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第2章 俺と攻略対象者と、時々悪役令嬢
13話 謁見
しおりを挟むおおよその予想通り、次の日も俺は朝から晩まで着せ替え人形になった。
しかも兄様に続いて、父様も参加で。
そして、そうこうしているうちに王様との謁見の日が訪れた。
「準備は出来たか?」
父様が部屋まで俺を迎えに来た。
今日来ている服は、出来合いのものの丈をつめているだが、着心地は抜群でサイズも丁度いい。
あの姉妹も腐ってもプロ、腕は確かだったようだ。
「はい、出来てます」
父様に連れられ玄関までやって来ると、母様だけでなく兄様もいた。
「あれ? 兄様も一緒に行くのですか?」
「おはよう、リュー。僕はオズ、皇太子様と元々約束があってね。あの方とは友人なんだ。折角だからリュー達と一緒に登城しようと思ってね」
親友設定だもんな。
もしかしたら俺も今日会うことになるかもな。
兄様の説明にそうかと、納得した。
「では行くか」
そうして俺達は馬車に乗って、屋敷を離れたのであった。
◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆
城に着くと兄様と別れ、俺達3人は王様の居られる謁見の間に向かった。
因みに俺の存在はまだ公表されていないので、俺だけフードつきのコートを上から着て眼を隠しながらである。
「ウェルザック公爵、妻子様入室致します」
大きな扉が開かれ、俺と母様は父様に続いて中にはいる。
謁見の間は天井高く広い空間だった。
国の威信をかけた場所なので、細部にまで豪奢な装飾が施されている。
そしてその中央、玉座に座すのはこの国の王、ギルベルド・ライト・ユグドラシア。
金髪に翡翠色の目、自信溢れるその風貌は正に王者と呼ぶに相応しい。
「ソイツがヴィンセント、お前の子か?」
王様が砕けた口調で話しかける、父様が言っていた通り仲がいいようだ。
「えぇ、そうです。リュート、フードを取りなさい」
父様に言われ、俺はフードを取る。
「ほぉ……これは、成る程。お前が、ああいうのは無理もない。瞳も……確かに魔眼持ちだな」
王様が俺を見て感嘆のため息をついた。
何を言ったのか、少し気になった。
「えぇ、自慢の息子ですから」
「顔は……目元は奥方か?鼻筋はお前だな。」
王様は俺の顔をまじまじと観察すると、両親に似てる部分を探し始めた。
「半々という感じですね……私にもカミラにも似ている」
父様が王様に相槌をうった。
確かに半々って感じだ。
どちらと並んでも、すぐに親子だと分かるだろう。
……前世では両親に全くと言っていいほど、似てなかったのでちょっと嬉しい。
前世で容姿にそこまでのこだわりはなかったが、今では2人に似たこの容姿を俺は気に入っている。
「あの、僕はリュート・ウェルザックと申します。陛下の御目にかかれて光栄です」
俺は名乗りをあげた。
男2人でこのまま話し込まれても困る。
声を掛けられるのを待つべきかとも思ったが、俺の年齢と王様と父様の仲なら問題ないだろう。
「賢い子だな。俺はギルベルド・ライト・ユグドラシア。この国の78代目の王にして、お前の父親とは幼馴染みの間柄になるな」
王様はしゃがんで俺と目を合わせて言った。
その目には友人の子への親しみが込められている。
「しかし……これは社交界に出たら騒ぎになるな。ククッ、王国一の美姫が代わるんじゃねぇか?」
「……息子なんですが。」
「ドレスも似合いそうだぞ?」
王様、こないだの件があるから、それ全く冗談に聞こえない。
現に今母様が目を輝かせてる。
そんなの大勢の前でさらしたら、俺まで変態の烙印が付いてしまう。
「おいおい、そんな深刻な顔するな坊主。冗談だ」
ははっと王様は笑って言ったが、こっちは全然笑えない。
貴方は冗談の積りでも、隣の人が本気で実行しちゃうんですよ。
「ふふ、流石は陛下です。昨日一昨日で沢山着せたんですが、とっても似合ってたんですよ。ね、ヴィンセント様?」
母様が笑顔で父様に同意を求めた。
ほら、本気にしてしまったじゃないか。
「あぁ、似合っていた」
「あ? 本気で着せてたのか?」
王様が、俺を憐れみの目で見た。
ちょっと申し訳なさそうだ。
だが許さん。
これで社交界でドレスを着せられたら貴方のせいだ。
「あー、うーん。……流石に社交界ではやめろよ?お前んとこは一応公爵家なんだし」
俺の恨みのこもった視線に気づいた王が、フォローをいれた。
「流石にしませんよ。当然でしょう?」
父様も本気ではなかったようでなに言ってんだという目をしているが、母様は露骨に残念そうな顔をした。
ナイス王様!
というか、やっぱり本気で着せるつもりだったのか……母様。
「まあでも、顔見せは必要だな。……エドワードの誕生日が近い、そん時にでも参加させろ」
「再来月ですか……早くないですか?」
「あんまり隠すのも後で煩いからな。早い方がいいだろう。王子の誕生会ともなれば、ほとんどの貴族は参加する。ちょうどいいだろう?」
「それはそうですが……」
王様の要求に父様が難色を示す。
まだ俺の存在を公にするつもりはなかったようだ。
第3王子の誕生会か……しかも再来月。
いきなり社交界デビューとか、中々ハードだな。
「マナーも見る限り問題なさそうだし。今から仕込めば間に合うだろ?」
「はぁ……畏まりした」
父様が渋々だが頷いた。
王様の言葉に利があると判断したからだ。
「決まりだな。それとこのあと時間あるだろ? 王妃も会いたがっているし、茶でもどうだ?」
「えぇ、大丈夫です。是非ご一緒させてくださいとお伝えください」
「じゃあ準備は出来てるし、場所を変えるか」
こうして俺の初の謁見は終わりを迎えた。
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