ナイショの妖精さん

くまの広珠

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4 永遠の子どもの国からの脱出

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 あたしの目の前に、小さな紙袋がさしだされる。カワイイピンクのリボンのシールがはられてる。


「……えっ  く、くれるのっ!? 」


「なんだよ? おどろくことじゃねぇだろ? 今、綾だって、オレにくれたじゃねぇか」


「だ、だって……それは勝手に……。あたしがヨウちゃんにあげたかったから……」


「だからっ! オレもあげたいんだよっ!」


 あ~……なにこの会話っ! ほっぺた熱~っ!!


 ヨウちゃんのほっぺも真っ赤っ赤。


 手のひらサイズの紙袋を開けてみたら、中からシルバーのネックレスが出てきた。


 ……ウソ……。


 親指の先くらいの小さなアゲハチョウのチャームがついている。


「……本当に……くれるの……?」


「だからっ!」


 さけんだヨウちゃんが、あたしを見おろして、言葉をひっこめた。



 あたしのほおに涙が伝っていく。

 どうしよう、とまんない。

 次から次へあふれてくる。


「……安物だぞ……?」


「そ、そんなの、気になんないよ~……。だ、だって……ネックレスなんて……なんか、本物のカップルみたい~……」


 ここで泣いたら、子ども丸出しなのに。なんかもう、ほっぺた、涙でぐしゃぐしゃ。鼻水まで出てきちゃってる。


「……あのな。……だからオレたち、本物のカップルなんだって……」


 ヨウちゃんがあたしの手のひらから、ネックレスをつまみあげた。チェーンをはずして、あたしの首にまわす。


「……つけていい……?」


 ほっぺたの涙をこぶしでぐいぐいぬぐいながら、あたし、こっくりうなずく。



 ……だけど。


「……あれ? っと。……か、かからねぇ~……」


 ヨウちゃんの眉間に、ぎゅっとシワが寄った。


「なんで、チェーンがこんなに小さいんだよ。つーか、うす暗くてよく見えねぇし」


 ……それより、ヨウちゃんの手、ずっと震えてるから。そのせいだと思うけど。





「綾、ちょっと、後ろ向け! そのほうが、チェーン引っかけやすそう」


「……う、うん」


 本当は、自分でつけてもいいんだけど。

 背中を向けて。髪の毛がジャマだから、うなじが見えるまで、かきあげて。

 それでも、ヨウちゃん、何度も何度も失敗して。


「つ……つ……ついた……」


 ヨウちゃんぜーぜー。一日分の仕事をしたみたい。

 あまりのヘタレっぷりを見ていたら、涙もどこかにとんでっちゃった。


「ありがと~! 見て見て~カワイイ~っ?」


 ネックレスを見せびらかして、「えへへ~」って回ったら、ヨウちゃん、口元を手のひらで隠して、うつむいた。


「か……かわいい……」


 ビリビリビリっ!


 頭のてっぺんからおへそまで、電流がかけ抜けたみたい。


「えええええ~っ!?  今、なんて~っ!? 」


「だ……だからっ! お願いだから、何度も言わすなよ……」


 口を動かすの、もどかしそう。うつむいた前髪の下から少しのぞくほっぺた、真っ赤で痛そうなくらいに腫れていて。


「……ホントは何度も思ってたよ。ずっと、ずっと思ってた。けど……思ってるだけじゃ、ダメなんだよな。ちゃんと言葉に出さなきゃ、けっきょく、なにひとつ伝わらない。

オレも……努力するから。綾を笑わせられるように、がんばるから。ふがいないカレシだけど、そばにいて……」



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