2 / 2
恋の花を探す君に。
しおりを挟む
#恋が叶う花BL
高校生活最後の文化祭、後夜祭ではみんな音楽に合わせて思い思いに過ごしている。
告白なんかもして、最後の想い出作りをしている子もいるみたいだ。
俺は中庭の人混みから抜け出して、そっと彼を探しに行く。後夜祭の始まりに、ちゃっかりくっついた会長と副会長のペアが文化祭実行委員の紹介をしていたけれど、彼の姿はなかったから。
……きっと彼ならここだろうなって。
誰もいない放送室。
一人、音楽を流していた彼によっと声をかけた。
彼は放送室の窓から中庭を見る。
思った通り、自分から志願したのだろう。
後夜祭に混ざることができない裏方に徹しているのが彼らしい。
こんな人もいない場所に。
せっかくだから中庭に行けばいいのにって言われたけれど、俺が一緒にいたいのはお前だからここが特等席なんだよなぁとは思ってはぐらかしておいた。
そのうちぽつりと彼が話しだした。
「3年に一度だけ、恋が叶う花が咲くらしい。良いな。そんな花があったら。……俺の恋も実るのかな」
その言葉に衝撃を受ける。
いやいやいや、いるの。好きなやつ。
恋しちゃってるの。そんな切なそうな表情で。
俺、お前の隣にずっといたのに、全部気づかなかったのに。
文化祭実行委員も大変なのに押し付けられて、今日も迷子を本部に送り届けたり無事に終わるようにと学校中走り回って、しょうがないよなって割食っているのに笑うお前が……普段は言わないような願い。
はっと自分の言葉に我に返ったように誤魔化すけれど、俺は、そんなお人好しな彼が大好きで。
「そんな花なんてあるのか……探そうかな。俺も好きな人いるし」
そんな花があるのなら、お前も幸せになれるかな、なんて。
一人占めして俺の恋を叶えてもらうって誘惑にもほんのすこし……ちょっぴり本気で悩んだけれど、やっぱりここは……うんと気合いをいれる。
俺の好きな人の恋を叶えてもらいたい。
だってさ、こんなにも良い奴なんだから。俺は誰よりも彼に幸せになってもらいたい。
そんな気持ちで手当たり次第に探したけれど、花は全然見つからない。
噂は本当らしく、どこかの部活の先輩は叶ったらしいなんて話だけは伝わっている。だけど目撃情報は曖昧だ。
用務員のおっちゃんや長くいる先生に聞いて、どうにか時期外れの花、とだけは聞き出せた。
ふっ、男子高校生に花の開花情報なんてわかるわけがない。
変わり種の花を見つける度に図書館で借りてきた手帳サイズの花の図鑑で確認する。
ふと、見かけない花。この時期には見ない……冬のページにあったような……白い小さな花を見つける。
「あった!!」
興奮して彼を呼ぶ。
あった、あったんだよ!
諦めているのか、少し乗り気ではなさそうな彼を呼び寄せる。
「時期外れに咲くこの花、きっとこれだ!」
あぁ、良かった。
これで、彼の願いが叶う。それを思うだけで笑みが溢れた。
「はいこれ!」
花を差し出したら彼が驚いた。
いや、当然じゃん?
「え? だってお前が欲しそうだったから」
だから見つかって本当に良かったよ。
「確かに俺も好きな奴がいるからさ。一人占めしたいなって一瞬思ったけど……。でもいつも人にすべて譲ってさ、自分は最後でいいって毎回我慢しているお前が、あれだけ切なそうに欲しがったんだ。お前が何か願うのも本当に珍しいし。だから、お前の恋が実れば良いなって」
だから、はい。
彼は震える手で、花をそっと受けとった。
あぁ、良かった。
俺的には彼の恋が叶う=失恋で全然良くはないんだけど。
でも、いつも人を優先する彼の恋が叶うなら。その方が何百倍もいいや。
「願い、叶うといいな」
「……うん」
「俺お前が好きだから、幸せになってほしいし」
「……うん」
「失恋しても親友ではいさせて欲しいな!」
「……う……うん!?」
へへへ、言っちゃった。このぐらいは許して欲しい。恋人の座は貰えなくても、一生の友達の座は欲しいなって!
顔を上げた彼が、とても驚いた顔をして、それから見て分かるほどに、ぶわりと首から耳まで真っ赤に染め上げた。
なんだなんだ可愛いの氾濫か!? と思っていると、いきなりぽろぽろ泣きながら、恋が叶ったよとすがり付いてきた。
えっ効果絶大過ぎでは!? って思ったけれど、えっと、えっと、それって、ええ!? もしかして、俺??
