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第6章 憤怒の憧憬

16話 王女の友人探し

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「昨日はロゼアンナがすまなかったな」

ロゼアンナ・ディールに呼び止められた次の日、俺は登校するとともにボロボロのアシュレイに頭を下げられた。

「……ディール嬢から聞いたんですか。僕は別に気にしてませんが……貴方はそれでよろしいんですか? あまり……僕や兄様と関わるのは、家の方がいい顔をしないのでは?」

ロゼアンナの言い分は分からないでもないので、特に気にしていない。
昨日はああ言ったが、この話を知っているということはロゼアンナともその事について話し合った筈だ。
けれど、今日もアシュレイはボロボロで教室にいる。
相手は十中八九、兄様だろう。
アシュレイもまた、ロゼアンナの話を拒んだと言うことだ。
俺はアシュレイに後悔や迷いがないのかが気になった。

「……別に、母上を切り捨てる訳じゃない。でも……俺は過去の柵に、囚われたままでもいたくない」

アシュレイは俺の問いに一瞬迷いを見せながらも、次の瞬間には強い眼差しで俺を見据えてそう答えた。
アシュレイは覚悟を決めているようだ。

「そうですか……よかったです。兄様は口では言いませんでしたが、貴方の事をとても気にしているみたいなので」

「……そうか」

俺が兄様の事を教えると、アシュレイは薄く笑みを浮かべた。
そして、俺は何時ものようにアシュレイに回復魔法をかけた。

「それに僕も授業での手合わせ相手に手応えがなくなるのは、少しつまらないのでよかったです」

「……次は俺が勝つ」 

俺が笑顔でそう伝えると、アシュレイは少し照れたのか目を逸らしてそう言った。

「いえ、僕が勝ちます」

アシュレイの勝利宣言に、俺はキッパリと即答した。

次もその次も、俺は一切負けるつもりはない。
悪いが、アシュレイにはずっと負け続けてもらう予定だ。

「俺が勝つ! ……治療は、感謝する」

アシュレイはムッとしてそう言い残すと、自分の席についた。

「……天の邪鬼」

「おー、相変わらずのツンデレだねぇ、アシュレイ様! リュート君、随分打ち解けたよね」

俺がアシュレイの背を呆れ混じりの苦笑いで見送る中、先程まで俺達のやり取りを見守っていたユリアがヒョコっと顔を出した。
その顔は心なしかニヤニヤしていた、きっとまたよからぬ妄想にでも華を咲かせていたのだろう。

「……今度はユーリア様交じりましょうね」

俺はニッコリと、ユリアに強制に近い提案をした。

本当に、諦めが悪いな。
そろそろ本気で悪役令嬢転生の逆ハーなるものを、作りにかかるぞ?

そうなって、泣きを見るのはユリアだ。

「ぇ……? いやー、私はちょっと人見知りの喪女なんで、ちょいとハードルが……本気マジで、ごめんなさい」

ユリアは俺の言葉の意味に気づいたのか、頬をピクピクと引き攣らせて首を振った。

「まぁ、ゲームのシナリオは別にしても、仲良いにこした事はないでしょう……最近、母様にも友達は出来たか聞かれるんですよね」

母様は俺の学生生活に興味津々で、毎日のように学校での様子を聞きたがる。
当たり障りのないように答えていたが、最近では新しく出来た友達の顔を見たいと言うようになった。

けど、学園に入って深く関わった人って言うと……

普段決まった面子で固まってる俺からすると、思い浮かぶのはアシュレイくらいだろう。
なので、実は交友関係を続けたいというアシュレイの言葉は、有り難かったりする。

「あぁ、リュート君卒なく大抵の事はこなすけど、人の好き嫌い激しいもんね。どう? アシュレイ様はリュート君のお眼鏡に叶った?」

「まぁ……裏表ないですから、裏切られる事もないでしょうし。……それより、ユーリア様もそろそろ友人の1人くらい作ったらどうです? 勿論、腐ってない方で」

「ぐぅっ!? 痛いところを……どうせ私はリュート君達くらいしか、話す人のいないコミュ障ですよぅ……リオナちゃんとは、折角同士になれると思ったのにリュート君に邪魔されるし……女の子の友達欲しい、1人でもいいから、欲しい……うぅ」

特に意識していた訳ではないが、ユリアの地雷を踏んだようで、涙目で睨み付けられた。

……ここまで、落ち込むとは。
……気にしてたんだな、友人が居ない事。

1番の理由はユリアが人見知りのが激しく、俺以外に対して話しかけられない事だろう。
それに+プラスして、リオナやスールはやはり王女相手におそれ多いと思ってる面もあるようで、友人という程には打ち解けきれていない。

……リオナともアレ・・以降は、近付け過ぎないようにしてるからな。

そう考えると、少しばかり罪悪感がわいてくる、事もある。
勿論、リオナへの悪影響を許すつもりはないが。

「……ロゼアンナ・ディール嬢はどうです? 彼女は正義感が強そうですし、良い友人関係が築けそうですが……」

昨日話した様子だと、姉御肌な雰囲気とかこのアホな王女には合う気がする。
変に畏まり過ぎるということも無いだろう。
それに腕もたつそうだから、護衛を兼ねることも出来そうだ。
何より、絶対腐らない。

「ロゼアンナ様……? ……うぅ、リュート君、上手い事橋渡ししてよぉ」

ユリアは名前を聞いてロゼアンナを思い浮かべたのか、期待の眼差しを俺に向けた。

他人任せかよ……この腐王女。
少しは自分で努力しろよ………。

「ロゼアンナ・ディール嬢が、お気に召しましたか?」

「だって、ロゼアンナ様は悪役令嬢ポジっちゃポジだけど、カッコいいし。ヒロインに酷い苛めもしないし……お姉様って感じで素敵だよね!」

先程とはうって代わり、急に元気を出したユリア。

立ち直り早いな……、そのポジティブさでグイグイいけないものかな?

時よりみせる強引さと行動力を思えば、それ位わけないと思うのだが。

「……やった! 女の子の友達ゲット!」

俺は一言も了承していないのに、ユリアの中では既に俺の協力は決定事項らしい。
しかも、俺の協力が成功する事が大前提だ。

……何だか、急にやる気が失せてきた。
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