光と闇

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第四章 力との闘争

彼の正体は

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「風の竜……だと?」

 カイムは戸惑うように口にする。

「ぶっはは!」

 声を出して笑い始めたのは黄金の竜だ。

「なに笑ってんだてめー」

 ギロりとにらみ付ける黒猫は、黄金の竜を視界に入れると、低くも透き通った声を響かせた。

「風の神竜様は偉い厳しいって聞いてたが!  何したらそんなちっこい姿にされるんだよ!  ひゃーはは!」

 幼い声を響かせたカミナリは、カイムの頭上で体をくねらせて爆笑していた。

「うるせぇ!  ガキみたいな声をしやがって!   ぶっ飛ばすぞてめぇ!」

 黒猫は立ち上がり再び毛を逆立たせて言うと、足元で丸まっていた子猫はシエルの下へ逃げて行く。

「なんだと!?そんな体で怒っても怖くねぇぞ!  まず、俺に届くのか?」

 馬鹿にしたように言うカミナリだったが、自分の体の何倍もの高さを飛ぶ猫のジャンプ力を知らなかった黄金の竜は、飛んで来た黒猫に驚いて「うわ!」と声を上げた。

 体に飛び乗った黒猫は、爪を立てて竜の体をくが、硬いうろこで覆われているためあまり効き目がない。だが、カミナリは体をくねらせ始める。

「くすぐったい!  やめろ!」

 黄金の竜と黒猫のやり取りを見ていた辺りは、目を丸くしていた。

「カミナリ!  いい加減にしろ!  話が進まねぇだろ!」

 カイムの一声によってようやくけんかを止めた二匹は、落ち着きを取り戻すかのように荒い息を整えて始めた。カミナリの体にしがみついていた黒猫は、軽々しく地面に着地し、黄金の竜はカイムの頭上へ戻って行く。

「おまえのせいで怒られたじゃねぇか!  早く話せよもう」

 地面に座り、三本の尻尾を揺らす黒猫に向かって、カミナリは高い声を響かせて文句を言った。

「雷の竜、てめーは600年前は地上にいたか?」

 低い声を響かせる黒猫。

「あぁ、ここまで大きくなれなかったけどな!  カイムはすげぇぞ!」

 黄金の竜は誇らしげにカイムの事を自慢するように言った。

 竜の大きさは、その使い手の神々の力の力量によって決まるのだ。五年前よりも少し大きくなった黄金の竜は、迫力がある立派な竜に成長していた。カイムが雷の鍛錬を怠らなかった証だ。

 カミナリほどのサイズに成長させる者は、世界を見ても一握りだろう。

「それは認めてやるよ。おいらは600年前は光の子の兄弟に出現されられたんだ」

 黒猫は下を向いて、目を伏せながら言った。

「…………」

 黒猫が600年前に産まれて光の子の事を話した瞬間、カミナリは途端に口を閉じて無言になった。

「今のてめーと灰の子みたいな関係だ」

 黄金の竜を再び視界に入れた黒猫は、次にカイムを視界に入れ「この姿は光の子を守りきれなかった罰ってやつだ。おいらの子供まで猫にされちまった。選択は間違えんなよ。雷さんよ」と言った。

 飄々ひょうひょうとしながら、シエルとユハンを目線を移した黒猫は「しっかしまぁ、おいらの子が闇の子の所にいるなんざどんな殺され方すると思ったが、随分ずいぶん丸く育てたもんだ」とサイキに言った。

「いいえ、灰の子が止めてくれましたから」

 サイキが真顔のまま言うと「今回の灰の子は光寄りか」と、黒猫は意味深げな発言をした。

「ねぇ、ねぇ」

 黒猫に話しかけたのは、灰の子であるシエルだ。

「なんだよ」

 シエルが急に話し掛けて来た事に戸惑うように、ぶっきらぼうに言う黒猫。

「触っていい?」

 シエルは、真面目な話しは終わったと思ったのか、満面の笑みを浮かべて幼い声を響かせた。

「は?」

 あまりにも唐突な質問に、思わず声を漏らす黒猫の姿を見た周りは、皆クスクスと笑い出す。

「だってかわいいんだもん!  猫って初めて見たよ!  ねぇ、いいでしょ?」

 とても楽しそうに話し始めたシエルの笑顔に釣られるように、黒猫は「好きにすれば」と答えた。

「やったー!!」

 声を上げて喜ぶシエルは、猫を持ち上げて抱き締めた。

 頭をでられる訳でもなく、急に抱き締められた黒猫は驚いたように「てめー!  順序ってもんがあんだろうが!」とシエルの腕の中で暴れていた。

「おいシエル!  急に抱っこしたらびっくりするだろ!」

 堪らず、カイムがしゃがんで黒猫を下ろしてあげると「こうやって触るんだ」とシエルに教えるように猫をで始めた。

 頭をでて、耳の後ろや喉の下、尻尾の付け根を触ると、黒猫は気持ち良さそうに目を閉じた。

「悪くねぇ」

 黒猫は安心したように言う。

 父親に教えてもらった通り、黒猫をでるシエルは「うわー!  フワフワしててやわらかい!  ユハンも触ってみなよ!」と、うれしそうに声を出した。

 まるで闇の子に警戒しているかのように、目を鋭く光らせた黒猫。ユハンは恐る恐る手を伸ばして頭をで、首をでてやると、警戒しているにも関わらず、猫は喉を鳴らし始めた。

「すごくフワフワだ。いい感じ?」

 猫をでるユハンは、笑顔を見せながら口にすると、シエルの足元にいる子猫にも手を差し出した。

「さっきはごめんね」

 人懐っこい子猫は、ユハンの手に擦り寄るように体を擦りつけた。

「黒猫さん」

 黒猫と子供たちのやり取りを無言で見ていたサイキは、ゆっくりと口を開いた。

「家に来てくれませんか?」

 ユハンの教育上、小動物への触れ合いは大切だと思ったのか、サイキは落ち着いた声で言う。

「いいかもな!  シエルには俺がいるし!  ユハンには化け猫って事で!」

 カイムの隣に向かった竜は、黒猫がシエルの所に来たいって言うのを阻止するかのように、早口で言うと

「てめぇ」

 低い声を響かせた黒猫は、黄金の竜をにらみ付けた。



ーーー・・・





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ここまでお読みいただき
ありがとうございましたm(_ _)m
来週の土曜日18時に更新予定です。
今後もお付き合いいただけたら
嬉しいです!宜しくお願いします。

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