしをにらみつけた。


「……和泉さんのせいだからっ! 和泉さんがあんなこと、大きな声でさけぶからっ!! 」


 ビクッと、心臓がちぢみあがった。



「紀伊美、待ってっ!」


 リンちゃんを待たずに、青森さんは廊下に走り出た。

 廊下を小さくなっていく足音。

 金縛りがとけたみたいに、教室の中が動きだす。


「バっカじゃねぇの、窪っ! なに言っちゃってんだよっ!? 」

「さっさと、青森にあやまってこいよっ!! 」


 男子たちの真ん中で、うつむいたままの窪。


「ねぇ、みんな! 紀伊美をさがしに行こうっ!」


 バタバタと廊下に出ていく、リンちゃんのグループ。



 あたしは、教室の前のドアにかけよった。


「ヨウちゃん……どうしよう。あたしのせいで……」


「綾、オレたちも青森をさがすぞ!」


「う、うんっ!」


 今は、あたしとヨウちゃんでケンカしてる場合じゃない。


 あたしは廊下の右に、ヨウちゃんは左にかけだした。

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