ナイショの妖精さん

くまの広珠

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1 花田中学一年生

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「ホントだ~。ふみの言うとおり、マジでイケメンじゃん!」

「これで、こないだまで小学生って、もうサギだよ~」


 ふり返ったら、教室の後ろのドアから、教室をのぞきこんでいるのは、うわばきの色が黄色い、二年の女子たちだった。

 キャーキャー、手を取りあって笑う先輩たちに、教室の一年生たちは、こぞって眉をひそめている。


「……なんだ。また葉児のファンかよ?」


 後ろのロッカーに背中でもたれて、大岩が舌打ちした。


「……あの……なんですか?」


 大岩の横でヨウちゃんも、しらっと冷たい目で腕を組む。


「ヤダぁ~。そんなに怖い目しないでよ~。ねぇ、ちょっと廊下に出てきて。文が中条君に話あるんだって」


 右の先輩が、ヨウちゃんに手招きしてる。


 い……イヤな予感……。


 文って呼ばれてるのは、たぶん真ん中の人。黒いロングのストレートヘアを、胸までたらしている。すごい直毛で、日本人形みたい。小顔に、つけまつげをしたぱっちりの黒い目。

 短いスカートからのぞく白い足はスッとまっすぐ、細くて長い。股下、何センチあるのかな?







「……行かなきゃダメですか?」


 ヨウちゃんは眉間にしわを寄せて、後ろ首に手を置いた。


 うわ……すっごいイヤがってる……。


 教室のあちこちに、ムダに視線を向けたりして、だれかの救いを求めてるみたい。



 ふっと琥珀色の瞳が、あたしを捕らえた。

 あたしの呼吸は停止する。

 ヨウちゃんが、真正面からあたしを見ている。



「葉児、さっさと行って来いよ。あいつら、うざくてたまんねぇんだけど」


 大岩がヨウちゃんのわきをこづいた。

 ヨウちゃんはハッとしたように、あたしから目をそらす。


「……ああ」


 のろのろと教室から出ていくと、三人の先輩たちはキャーキャーはしゃいで受け入れた。


「ちょっとこっち。人にきかれないとこに来て」


 文って呼ばれてる先輩が、ヨウちゃんの腕をつかんで、廊下へ引っ張っていく。


 窓際の席で、リンちゃんがツインテールをかきあげた。


「なにあれ? メス丸出しで、ヤなカンジ。中条君がカッコイイことくらい、うちのクラスの女子なら全員わかってんですけど! バッカじゃないのっ!」


「全員って、うちらまで勝手に数に入れるなよ。ここに例外がふたりいるんだけど」


 真央ちゃんがつっ込みを入れたけど、有香ちゃんはなにも言わなかった。眉をひそめて、ヨウちゃんが出て行った廊下の先を見ている。


「……綾ちゃん……。あれ、ちょっと覚悟しといた方がいいかも……。サイアクな事態を……」


 ぐっと息を飲んだ。


 サイアクな事態。


「いつか来る」って、わかってた。

 ヨウちゃんと別れたときから、ずっと。

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