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6 地下からの招待
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しおりを挟む「ああ。――って、ちょっと待て! これは、たとえ話な。本当に、羽がはえてるって意味じゃないぞ。えっと、つまりだな。羽みたいなすばらしいことを、杏ちゃんも持っているって、オレは言いたいんだよ。
『空を飛べる』っていうのは、要するに、自分のやりたいように、人生を進んでいけるって意味だ。いいな。まちがっても、自分はここの妖精たちと同じとか、そういうことは考えるなよ! 例えだっ! 例え話だからなっ!! 」
「あはははは。わかるよ。おにいちゃんてば、必死すぎっ!」
涙をふいて、杏ちゃんはケラケラ笑っている。
「チチ、ヒメ。悪い、この子をみんなのところまで、送りとどけて」
オレの声に、肩の上の妖精たちが、ついっと飛びあがった。
「わ……本物の妖精さん……」
目をかがやかす杏ちゃんの頭上を、妖精たちはつっと通りすぎる。
「杏ちゃんは、この妖精たちを追って、植物園に向かうんだ。わかるか? この道を抜けたら、T字路を右だ。その先はずっと、道をたどってくだっていく。行けば、かならずだれかが迎えに来てくれるから」
「うん」
妖精を追って走りだそうとした杏ちゃんが、猫のしっぽをゆらしてふり返った。
「おにいちゃん。わすれてたっ!」
ポケットから、小ビンを出して手渡される。虹色の液体ののこった小ビン。
「これ。おねえちゃんが穴に落ちる前に。『おにいちゃんにわたして』って」
ラベルに「チコリ」と書いてある自分の字を、オレは見つめた。
「――はい。杏ちゃんは無事です。オレはちょっと用事ができたので、すみませんが、外人墓地の前の道まで、お迎えをたのみます。それと、誠にかわってもらえますか?」
スマホ越しにきこえてくる誠のお母さんの声に、オレは何度も頭をさげて、それから切りかわった電話を、自分の耳に押しつけた。
「誠か?」
「……葉児?」
誠の声がピリピリしている。きっと、察している。
オレは息を吸いこんだ。
「これから、綾を追って、ティル・ナ・ノーグの穴の中に行ってくる」
電話の向こうで音が消える。
「……オレにできることは……?」
数秒後、きこえてきたのは、息をひそめる誠の声。
「ねぇよ。無事でも祈っとけ」
オレは軽く笑った。
電話を切ると、ナップサックから、リンゴの枝の杖をとりだした。
虹色の光っているのは、フェアリー・ドクターの魔力が宿っている証。
その杖を、地面に向かってつきさした。
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