ナイショの妖精さん

くまの広珠

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1 あたしの背中の羽のこと

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「ヨウちゃんまで、ママみたいなこと言わないでよっ! って言うか、どうしていつも、そんなに上からなのっ!?  あたしのこと、見くだしちゃってさっ! 」

「見くだしてねぇだろ。オレは、一般論を言ってるだけだ。まわりを見てみろ。倉橋くらはしなんか、頭いいのに、週五で通ってて、遊ぶ時間がないって言ってたぞ」


 なによう~……。


 倉橋っていうのは、リンちゃんの苗字。ヨウちゃんに告白して、フラれてもまだ、「めげずに、二回目告白するんだ~」って、がんばってる。


「リンちゃんなんかと、比べないでよ~」


 泣きたくなってきた。

 だって、リンちゃんカワイイんだもん。

 ふわふわと長いツインテール。猫目で、くりっとヨウちゃんを見あげて。ヨウちゃんのシャツのすそだって、自然につかめちゃう。


「そんなにリンちゃんがいいなら、リンちゃんに、ここのこと教えればいいじゃん~。妖精のことも教えちゃって、いっしょにフェアリー・ドクターやればいいじゃん~。ついでに、ビビリでヘタレなヨウちゃんまでバレちゃって、ドン引きされて、嫌われればいいんだ~っ!! 」


「……なんだよ、それ?」


 ヨウちゃんの片眉があがる。と、思ったら、あたしを見てニヤリ。


「綾、もしかしてヤキモチ?」


 うわ、カァ~っ !


 ほっぺた熱くて、湯気出そう。


「そんなわけないでしょっ!!  ヨウちゃんのバカっ!」


 あたしはバンッと、ひざの上の画集を閉じた。


「あたしやっぱり、人間やめて、妖精にもどるっ!! 」

「はぁ~っ!?  おまえ、アホなことばっか言うなっ! 綾っ!! 」


 ヨウちゃんの声なんか、もうきかない。

 ゆりイスから立ちあがって、英文書まみれの本だなに画集をもどす。

 たなには、本がぎっちり。たった一冊の画集もなかなか入っていかない。


 なによっ! もうっ!


 お父さんの書斎は、あたしにとって大事な場所。

 毎日でもいたい場所。


 だけど、ヨウちゃんにとって、あたしは、いなくてもいい人間なんだっ!!


 ぐいっと画集をねじこんだら、たながゆれて、上からガラスビンがふってきた。


 あ、あぶなっ!


 手のひらで受けとめる。

 密封ビンの容器の中で、虹色の液体がゆれていた。

 ラベルの文字は「ヒソップの煎じ薬」。







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