ナイショの妖精さん

くまの広珠

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4 告白の後先

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「いいか~? また、音楽はじめるぞ~」


 先生がCDプレーヤーのスイッチを入れた。スピーカーから明るい音楽が流れだす。

 ヨウちゃんがあたしの背中に立った。

 みんながステップ踏んで踊りだしたから、あたしも踊らなきゃ。

 だけどわかんない。手も足も動かない。


「……綾。こっちの手、肩の上。左は下」


 後ろからふっと右手をつかまれて、肩の上にあげられた。


「だいじょうぶだ。おまえ、妖精のダンスは踊れてたじゃねぇか。これは、あれよりぜんぜん単純だぞ」


 そんなやさしい声……今、出さないでよ……。


 あたしの左手の下に、ヨウちゃんの左手がそえられる。


 あったかい。

 浅山でにぎっていた手。


「右足、前。もういっかい右足。次、左足」


 頭の後ろから、ヨウちゃんのささやきが、静かにふってくる。

 足が軽くなって、勝手に動き出した。


「また、左足。右右、左左、右左、右左。前。後ろ。くるっと回って……」


 ヨウちゃんが右手を上にあげる。その手に取られて、あたしの右手も上にあがって。

 あたしはくるっと一回転。


「おじぎして、おしまい」


 みんな、次の人に入れかわってる。

 あたしもヨウちゃんの後ろを見たら、誠が手をさしだしていた。

 男子は、背の順でならんで輪になっているから。六年で一番、背の高いヨウちゃんの後ろは、一番、背の低い誠。

 ヨウちゃんの手をはなして、誠の手を取ろうとしたら。

 くんと右手を引かれた。


 ……え?


 ふり向いたら、ヨウちゃんがまだ、あたしの右手をつかんでる。

 その手のひらに、力がこもる。


 ……なんで……?


 どうしよう。胸、ジクジク痛い。


「葉児?」


 誠が声をかけると、パッと、ヨウちゃんの右手が開いた。

 その手は、あたしの次の、山下さんのところにうつってく。


「な~んだ。和泉、ぜんぜんフツ~に踊れるじゃん!」


 誠といっしょにステップを踏んでいたら、後ろで誠がにへって笑った。


「てか、すげ~うまい」


 右手を上にあげて、あたしくるっと回って、誠とおじぎ。


 どうしてだろう……。


 足がステップを踏むたびに、ヨウちゃんの声が頭の奥で再生される。

 低い、やわらかい声。奥からふつふつ熱がわいてて、だけどそれを、ベールでやさしく包んでる。


 冷たいなんてウソ。

 ヨウちゃんは、やっぱりやさしい。


 あたし……どうしてもヨウちゃんが好きだよ……。



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