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第5章 腐った白百合

05話 王女様の諸事情

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俺達のせい……?
どういう事だ??
転生者だからじゃないのか?

俺の頭は疑問符で一杯になった。

「お前が現れるまでは、特にシュトロベルンの力が強かったのは知っているだろう?」

「えぇ。国一番の力を持ち、一時期は王の政治にすら口を出していたとか」

王様の問い掛けに、俺は相槌を打った。

「だが、王家より強い権力など許すわけにはいかない」

「そうですね、そんな事が続けば国が滅びます」

当たり前だ。
それを許すことは、下克上を許すことに等しい。
誰が自分より下の相手に、忠義を尽くすというのか。

「王家の……ユーリアが受け継いだ固有魔法は、王家の力を示す為に一番効果的なものだったんだ」

「まさか……」

ここで俺は漸く王様の言ったことの意味を理解した。

「3年前……隣国と争いになった時に、ユーリアに魔法を使わせた。結果、戦はすぐに終結した。圧倒的な力の前に隣国が白旗をあげたのだ。国内の権力争いもも落ち着きをみせた。当時はシュトロベルンが王位に付いた方がいいと、貴族達の間で陰ながら囁かれる事もあった程だ。そう言った意味では、ユーリアの存在は王家の威信を回復させるには十分だった。……けれど、その後ユーリアは外に出なくなってしまった。……今では家族でさえ、面会を拒絶する程にな」

王様は悔いるように言った。
過去に幼い子の力に縋った自分を、責めているのだろう。

俺も王としてその行動を間違っているとは思わない。
だが、親としては失格なのだろう。
当時6歳の少女に背負わせるにしては、その業は深すぎる。
犠牲者は少なくない。
ゲームでは耐えられたようだが、前世を日本で暮らしていたとしたら、人の生殺与奪に関することなど免疫はない筈だ。

「……そんな事があったんですね」

俺は昨日父様が良い顔をしなかったのは、王女様のその問題行動故かと思っていた。
だが、本当の理由は王女への負い目があったからなのだろう。

「だからお前には悪いが、その願いは叶えられない」

「いえ、そう言った事情なら仕方ありません。此方こそ、無理を言ってしまい申し訳ありません」

王様はすまなそうに言ったが、此方が無理を言ったのだ。
そう言った理由があるのだし、尚更仕方がない。

接触は……無理そうだな。
ここは、リスクをおかしてでも手紙で連絡を入れてみるしかない、か。

「王様──」

代わりにお手紙を届けて貰えますか? と頼もうとした時だった。

「話は聞かせてもらいました」

「フィーリアっ!?」

突如、部屋に王妃様が乱入して来たのだ。
突然の乱入者に、王様は驚いて席から立ち上がった。

フィーリア・ルイリ・ユグドラシア、この国の王妃様で国一番の才女。
俺もノックもなしに入ってきた王妃様に、驚きを隠せずその姿を思わず凝視してしまう。

今の話を……聞いてたのか?
……俺、ちょっと王妃様って苦手なんだよね。

例の約束もあるからか、会うと嫌な予感をヒシヒシと感じる。
唯でさえ苦手意識があるのに、王妃様は俺と王女と婚約させようとしていたと聞く。

1年前の黒歴史写真も……王妃様に贈ったみたいだし。

黒歴史を握られている上、その内王妃様も加わって着せ替え人形にされそうだ。

早く成長したい……背が伸びて男らしくなれば、流石に女装何てさせられないだろうから。

それは今の俺にとって切実な望みであった。

「フィーリア、幾らなんでも盗み聞きとは趣味が悪いんじゃないか? それにノックもせずに勝手に入るとは「お黙りください」……」

王様が、王妃様の非礼に抗議をした。
が、尻に敷かれているのですぐに反撃を食らう。

正論なのに……王様、ちょっと憐れ。

王様はため息をつくと、王妃様の次の言葉を待った。

「ノックをしないのは貴方も同じでしょう? それに盗み聞きとは心外です。そもそもギルベルト様が、私に黙ってリュートとお会いするのがいけないのですから。……ですが、お蔭でよい話が聞けました」

王妃様は王様の今までの行動を逆に咎めると、最後にほんの少し微笑んだ。
嫌な感じの笑みだ。

「は? お前まさか……」

「えぇ、そのまさかです。リュート、付いてきなさい。今からユーリアの元へ行きますよ」

そして王様が戸惑いを見せる中、王妃様はそう俺にそう言ったのであった。
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