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1 はじめまして、お父さん
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しおりを挟む「……く……」
腕で顔をおおって、ヨウちゃんが前のめった。
「かあさんが……よろこんでんだよ……。とうさんがもどってきてくれたって……。な、中身がちがう……。けど……あいつは……とうさん役を演じきってる……。オレが……オレさえガマンすれば……」
「……ヨウちゃん」
あたしは丸めたヨウちゃんの背中に、ぎゅっと両手をまわした。
あたしの胸に顔をうずめるヨウちゃん。まるで、小さな子みたい。
「……オレ……自分の手で、かあさんからとうさんを取りあげるなんて……もうイヤだ……」
ヨウちゃんの嗚咽が、廊下のすみにたまった冷たい空気に溶けていく。
ヨウちゃん、ガマンしてたんだ……。
すごくすごく、苦しんでたんだ……。
「だけどさ……あいつが本気出したら、また何するかわかんないんだよ?」
「そんなのわかってる。だから、オレが見張ってる。綾にだって、会わせないようにしてたんじゃねぇか……」
だからきのう、あんなに……。
「ねぇ、あいつの目的ってなんなんだろ? 体を手に入れれば、もう、それでいいのかな?」
「目的……。それは、たぶん、オレに対する仕返しだ」
ヨウちゃんの目が、キッとするどくなって廊下を見すえた。
「ええっ!? なんでっ!? そんなの逆恨みなのにっ!」
「あいつは……自分が黒いタマゴにかえられてしまったことに対しても、恨んでいる気がする。体がないのも、白い妖精として生まれてこられなかったことも。ぜんぶ、オレのせいだって言ってる」
「そ、それならなお、そんな、危ないヤツ、そばに置いといちゃダメじゃんっ! お母さんのことが気になるのはわかるけど、それよりあたしは、ヨウちゃんのほうが心配だよっ! ね、早くあいつを消滅させる方法、考えようっ!! 」
「……綾」
「書斎だと、お父さんが入ってきて、調べものできないならさ。図書館に行こうよ。家のハーブがつかえないなら、鵤さんの植物園に行けば、手に入るでしょっ!? あたしんちで、フェアリー・ドクターの薬、つくればいいじゃんっ!」
「……そうか。……そうだな」
ヨウちゃんのほおに、赤みがさした。
あたしの胸から、顔をあげて、ヨウちゃんは、自分の足で立ちあがった。
「やりようなら、いろいろあるんだな」
キンコーンと、チャイムが鳴った。
「ああっ! お昼休みがもう終わっちゃった」
「綾、じゃあ、放課後に図書館行かないか? まず、あいつが何者か調べたい。姿を消してるせいで、手がかりがなかった前とはちがって、あいつは今、オレの前に姿をあらわしている。正体をあばく、手がかりになるかもしれない」
「うんっ!」って言いかけて、あたし「あ~っ 」ってさけんだ。
きょうは、有香ちゃんちでチョコをつくる約束してたんだっ!
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