光と闇

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第四章 力との闘争

4人の天才たち ①

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 エフティヒアでは、光の子が誕生したために埋もれてしまった天才たちが数名いた。その中の一人の少年は、託叶と同じ歳の十歳の少年だ。田舎でも都会でもない土地で育った彼は、テレビのニュースで光の子の話題が出ると、目を見開いて彼の姿を見ていた。光の子のように特別教育を受けている訳ではないが、独学で知識を付けて行った少年は、テストではいつも満点を取っていた。

「みなみー! また光の子テレビでやってたな! おまえとどっち頭いいかな?」

 類を見ない天才と言われるはずが、光の子が誕生した事で埋もれてしまった少年、成瀬なるせみなみは、帰る準備をしている時、教室で話し掛けて来た、クラスメイトの顔を見た。

「関係ねーよ」

 ぶっきらぼうに答えるみなみは、光の子と比べられる事が多くてうんざりしていた。

「うそだー? 気にしてるくせに」

 幼い声を響かせる同級生に南は、ため息をはきながら「面倒臭いんだよ」と言った。

「おい、南! 一緒に遊ぼ!」

 ランドセルの中に教科書を入れて帰ろうとしていた南たちに、大きなボールを持ったクラスメイトが話し掛けた。彼らは学校が終わった後、いつも体育館に集まって皆でバスケットをして遊んでいた。

「うん!  南、行こう!」

 先程まで二人で話していた同級生は、南の腕を引っ張って体育館へ向かうため走り出した。

「うわ! ちょっと!」

 南は驚いたように声を上げて、友達に引っ張られるがまま足を進ませる。

 彼らの周りにはたくさんの子供たちがいて、皆で体育館へ入って行くと、女の子たちも集まっていた。

「南君来たー!」

「きゃー!  本当だ!」

「今日はラッキーだね」

 体育館にいた女の子たちが、南を見てうれしそうに声を上げる。南は恥ずかしいのか、誠司に手を引かれながら下を向いて歩いていた。

 成瀬南は愛想の良い子供ではなかったが、天才的頭脳と並外れた運動神経の持ち主だった。

 バスケットにしても、南が参加すると子供たちは皆、彼にパスを回す。必ずシュートを決めてくれるからだ。女子も混じったチームの中、だるそうに動いている南だが、いつもパスが回しやすいちょうど良い位置にいて、ボールを手にすると、子供らしくない動きを見せてゴールを決める。

 あまり自分から話す方ではない南だが、クラスの中では皆の憧れの存在だった。

 光の子と同じ歳のもう一人の天才、成瀬南には、これから神崎託叶の名前は嫌ほど付いて回るだろう。

 光の子とつながる強い縁を、彼はまだ知らずにいた。将来、光の子と運命をともにする事も、灰の子や闇の子、神々の子たちと、大きな関わりを持つ事になる事も、今の南は知るはずもない。

 決して交わってはいけないそれぞれの歯車は、少しずつ、誰も気付かない所で、回り始めていた。

 今の所、成瀬なるせみなみは、光の子の影に隠れ、世間に認識される事はない。



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ここまでお読みいただき
ありがとうございましたm(_ _)m
来週の土曜日18時に更新予定です。
今後もお付き合いいただけたら
嬉しいです!宜しくお願いします。

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