3年に1度、恋が叶う花が咲く。
一度に二人の恋を叶えるなんて、本当に効果は絶大だ。
俺は泣いてる彼をぎゅむりと抱き締めると、探して良かったー! なんて思ってしまった。
高校生活最後の文化祭、後夜祭ではみんな音楽に合わせて思い思いに過ごしている。
告白なんかもして、最後の想い出作りをしている子もいるみたいだ。
俺は中庭の人混みから抜け出して、そっと彼を探しに行く。後夜祭の始まりに、ちゃっかりくっついた会長と副会長のペアが文化祭実行委員の紹介をしていたけれど、彼の姿はなかったから。
……きっと彼ならここだろうなって。
誰もいない放送室。
一人、音楽を流していた彼によっと声をかけた。
彼は放送室の窓から中庭を見る。
思った通り、自分から志願したのだろう。
後夜祭に混ざることができない裏方に徹しているのが彼らしい。
こんな人もいない場所に。
せっかくだから中庭に行けばいいのにって言われたけれど、俺が一緒にいたいのはお前だからここが特等席なんだよなぁとは思ってはぐらかしておいた。
そのうちぽつりと彼が話しだした。
「3年に一度だけ、恋が叶う花が咲くらしい。良いな。そんな花があったら。……俺の恋も実るのかな」
その言葉に衝撃を受ける。
いやいやいや、いるの。好きなやつ。
恋しちゃってるの。そんな切なそうな表情で。
俺、お前の隣にずっといたのに、全部気づかなかったのに。
文化祭実行委員も大変なのに押し付けられて、今日も迷子を本部に送り届けたり無事に終わるようにと学校中走り回って、しょうがないよなって割食っているのに笑うお前が……普段は言わないような願い。
はっと自分の言葉に我に返ったように誤魔化すけれど、俺は、そんなお人好しな彼が大好きで。
「そんな花なんてあるのか……探そうかな。俺も好きな人いるし」
そんな花があるのなら、お前も幸せになれるかな、なんて。
一人占めして俺の恋を叶えてもらうって誘惑にもほんのすこし……ちょっぴり本気で悩んだけれど、やっぱりここは……うんと気合いをいれる。
俺の好きな人の恋を叶えてもらいたい。
だってさ、こんなにも良い奴なんだから。俺は誰よりも彼に幸せになってもらいたい。
そんな気持ちで手当たり次第に探したけれど、花は全然見つからない。
噂は本当らしく、どこかの部活の先輩は叶ったらしいなんて話だけは伝わっている。だけど目撃情報は曖昧だ。
用務員のおっちゃんや長くいる先生に聞いて、どうにか時期外れの花、とだけは聞き出せた。
ふっ、男子高校生に花の開花情報なんてわかるわけがない。
変わり種の花を見つける度に図書館で借りてきた手帳サイズの花の図鑑で確認する。
ふと、見かけない花。この時期には見ない……冬のページにあったような……白い小さな花を見つける。
「あった!!」
興奮して彼を呼ぶ。
あった、あったんだよ!
諦めているのか、少し乗り気ではなさそうな彼を呼び寄せる。
「時期外れに咲くこの花、きっとこれだ!」
あぁ、良かった。
これで、彼の願いが叶う。それを思うだけで笑みが溢れた。
「はいこれ!」
花を差し出したら彼が驚いた。
いや、当然じゃん?
「え? だってお前が欲しそうだったから」
だから見つかって本当に良かったよ。
「確かに俺も好きな奴がいるからさ。一人占めしたいなって一瞬思ったけど……。でもいつも人にすべて譲ってさ、自分は最後でいいって毎回我慢しているお前が、あれだけ切なそうに欲しがったんだ。お前が何か願うのも本当に珍しいし。だから、お前の恋が実れば良いなって」
だから、はい。
彼は震える手で、花をそっと受けとった。
あぁ、良かった。
俺的には彼の恋が叶う=失恋で全然良くはないんだけど。
でも、いつも人を優先する彼の恋が叶うなら。その方が何百倍もいいや。
「願い、叶うといいな」
「……うん」
「俺お前が好きだから、幸せになってほしいし」
「……うん」
「失恋しても親友ではいさせて欲しいな!」
「……う……うん!?」
へへへ、言っちゃった。このぐらいは許して欲しい。恋人の座は貰えなくても、一生の友達の座は欲しいなって!
顔を上げた彼が、とても驚いた顔をして、それから見て分かるほどに、ぶわりと首から耳まで真っ赤に染め上げた。
なんだなんだ可愛いの氾濫か!? と思っていると、いきなりぽろぽろ泣きながら、恋が叶ったよとすがり付いてきた。
えっ効果絶大過ぎでは!? って思ったけれど、えっと、えっと、それって、ええ!? もしかして、俺??
