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第3章 敬虔なる暴食
03話 攻略対象者達の集い
しおりを挟む波乱の誕生パーティーから、数日が過ぎた。
少々イレギュラーはあったものの、俺の社交界デビューは概ね上手くいった。
多くの貴族に顔を覚えて貰え、公爵家にはここ数日多くの縁談も来ている。
結果は上々だろう。
そして今日、俺は家庭教師も休みなので庭園でお茶をしていた……攻略対象者達と。
「リュー? 紅茶飲まないのかい?」
左隣に座った兄様が、俺の顔を覗き込んだ。
「体調でも悪いのか?」
俺の様子を心配をしたオズ様が俺の体調を気遣った。
「えっ、体調悪いの!? 大丈夫っ!?」
オズ様の言葉に、俺の正面に座ったエド様が声を上げた。
「だい…じょ…うぶ?」
右隣のユーリが首をコテンと傾げた。
どこを見ても攻略対象者である美少年が、視界に入る。
夢見る少女ならまだしも、あれほど下手に関わりたくないと思っていた他の攻略対象者達に囲まれるなんて男の俺にとって嬉しい事では決してない。
…………なんだコレ。
何故に俺は、攻略対象者ばかりに囲まれているんだ?
そもそも、交遊関係ほぼほぼ乙女ゲーム関係じゃないか。
俺は遠目をしながら、心のうちで突っ込みを入れた。
「大丈夫です。少し考え事をしてただけです」
攻略対象者なんて権力者で固められているのだし、公爵家の血をひく俺が関わる事になっても仕方がない。
俺のせいではない……そう、思うことにしよう。
俺はそう結論付けて、兄様達を笑って誤魔化した。
「そう? あまり無理をしてはいけないよ? 連日勉強漬けだと、セルバに聞いたしね」
「べ、勉強漬け……僕は嫌だな。音楽なら出来るけど」
「エドワードは、もう少し嫌いな勉強もやった方がいいぞ。芸術分野以外は、まるで出来んからな」
「あうぅ」
「(モグモグ)」
エドワードはあまり勉強は出来ないみたいだ。
音楽や芸術分野に突出してる分、他が疎かになっているのだろう。
そしてユーリは我関せずと、俺の作った茶菓子を食べ続けている。
「ユーリ、美味しい?」
「ん…おいし!」
ユーリははにかんで答える。
あのパーティー以来、こうしてなつかれてしまった。
小動物のような雰囲気のせいか、俺も邪険には出来なかった。
「うん、本当に美味しいよっ! 王宮で出るものより美味しいんじゃないかな?」
「確かにな」
「リューが作ったものだからね!」
俺が作った茶菓子は、皆に好評だったようだ。
王宮でいいもんを食い慣れている王子達には、若干不安だったが前世で培った料理の腕が役に立った。
「そう言えばエド様。こっちの離れに来てて大丈夫なんですか? 婚約者が本邸の方にいますけど」
俺はふと思ったことを聞いてみたが、その瞬間エド様が苦虫をを噛み潰した様な顔をした。
あまり触れたくない話題らしい。
「リュート君、あの女の話はやめてよ。折角楽しくしてたんだから。……本当、リリスには困ったものだよ。しょっちゅう城まで来て、僕に付きまとってくるし。他の人が近付くと、排除しようとするし。おかげで僕、友達全然できないし……」
エド様は口々に話した。
相当参ってるようだ、目が死んでいる。
「……家の妹がすまないね。君には本当に悪いと思っているよ」
「うぅー……本当に婚約破棄したい。まだ兄上の婚約者の方がましだと思いますもん」
兄様が宥めるも、エド様は暗い表情のままだ。
「まぁな……でもアレはアレで面倒だぞ?」
「表には出さないじゃないですか!? 僕何て公衆の面前でやられるから、本当に恥ずかしい……」
「う、そうだな……アレはな……」
オズ様もフォローを入れるが、全く意味をなさない。
「……そんなに酷いんですか?」
俺は恐る恐る聞いてみた。
陰険な性格をしているのは知っているが、好きな相手にまでその面を見せているのだろうか。
「あぁ、パーティーや茶会では終始ベッタリ張り付いている。2日1度は城に登城して、四六時中一緒にいる」
オズ様が代わりに答える。
ストーカーのように張り付き、周囲の人間を威嚇し排除する。
しかも、それがほぼ毎日。
うーわー、俺あんなのと四六時中ほぼ毎日一緒とか無理だわー。
胃に穴あくわー。
自身の立場に置き換えて想像すると、悲惨な想像しか出来なかった。
「しかもそれだけに飽きたらず、近付く女は勿論男にまで、牙を剥くからね。怪我をさせても、シュトロベルンの力で揉み消してるよ。周りを脅して、取り巻きを侍らしたりもしてるね」
兄様がそう付け足した。
「…………強烈ですね」
「…こ…わい」
俺は心底エド様に同情し、ユーリはその話にビビってた。
そんな人間が身近に居たら、最早ホラーだろう。
「エド様っ! 私に会いに来てくれたのですねっ!!」
そんな話をしていたのが悪かったのか。
呼んでいない、招かねざる客であるリリスがやって来てしまった。
ご本人登場というやつだ。
またこのパターンかっ!?
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