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第2章 俺と攻略対象者と、時々悪役令嬢

06話 やっぱり真っ黒でした。

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俺達はセルバさんの案内で、本邸ではなく離れに案内された。
離れといってもかなり立派だ。
外から見ただけでも、部屋は20部屋はあるだろう。
庭も広く様々種類の花が揃えられている。

「長旅でお疲れでしょう。奥方様の部屋は昔のまま用意しております。休まれますか?」

セルバさんが俺達を気遣ってそう尋ねる。

「私は大丈夫だけど……リュー君はお昼寝した方がいいかしら?」

「僕は大丈夫です。馬車で沢山寝ましたから」

子供体力なのでお昼寝は必須だが、馬車で寝ていたので目が冴えている。

屋敷を探索でもするか?……いや、そうだ

「セルバさん、厨房をお借りしてもよろしいですか?」

「厨房ですか? 何か欲しいものが御座いましたら、私が用意致しますよ」

「いえ、ケーキを焼こうと思ったのでお借りしたいのです」

町を出る前に、母様にケーキを焼く約束をしていた。
折角だし、今から作ろう。
公爵家ともなれば設備や材料も揃っている筈だから、沢山種類を作れそうだ。

「ケーキなら料理長に言って作らせますので、少しお待ちいただけたら」

「ケーキ! リュー君のケーキが食べれるっ!!」

セルバの話を遮り母様が喜びの声を上げる。

母様、食い意地張りすぎです。
しかしこれで、セルバさんも断りづらくなっただろう。

「……料理長の監督のもとでなら……大丈夫でしょう」

セルバさんは不安そうだ。
普通6歳時に火を任せる人はそうそういない。

「ではリュート様は私が見ていますので、奥方様はそれまで体を休めていて下さい。レイアス様もそろそろ家庭教師の先生が来る時間ですので本邸の方へお戻り下さい」

「じゃぁ、セルバさんリュー君の事お願いします」

「宜しくお願いします」

母様は屋敷にいたメイドに連れられ廊下を奥へ向かっていった。
俺もセルバさんに厨房まで案内して貰おうとした。

「…………………………………………兄様、手を離してください」

が、兄様が俺の手を離す気配がない。

「ごほんっ、レイアス様家庭教師の先生がそろそろいらっしゃいます」

「嫌だ。……まだ此処にいたい」

セルバさんが再度促すも、兄様は拒否した。

「レイアス様……」

「たまにはいいじゃないか。……僕だってたまには遊びたい」

確かにまだ9歳の子供が勉強漬けも可哀想だな。
余り我が儘とか言わなそうなタイプだし……さっきはあれだったが。
もしかしたら、普段抑圧されてるからこそおかしくなったのかもしれない。

……(今後の為にも)少し位、息抜き出来ないのかな?

「はぁ……先生の方には私からレイアス様が体調を崩されたと連絡しておきます。今日だけですよ?」

セルバさんも俺と同じ風に思ったのか取りなしてくれるようだ。

「ありがとうセルバッ!」

兄様はすごく嬉しそうだ。
先程のやり取りで変態のイメージがついてしまったが流石はメイン攻略キャラの1人。
笑顔が眩しい。
やはり、さっきのは疲れから来る異常だったのだ。

「じゃあ行こう僕の天使!! 案内するよっ!」

兄様が俺の手を引きかけていく。
兄様はまだまだお疲れのようだ。
変な妄想に囚われている。

「兄様、僕は天使じゃありませんよっ!」

というか、そもそもお前のではない。
強いて言うなら、母様のだ。

「ははっ、天使だよ。リューは僕の天使だ!」

だからお前のじゃないってば。
……もういいや、スルーで。

「こっちだよリュー」

「……はいはい」

俺は引っ張られるがままついていく。
何事も諦めが大事である。






◆◆◆◆◆◆◆◆◆







兄様に案内された厨房はかなり大きく立派であった。
セルバさんも俺達から少し遅れて着いてきた。

「ここだよリュー」

俺に蕩けるような笑みを浮かべる攻略キャラ。
これ……本当に大丈夫だよね?
疲れてるだけ、だよね?
ヒロインに出会ったらそっちにいくよね?

……何だか激しく心配になってきた。

「僕も手伝っていいかい?」

「いえ、大丈夫です。案内して貰ってありがとうございます」

手伝いを申し出て貰ったが、今まで包丁もろくに握った事がないようなお坊ちゃんだ。
申し出は有難いが、俺が1人でやる方が早い。
ここは丁重に断らせてもらおう。

「ううん、僕が手伝いたいんだ」

「大丈夫です、1人で作る方が早いので」

果物とか洗剤で洗いそうだし……それにちょっと嫌な予感もする。

「リューと一緒にいたいんだ」

あれ?しつこくね?
てか顔近いし。

「いえ「駄目かな?」」

ちょ

「い「いいよね?(ニコッ)」」

……………。

「……えぇ、お願いします。」

NOを言わせない微笑みだね。
さっきの純真さはどこへいったの?
お腹黒いよ、真っ黒だよ。

「では始めに小麦粉を……」

俺は溜め息をつき厨房に入る。
こうして、俺達は二人仲良く?ケーキ作りを開始したのであった。
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