ナイショの妖精さん

くまの広珠

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2 もしも、叶うものならば

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 ヨウちゃんちの一階にある自宅カフェ「つむじ風」は、お客さんたちの声でにぎわっていた。

 アンティークな木目のテーブルがならんでる。壁のあちこちにさがるのは、ドライハーブ。

 海に面したウッドデッキに、白いパラソルが花開いている。


「かあさん、オレ、今からちょっと外に出てくるから」

「は~い」


 オーダーを終えたヨウちゃんのお母さんが、もどってきた。


「え……? 綾ちゃん……?」


 お母さん、ぽかんと口を開けて、カウンターの前でつっ立っている。

 フリルのついた白いエプロンをつけて。ゆるいウエーブのかかったミディアムヘア。身長はあたしより少し高いくらい。おとなっぽいヨウちゃんの親とは思えないほど、かわいらしい人。


「あ……あの。こんにちは! 勝手におじゃましてましたっ!」


 あわてて、ぺこっと頭をさげると、お母さんは眉尻をさげて、「綾ちゃん~」と笑った。

 ほっぺたにぽっくり、エクボができる。


「ヤダぁ、うれしい~っ! いつのまに来てたの? 葉児? 葉児といっしょに来たの?」


「え……えっと。これにはちょっと、わけがあって……」


 話すべきかどうかまよってたら、あたしの後ろから「そうだよ」と低い声がした。

 ふり返ると、ヨウちゃんはもう、玄関でスニーカーをはいていた。横顔はしらっと、無表情。


「綾はオレがつれてきた。かあさんはいそがしそうだったから、声をかけなかった。話すのが遅くなって、ごめん」


「……葉児~」


 お母さん、両手で口をおおって、目に涙をためてる。


「すみませ~ん。注文いいですか~」


 お客さんに呼ばれて、お母さんがふり返った。


「あ。すぐにうかがいます。――綾ちゃん。また、いつでも遊びに来てね!」


 フリルのエプロンをひらめかせて、お客さんのところにとんでいくお母さん。足取り軽くて、スキップでもしてるみたい。


「……かあさんて、もろに顔に出るな」


 ヨウちゃんの口元がふんわりゆるんだ。

 胸がいっぱいになって、あたし、涙があふれそう。

 昔、ヨウちゃんの家に毎日のように来てたころ、あたしはよくお母さんに夕飯をごちそうになってた。

 女手ひとつでヨウちゃんを育てながら、自宅カフェを切り盛りしているお母さん。

 あたし、ずっと、お母さんのハーブティーを飲みたかった……。


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