ナイショの妖精さん

くまの広珠

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2 もしも、叶うものならば

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 ほっぺたモミジみたいに真っ赤。だけど、琥珀色の目は、ちゃんとあたしの顔をとらえてる。


「お、おまえ……とつぜん、アップであらわれんな!」


「って、言われたって~っ!!  ね、あたし、ちゃんともどってきたっ!? 」


 あたしは、つくえの横に立てかけられている全身鏡をのぞきこんだ。

 鏡にあたしがうつりこんでいる。あたしの前には、つくえからのりだす琥珀色の髪のヨウちゃん。

 あたしは、後ろの窓をふり返った。

 夕日が西にしずんでいく。


「……もどった。もどったよっ! ヨウちゃん、あたし、こっちの世界にもどれたっ!!  ありがとうっ!! 」


 目の前にあった両手を、あたしの両手でガシっと包み込んだら、ちゃんと硬かった。


 わ……。前よりも、大きくなってる……。


 太い指。あたしの手のひらなんかじゃ、ぜんぜんおおいつくせない。関節がごつごつ。手首もがっしりしてて、骨がぼこっと出ている。

 チラッとヨウちゃんを見あげたら、眉をひそめて、部屋のすみをにらんでいた。


 ……あれ?


「……まさか……これが、ハグの目的か……?」


「……え?」


 あたしが手をはなすと、ヨウちゃんは指を自分のあごにあてて、腕を組んだ。


「ハグが、綾を鏡に閉じ込めたのは、ただの嫌がらせじゃなかったってことだ。綾を閉じ込めれば、オレが外に出すことは目に見えてる。それに便乗して、自分も鏡から出ようって魂胆……」


 つくえの上にはからっぽのお皿。



「……ね。じゃあ……今、ハグは……」


「……鏡の世界の外に出た……おそらく……」


「ど……どうしよう……。……あたしのせいで……」


「まったくだよ。おまえがドジったせいで、今までの苦労が水の泡だ。つ~か、今までより、状況は悪化した。ハグは鏡の外に出てきていて、どこにひそんでいるのかわからない。あいつが、いつ、何をたくらんで、オレたちに何をしかけてこようとも、オレたちは自分を守るすべがない」


「う~……ごめんなさい~……」


 泣いたって、何もかわらない。


 あたし、疫病神だ……。



「……いいよ、もう」


 ふわっと、あたしの頭の上に、ヨウちゃんの手のひらがかぶさった。


「正直……オレも限界だった。逆に、おまえに救われたのかもしれない……」


「……え? どういうこと……?」


 大きくて分厚い手のひらが、あたしの頭からはなれる。


「……なんでもない。綾。帰るなら、家のそばまで送っていく」


「えっ? うそっ!?」


 送ってくれるの!? ヨウちゃんが、あたしを!?


「誠と気まずくなるようなことは、なんもしねぇから。ただの……ハグからの護衛……」


「……うん」


 誠の笑顔を思い出して、胸がチクンと痛んだ。


 あたしね……きょう、誠と別れたんだよ……ヨウちゃん。


 書斎のドアを開けて、階段をのぼっていくヨウちゃんの背中を追いかける。
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