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第5章 腐った白百合

04話 ご指名は王様で

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どうしたものかな……。

俺は王女と接触する方法を考えていた。

手っ取り早くやるなら、手紙だけど……。

相手の性格や目的が分からない限り、一方的に此方が転生者と知られた上に、自分は黙秘を決め込まれる可能性もある。
相手は王家の人間だ。
友好的な態度だったらいいが、敵対的立場に立つのは非常にマズい。
それに加えて、王女は鬼札ジョーカーでもある。
絶対的に不利な状況に追い込まれても、その窮地を固有魔法1つで引っくり返せるこの国の切り札。
反則技もいいとこだろう。

……やっぱり、どうにかして直接会えないかな?

相手の反応を見つつ対応出来る上、白か黒か判断出来る。
誰に頼むべきか。
父様とは接点が低過ぎて、会うのは不自然な上断られる可能性が高い。

兄様とは……絶対会わないだろうな。

兄様とシナリオ通りにいくのは、断固してでも避けたいようだから。

となると、王様やオズ様に頼むか……エド様はもれなく厄介なのリリスがついて来そうだし、王妃様はゲームであまり良い印象ではないようだから、2人に頼むと避けられそうだ。

それに俺と王女の婚約話を進められても困る。

やっぱり、王様……かな?
……頼むのであれば。

オズ様も攻略対象者だから、もしかしたら避けられるかもしれない。
その点、王様はゲームでの出番は殆どないらしいから安心だ。
流石に嫌がっていても、王女がそれで魔法をぶっ放す何て事はないだろう。
王女に拒絶されたら、また別の策を考えればいい。



「父様、王様とお会いすることは出来るでしょうか?」

俺はすぐに行動に移した。
こういったことは、後回しにしない方がいい。

「陛下に? ……明日の昼なら少し時間を取れると思うが」

「お願いします」

明日か、予定が空いていてよかった。
思ったよりも早く事が進みそうだ。

「陛下に会ってどうするの? そんなに王女の事が気になる? ……僕もついていこうかな」

兄様は、今一納得がいってないのか不満げだ。
俺の目的が王女だと分かったみたいだ。

「……兄様は学校があるでしょう。ずる休みはよくありません。それに、本当にそういった意味ではないですよ」

父様曰く、王女は変人らしいし。

「む……くれぐれも気を付けるんだよ。見てくれに、惑わされてはいけないよ?」

兄様は俺の正論にぐうの音も出ないのか押し黙ると、最後にそんな忠告をしてきた。

「惑わされるって……兄様、流石にそれは失礼ですよ」

相手は変人だろうと、一応は王女だ。

でも兄様が、見た目を評価するのは珍しい。
余っ程の美少女なのだろうか。

「ははっ。念の為、だよ」

「はぁ……」

全く悪びれる様子のない兄様に、苦笑いが溢れる。

本当に、この人はブラコンだな。
王女もこの姿を見れば、シナリオ通りにいかないって分かるんじゃないか?






◆◆◆◆◆◆◆◆




──そして、翌日






「急に俺に会いたいって、どうしたんだリュート?」

久しぶりに見た王様は、相も変わらずカリスマオーラを身に纏って輝いていた。
父様は仕事がある為、席を外している。
この部屋には俺と王様の2人きりだ。

「今日は態々ありがとうございました。それで、王様にちょっとお願いがございまして」

「お願い?」

俺は今日の目的について切り出した。

「はい、ユーリア・ライト・ユグドラシア王女殿下について」

「ユーリア? 何でまた?」

やはり、昨日の父様と同じく王様も怪訝な顔をした。
今まで話したことも、興味を持っているようにも見えた事もない。
それがいきなり会いたがるなんて、不自然もいいところなのだろう。

「同じ魔眼持ちとして、1度お会いしてみたくて」

俺は父様にも言った通り、当たり障りない理由を説明した。
乙女ゲームが何ちゃら言うより、余程納得出来る理由だ。

「うーむ、お前の頼みなら聞いてやりたいもんだが、難しいぞ? あいつ……ユーリアは誰とも会おうとしないからな」

俺でさえな、と王様は顔に暗い影を落とした。

「そこを何とかお願いできませんか?」

嫌がっても、一目見るくらいなら出来る筈だ。

「お前の頼みは聞いてやりたいが、それは出来ない」

しかし、王様はハッキリと俺の頼みを断った。

……何故だ?

元々駄目もとではあったが、王女に話くらいは持っていってくれると思っていた。

それが王女に聞くまでもなく、断られるとは……

王様の様子からして、何か理由があるに違いない。

「……何故ですか?」

「……ユーリアは今は変人などと、皆から陰で言われているが、それは俺達のせいなんだ」

そしてもたらされた王様からの回答は、俺を更に混乱させるものであったのだった。
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