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第6章 憤怒の憧憬

25話 腐王女無双

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「ユリア様、いいですね? 私達より前には、絶対に出ないようにしてくださいね?」

そして、やって来た実習当日。
ユリアは朝からロゼアンナに、何度も言い聞かされていた。
安全な場所から、飛び出さないようにと。
端から見ると、出来の良い姉がちゃらんぽらんな妹の面倒を見ているようだ。
ロゼアンナもユリアを愛称で呼んでいるし、すっかり仲が良い。

子供じゃあるまいし……まぁ、言いたくなる気も分かるけど。

ユリアはロゼアンナの言葉に元気よく頷いているけれど、目は爛々と輝かせている。
前世を含めると、精神年齢はかなり高い筈なのだが、ユリアは何故か年相応の子供のように見える。
俺もたまに体に引っ張られるような時もあるが、ユリアはしょっちゅうだ。

ユーリアって、落ち着いた完璧美少女設定じゃなかったっけ?
少し目を離すと腐教活動に勤しんだり、今回みたいに我が儘言って聞かなかったりで、片鱗すら感じられなくなってるんだけど。
元の資質はどこに行ったのかな?

「……アレ・・言うこと聞くと思いますか?」

「はは……絶対聞かないだろうね」

2人のやり取りを遠い目で見ながら、隣に問いかけると、兄様は苦笑いを浮かべた。
パーティーのメンバーは、同学年からは予想通り俺とユリアとアシュレイ、リオナとスール。
上級生枠で兄様とオズ様、そして2人の従者達で大所帯となった。
この辺りは王族やら、魔眼持ちやらがいるので当然の流れであろう。

「ですよね……」

俺はため息をつくと、渡されたダンジョンマップに目を落とした。

何はともあれ、中身が腐女子になって残念になってしまったのは間違いない。
もう深く考えるのは止めて、どう被害を抑えるのかに力を注ごう、うん。
それが、建設的だろう。

「……ぐふふ、無双、無双!」

何か横からぼそぼそ聞こえるけど、もう何も言うまい。
言って駄目なら、実力行使だ。

「……このパーティーで、大丈夫なのか?」

背後から聞こえたアシュレイの言葉が、妙に頭に残った。

……大丈夫であることを、俺は心の底から祈っているよ。








◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆












「“レーザー・キャノン”」

ドカーンっと、輝く光線と共に派手な音をたててダンジョンの壁が崩れ落ちる。

「ユリア様っ! そんなに先行しないで下さい!!」

魔物が出る度に過剰攻撃ともいえる魔法を繰り放ち、ずいずい先へ進んでいくユリア。
その度にロゼアンナや周囲に止められて後ろに下がるが、魔物が現れるとまた前へ出てくる。

「実習だと言うのに……リュート達にはすまないな」

生き生きと、次々に魔物をほふってくユリアを見て、オズ様が本気で申し訳なさそうな顔をした。

気まずくなる気持ちも分かる。
これはあくまで、ダンジョンに潜って実際の戦闘を経験しようという目的なのだ。
それをユリアばかりが戦闘に参加していては、他のメンバーの経験にはならない。
普通は多少譲り合ったり協力をするものだが、ユリアには空気を読む力が足りていなかったようだ。

「……気にしないで下さい、オズ様。分かってましたから……こうなるの」

「……俺も薄々は。それに軍の訓練に参加しているから、別に大丈夫です」

俺とアシュレイが、オズ様に気にしないようにと言った。

うん、分かってたから。
こうなるだろうなって、ことは。

俺達の視線の先で、ユリアは楽しそうに魔物達に魔法をぶつけていた。
その笑顔はここ最近で、1番輝いていた。

「ふふふ、チート無双!」

……本当に、この先大丈夫だろうか?

正直、不安しかなかった。
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