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第6章 憤怒の憧憬

31話 穿つ黄金

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「復活したっ!?」

ものの数秒も経たずに、復活を遂げたゴーレムによる攻撃が再び開始された。
俺は先程と同様に、ユリアを抱えてながら避けていく。
攻撃が直線的なお陰で、避けるのも容易い。

「……ん、と……アレ、2人で間髪入れずに魔法を撃ち込めば何とかなるかな?」

「……微妙だな。さっきの魔法もダメージを与えてはいたが、全体のダメージとしては弱かった。2人がかりの攻撃でもでも、修復のスピードを少し上回る位だろうな……それだと時間がかかり過ぎる」

俺は走りつつ、ゴーレムをモノクルの魔導具を起動させて観察した。 

このゴーレムは、ダンジョンから発する魔力で動いているようで、絶え間なく大量の魔力が供給され続けている。
その魔力はほぼ無尽蔵に等しい。
長引かせるのは、此方が分が悪い。

それに兄様達の事もやっぱり心配だ……早めに片を付けたい。

「………………」

「リュート君っ! ここは私のアーク・ライトでっ」

観察して黙り込んだ俺をどう勘違いしたのか、ユリアはいきなり最終兵器を持ち出そうと提案してきた。

だから、こいつは……

「な、ん、で、そうなるんだ!」

こいつは何度同じ事を言わせる気なんだ。
俺もいい加減腹が立ってきた。
俺達には関係ないからと、前世の別のアニメや漫画などの二次創作同人誌創作は黙認してやっていたが、半分燃やそう。

「え、ぇえ? いや、だって、打つ手ないって」

「このアホ、単細胞っ!! 脳みそ足りてないわけ!? ……いや、あぁそうか。そう言えばお前の脳みそ、ほぼほぼ腐ってたな……本当、残念な腐王女だな」

何かあったら、すぐ最終兵器とか。
短絡的過ぎだろう。
ダンジョンが丸ごと焼き尽くされるぞ。
しかも自分の命を削る魔法を、躊躇いなくボコボコ撃とうとして……アホとしか言いようがない。

「ひっ、ヒドイっ!? 何もそこまで言わなくても!」

「事実だから、仕方ないだろう! 見てろ、お前はすぐ忘れるけど俺も魔眼持ちなんだよ!!」

俺はそうユリアに一喝すると、直ぐに詠唱を始めた。

「“我は尊大にして勇敢、全てを穿つ者”」

左目の魔法陣が、目映い黄金の輝きを放つ。

「“我は煌煌にして永劫、全てを平定する者”」

俺は走りながら息を切らすことなく、詠い続ける。 
そして、ゴーレムの攻撃がピタリと止んだ。
俺は左手をゴーレムへと翳す。

「“今、大いなる輝きが逆賊共を貫かん”」

俺が、組み上げた魔法陣が黄金に輝く。

「“トゥルエル・ランサ”」

その言葉ともに、陣より黄金の龍が顕在しゴーレムを穿つ。
何体もの黄金の龍に穿たれ、崩れ落ち散り散りとなった。
今度こそ終わりだ。
瞬きの内にゴーレムは修復も出来ないほどに、消し炭へと姿を変えた。

「お、おぉ……1発で。やっぱり、リュート君チート……」

間違いなく倒した事を確認して、ユリアを地面にゆっくり降ろす。
魔法のコントロールはなされていたので、ダンジョン自体にダメージは殆どない。
ボスを倒して、突然崩壊するとかも無さそうだ。

「あっ! 何か光ってるよ、リュート君!!」

ユリアが指差す方へと目を向けると、丁度ゴーレムがいた中央から球体に光る物体が浮かび上がった。

「あれ、勝利アイテムだよ! 絶対っ!!」

「……だな」

俺は警戒しつつも、そのアイテムへと手を伸ばした。
すると、放っていた光は消えてアイテムだけが掌に残った。

「これが……」

アイテムは、白い十字架のチャームが付いたネックレスだった。
十字架の中央には、パールのような純白の魔石が埋め込まれている。

「ほら、これが欲しかったんだろ」

一応、モノクルで問題ないかを確認した後、ユリアへとぞんざいに投げた。

爆発とかは、しなそうだけど……魔術式が複雑で詳しくは読めないな。
あまりいい感じはしないけど……あんだけ欲しがっていたんだし…………。

俺はそのゲームをプレイした事はないから、ユリアの直感を信じてみてもいいだろう。

「わ、わっ、投げちゃダメだよ。大事なアイテムなんだから!」

ユリアは投げられたネックレスを、落とさないように何とかキャッチする。

「……でも、用途は思い出せないんだろ?」

ユリアの記憶を信用していない訳ではないが、そんなもの無くても何とかなりそうだとは思う。
あまりよく分からないものを、側に置きたくはない。

「…う、そ、そうだけど……」

図星の為、ユリアも特に反論する事はなかった。
そんなユリアを放って、出口に繋がるものはないかと探す。

「ん? これ転移陣だ」

アイテムのあった場所に、転移陣が発生していた。
これに触れれば俺達がこの空間へと飛ばされたように、もう1度別の空間へと転移出来るだろう。

「出口はこれしかないか……おい、ユリア行くぞ⎯⎯」

「よいしょっと!」

「……は?」

ユリアの手を引こうと振り返ると、首に重みが増した。
俺の首に、ユリアが手に入れたネックレスをかけていた。

「うんうん、似合ってる似合ってる」

俺の首にかかるネックレスを見て、ユリアは満足気に頷く。

「いや、似合ってるじゃなくて。お前、これ重要なアイテムって言わなかったか?」

だから、態々危険に片足突っ込んだんだよな?

「うんっ!」

「なら、「だから、リュート君が持って欲しいのっ!」」

俺の質問に、ユリアは当然とばかりに頷きこれでいいのだと言う。

一瞬、ユリアがまだ俺をヒロインポジにする事を諦めていないのかと疑ったが、どうもそう言う訳ではないらしい。
初めから、俺に渡すつもりだったようだ。

「……お前がいいなら、俺が預かっておく」

正直、あまり得体の知れないモノは持ち歩きたくはないが、人の厚意をたまに受け取るのも悪くはないだろう。

「うん!」

俺はユリアと離れる事がないように、再び手を繋ぎ転移陣へと手を触れさせた。


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