ナイショの妖精さん

くまの広珠

文字の大きさ
上 下
124 / 646
4 告白の後先

34

しおりを挟む

「和泉ぃ」


 教卓のほうから、誠がペタペタ歩いてきた。


「きのう、お母さんに、あのヘアピンあげたぞ~。お母さん、すごいよろこんでた。ありがとなぁ~」


 へらっへらの、のんびり笑顔。


 あ……なんか、ほんわ~。


「ホント~? よかった~っ! 日曜日、がんばって、選んだかいがあったね~っ!! 」

「えっ!?  綾って、マジで誠と、買い物行ったのっ!? 」

「あ……うん。楽しかったよ~っ! 誠のサングラス姿が、ホンットおもしろいのっ!」

「魔女っ子の和泉も、なかなかだったぞ~」


 ふたりでケラケラ思い出し笑いしてたら、有香ちゃんも本から顔をあげた。


「なんか、わたし、誠のほうが綾ちゃんと合う気がする……」

「う、うちも……そう思う」


「え~っ!?  なになに~?」

「やめて~。誠、この話、深くつっこまないで~っ!! 」


 あたしひとりで、「ぎゃ~」ってなってたら、また、女子たちが教室に入ってきた。


 って、リンちゃんと、青森さんっ!


 あたしの心臓、ビックビック。

 まな板の上の魚みたい。


 リンちゃんの顔をそ~っと見たら、ネコみたいな吊り上がり目に、涙がうかんでた。

 青森さんも、太い眉をさげ、目を赤くして、くちびるをかみしめてる。


「……どうだった……?」


 女子たちの輪の中に、ふたりはふら~っと吸い込まれてく。


「ダメだった……」


「ふたりとも?」

「うん。なんか、中条君。ひとりでいたいんだって……」


 腰の力が抜けちゃって。あたし、イスにへたりこんだ。









しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

たぬき

くまの広珠
児童書・童話
あの日、空は青くて、石段はどこまでも続いている気がした―― 漁村に移住してきたぼくは、となりのおばあさんから「たぬきの子が出る」という話をきかされる。 小学生が読める、ほんのりと怖いお話です。 エブリスタにも投稿しました。 *この物語はフィクションです。実在の人物、団体、場所とは一切関係ありません。

がきあみ ―閻魔大王がわたしたちに運命のいたずらをした―

くまの広珠
児童書・童話
「香蘭ちゃん、好きだよ。ぼくが救ってあげられたらいいのに……」 クラスメイトの宝君は、告白してくれた直後に、わたしの前から姿を消した。 「有若宝なんてヤツ、知らねぇし」 誰も宝君を、覚えていない。 そして、土車に乗ったミイラがあらわれた……。 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇ 『小栗判官』をご存知ですか? 説経節としても有名な、紀州、熊野古道にまつわる伝説です。 『小栗判官』には色々な筋の話が伝わっていますが、そのひとつをオマージュしてファンタジーをつくりました。 主人公は小学六年生――。 *エブリスタにも投稿しています。 *小学生にも理解できる表現を目指しています。 *話の性質上、実在する地名や史跡が出てきますが、すべてフィクションです。実在の人物、団体、場所とは一切関係ありません。

月神山の不気味な洋館

ひろみ透夏
児童書・童話
初めての夜は不気味な洋館で?! 満月の夜、級友サトミの家の裏庭上空でおこる怪現象を見せられたケンヂは、正体を確かめようと登った木の上で奇妙な物体と遭遇。足を踏み外し落下してしまう……。  話は昼間にさかのぼる。 両親が泊まりがけの旅行へ出かけた日、ケンヂは友人から『旅行中の両親が深夜に帰ってきて、あの世に連れて行く』という怪談を聞かされる。 その日の放課後、ふだん男子と会話などしない、おとなしい性格の級友サトミから、とつぜん話があると呼び出されたケンヂ。その話とは『今夜、私のうちに泊りにきて』という、とんでもない要求だった。

左左左右右左左  ~いらないモノ、売ります~

菱沼あゆ
児童書・童話
 菜乃たちの通う中学校にはあるウワサがあった。 『しとしとと雨が降る十三日の金曜日。  旧校舎の地下にヒミツの購買部があらわれる』  大富豪で負けた菜乃は、ひとりで旧校舎の地下に下りるはめになるが――。

【奨励賞】おとぎの店の白雪姫

ゆちば
児童書・童話
【第15回絵本・児童書大賞 奨励賞】 母親を亡くした小学生、白雪ましろは、おとぎ商店街でレストランを経営する叔父、白雪凛悟(りんごおじさん)に引き取られる。 ぎこちない二人の生活が始まるが、ひょんなことからりんごおじさんのお店――ファミリーレストラン《りんごの木》のお手伝いをすることになったましろ。パティシエ高校生、最速のパート主婦、そしてイケメンだけど料理脳のりんごおじさんと共に、一癖も二癖もあるお客さんをおもてなし! そしてめくるめく日常の中で、ましろはりんごおじさんとの『家族』の形を見出していく――。 小さな白雪姫が『家族』のために奔走する、おいしいほっこり物語。はじまりはじまり! 他のサイトにも掲載しています。 表紙イラストは今市阿寒様です。 絵本児童書大賞で奨励賞をいただきました。

おねしょゆうれい

ケンタシノリ
児童書・童話
べんじょの中にいるゆうれいは、ぼうやをこわがらせておねしょをさせるのが大すきです。今日も、夜中にやってきたのは……。 ※この作品で使用する漢字は、小学2年生までに習う漢字を使用しています。

箱庭の少女と永遠の夜

藍沢紗夜
児童書・童話
 夜だけが、その少女の世界の全てだった。  その少女は、日が沈み空が紺碧に染まっていく頃に目を覚ます。孤独な少女はその箱庭で、草花や星月を愛で暮らしていた。歌い、祈りを捧げながら。しかし夜を愛した少女は、夜には愛されていなかった……。  すべての孤独な夜に贈る、一人の少女と夜のおはなし。  ノベルアップ+、カクヨムでも公開しています。

蛇逃の滝

影燈
児童書・童話
半妖の半助は、身に覚えなく追われていた。

処理中です...