3年に1度、恋が叶う花が咲く。
一度に二人の恋を叶えるなんて、本当に効果は絶大だ。
俺は泣いてる彼をぎゅむりと抱き締めると、探して良かったー! なんて思ってしまった。
6
お気に入りに追加
24
この作品の感想を投稿する
みんなの感想(1件)
あなたにおすすめの小説
十七歳の心模様
須藤慎弥
BL
好きだからこそ、恋人の邪魔はしたくない…
ほんわか読者モデル×影の薄い平凡くん
柊一とは不釣り合いだと自覚しながらも、
葵は初めての恋に溺れていた。
付き合って一年が経ったある日、柊一が告白されている現場を目撃してしまう。
告白を断られてしまった女の子は泣き崩れ、
その瞬間…葵の胸に卑屈な思いが広がった。
※fujossy様にて行われた「梅雨のBLコンテスト」出品作です。
影の薄い悪役に転生してしまった僕と大食らい竜公爵様
佐藤 あまり
BL
猫を助けて事故にあい、好きな小説の過去編に出てくる、罪を着せられ処刑される悪役に転生してしまった琉依。
実は猫は神様で、神が死に介入したことで、魂が消えかけていた。
そして急な転生によって前世の事故の状態を一部引き継いでしまったそうで……3日に1度吐血って、本当ですか神様っ
さらには琉依の言動から周りはある死に至る呪いにかかっていると思い━━
前途多難な異世界生活が幕をあける!
※竜公爵とありますが、顔が竜とかそういう感じては無いです。人型です。
婚約破棄したら隊長(♂)に愛をささやかれました
ヒンメル
BL
フロナディア王国デルヴィーニュ公爵家嫡男ライオネル・デルヴィーニュ。
愛しの恋人(♀)と婚約するため、親に決められた婚約を破棄しようとしたら、荒くれ者の集まる北の砦へ一年間行かされることに……。そこで人生を変える出会いが訪れる。
*****************
「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく(https://www.alphapolis.co.jp/novel/221439569/703283996)」の番外編です。ライオネルと北の砦の隊長の後日談ですが、BL色が強くなる予定のため独立させてます。単体でも分かるように書いたつもりですが、本編を読んでいただいた方がわかりやすいと思います。
※「国王陛下は婚約破棄された令嬢に愛をささやく」の他の番外編よりBL色が強い話になりました(特に第八話)ので、苦手な方は回避してください。
※完結済にした後も読んでいただいてありがとうございます。
評価やブックマーク登録をして頂けて嬉しいです。
※小説家になろう様でも公開中です。
夢見がちオメガ姫の理想のアルファ王子
葉薊【ハアザミ】
BL
四方木 聖(よもぎ ひじり)はちょっぴり夢見がちな乙女男子。
幼少の頃は父母のような理想の家庭を築くのが夢だったが、自分が理想のオメガから程遠いと知って断念する。
一方で、かつてはオメガだと信じて疑わなかった幼馴染の嘉瀬 冬治(かせ とうじ)は聖理想のアルファへと成長を遂げていた。
やがて冬治への恋心を自覚する聖だが、理想のオメガからは程遠い自分ではふさわしくないという思い込みに苛まれる。
※ちょっぴりサブカプあり。全てアルファ×オメガです。
美人に告白されたがまたいつもの嫌がらせかと思ったので適当にOKした
亜桜黄身
BL
俺の学校では俺に付き合ってほしいと言う罰ゲームが流行ってる。
カースト底辺の卑屈くんがカースト頂点の強気ド美人敬語攻めと付き合う話。
(悪役モブ♀が出てきます)
(他サイトに2021年〜掲載済)
キンモクセイは夏の記憶とともに
広崎之斗
BL
弟みたいで好きだった年下αに、外堀を埋められてしまい意を決して番になるまでの物語。
小山悠人は大学入学を機に上京し、それから実家には帰っていなかった。
田舎故にΩであることに対する風当たりに我慢できなかったからだ。
そして10年の月日が流れたある日、年下で幼なじみの六條純一が突然悠人の前に現われる。
純一はずっと好きだったと告白し、10年越しの想いを伝える。
しかし純一はαであり、立派に仕事もしていて、なにより見た目だって良い。
「俺になんてもったいない!」
素直になれない年下Ωと、執着系年下αを取り巻く人達との、ハッピーエンドまでの物語。
性描写のある話は【※】をつけていきます。
【完結】遍く、歪んだ花たちに。
古都まとい
BL
職場の部下 和泉周(いずみしゅう)は、はっきり言って根暗でオタクっぽい。目にかかる長い前髪に、覇気のない視線を隠す黒縁眼鏡。仕事ぶりは可もなく不可もなく。そう、凡人の中の凡人である。
和泉の直属の上司である村谷(むらや)はある日、ひょんなことから繁華街のホストクラブへと連れて行かれてしまう。そこで出会ったNo.1ホスト天音(あまね)には、どこか和泉の面影があって――。
「先輩、僕のこと何も知っちゃいないくせに」
No.1ホスト部下×堅物上司の現代BL。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。
このユーザをミュートしますか?
※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。
可愛い物語ですね!
心がほんわかしました(*˘︶˘*).。.:*♡
ありがとうございました。
ゆきなお様
ありがとうございます!
企画が始まると、がたっと参加してしまうのですが、とても素敵な企画のおかげで可愛いお話ができました!
お読みくださり、ありがとうございます!