85 / 92
【第5章理不尽賢者と新大陸】
【理不尽賢者と奴隷の子Ⅱ】
しおりを挟む
「これはこれはお待ちしておりました。ローズマリー様」
「おい? この奴隷を差し向けたのはお前だな、クソ爺」
「なんと! あれほど、人に迷惑をかけるねと言ったのに……何か悪さをしたのですかな?」
あくまで白を切るつもりだな、このクソ爺は。だったら……久し振りに暴れたくなったローズマリーだった。
「喧嘩で負けた方が全財産払うってのはどうだ?」
「ほほほ、威勢だけは良いですな。しかしこちらには数百人の奴隷がいますぞ。金貨と銀貨を全て置いていったら許して差し上げますよ」
ローズマリーはセレーナに杖を投げ渡した。相手は仕方なく戦っている奴隷本気でボコるのはあの爺さんだけで十分だ。
「やれ! お前たち金貨も、銀貨もすべて奪え」
しかし皆動かない。視線はギルに注がれていた。ギルはビクついている。
「なんで、動かんのじゃ⁈ わしがお前らの主人じゃぞ」
「もうたくさんだ、悪事の片棒を担がされるのは!」コボルトの青年が言った。
「お、お前たちに飯を食わせているのは誰だ! 言ってみろ!」
「好きで奴隷になったわけじゃないんだ、もう疲れた」と鳥獣人。
「これ、何故だ! この国ではわしが一番偉いんじゃ、言うことを聞かんか!」
「皆この子を羨ましがっているのさ、腹がこんなに膨れるくらい飯を食わせてもらっているからさ」
「何⁈ なら、わしはお前ら奴隷にももっと飯を食わせてやる! ほら誰か運んでこんかい?」
族長エネロの叫びは虚しく木霊した。そしてローズマリーは思いっきりエネロの顔にビンタを食らわせた。エネロは気絶した。
すると奴隷たちから歓声の声が上がった。皆気付いたのだ。このクソ爺は裸の王様だということを。
奴隷たちは皆エネロの食料やお金を分け合い、逃げていった。
ローズマリーは迷惑料として族長エネロが死ぬほど欲しがっていたリンデ小銀貨を1枚置いてギルを伴って飛空船に戻った。
「それでこのダニだらけの坊やを本気で育てる気かよ」エンデュミオンが呆れていた。
「仕方ないだろう、あのままあそこにいてもギルは働けないんだから……」
「お母さんって呼んで良いのか」ギルは猫耳の先端が欠けていた。話を聞くと以前夜中に寝小便を垂れ死ぬほど鞭で打たれた時の傷跡だそうだ。コイツがちゃんと生きていけるような場所を見つけるまでは、あたしはコイツの母ちゃんだ。
「良いぞ、好きに呼びな」
「マリーお母ちゃん!」ギルはダニだらけだったがローズマリーは気にせず抱き上げた獣人族で、8歳でこの体重かきっと奴隷たちのガス抜きに使われていたんだろう。あちこちに鞭の跡がついている。可哀想に思いローズマリーはギュッとギルを抱きしめた
「ローズマリーお客さんが来たわよ」セレーナが集まった獣人族を見て言った。
「どうしたお前たち? もう自由だろ」
「この恩は一生忘れません、ローズマリー様。私らにできるのはこれだけです」山ほどの魔法石が運ばれてきた。律義な奴らだなとローズマリーは思った。
「その代わりと言ったらなんなんですが……私らにも名前を付けてくれませんか?」コボルトの青年が言った。
ローズマリーは集まった数百人の獣人族に名前を付けていった。名づけは昼間から深夜に及んだ。
「じゃあな、ペコニャン! 達者でな」獣人たちには思いつく限りの名前を付けてやった。頭をフルスロットルで使ったローズマリーはぐったりとベッドで横になった。ギルは一緒に寝て良いかと聞いてきたから、良いぞと言ったらギルはまたローズマリーに抱きつき甘えてきた。
そして朝方ローズマリーは生れて初めて悲鳴を上げた。ギルが寝小便をし特攻服が小便まみれになってしまったからだ。
他の3人は青ざめギルを守るように囲んだ。あの特攻服に関してはデリケートに扱わないとキレるローズマリーだ。3人は命懸けでギルを守ろうと誓い合った。
しかしローズマリーは井戸の方へ行き石鹸で特攻服を洗うだけだった。しかもがっくりとして。
「ごめん、マリー母ちゃん。もう寝小便は垂れないから許して」
「良いぞ、寝小便くらいガキはするもんだ。ギルがもっと早く大人になれるように寝小便をしないおまじないをかけてやるからな」
「ふっ、まるで本当の母親のようだな……」ルーンベルトが冷や汗を拭きながら言った。
「ホントね、人間ってこんなに変わるものなのかしら」とセレーナ。
「いつまで続くか見ものだな」とエンデュミオン。
こうしてローズマリーは18歳ながら一児の母親になってしまった。
「おい? この奴隷を差し向けたのはお前だな、クソ爺」
「なんと! あれほど、人に迷惑をかけるねと言ったのに……何か悪さをしたのですかな?」
あくまで白を切るつもりだな、このクソ爺は。だったら……久し振りに暴れたくなったローズマリーだった。
「喧嘩で負けた方が全財産払うってのはどうだ?」
「ほほほ、威勢だけは良いですな。しかしこちらには数百人の奴隷がいますぞ。金貨と銀貨を全て置いていったら許して差し上げますよ」
ローズマリーはセレーナに杖を投げ渡した。相手は仕方なく戦っている奴隷本気でボコるのはあの爺さんだけで十分だ。
「やれ! お前たち金貨も、銀貨もすべて奪え」
しかし皆動かない。視線はギルに注がれていた。ギルはビクついている。
「なんで、動かんのじゃ⁈ わしがお前らの主人じゃぞ」
「もうたくさんだ、悪事の片棒を担がされるのは!」コボルトの青年が言った。
「お、お前たちに飯を食わせているのは誰だ! 言ってみろ!」
「好きで奴隷になったわけじゃないんだ、もう疲れた」と鳥獣人。
「これ、何故だ! この国ではわしが一番偉いんじゃ、言うことを聞かんか!」
「皆この子を羨ましがっているのさ、腹がこんなに膨れるくらい飯を食わせてもらっているからさ」
「何⁈ なら、わしはお前ら奴隷にももっと飯を食わせてやる! ほら誰か運んでこんかい?」
族長エネロの叫びは虚しく木霊した。そしてローズマリーは思いっきりエネロの顔にビンタを食らわせた。エネロは気絶した。
すると奴隷たちから歓声の声が上がった。皆気付いたのだ。このクソ爺は裸の王様だということを。
奴隷たちは皆エネロの食料やお金を分け合い、逃げていった。
ローズマリーは迷惑料として族長エネロが死ぬほど欲しがっていたリンデ小銀貨を1枚置いてギルを伴って飛空船に戻った。
「それでこのダニだらけの坊やを本気で育てる気かよ」エンデュミオンが呆れていた。
「仕方ないだろう、あのままあそこにいてもギルは働けないんだから……」
「お母さんって呼んで良いのか」ギルは猫耳の先端が欠けていた。話を聞くと以前夜中に寝小便を垂れ死ぬほど鞭で打たれた時の傷跡だそうだ。コイツがちゃんと生きていけるような場所を見つけるまでは、あたしはコイツの母ちゃんだ。
「良いぞ、好きに呼びな」
「マリーお母ちゃん!」ギルはダニだらけだったがローズマリーは気にせず抱き上げた獣人族で、8歳でこの体重かきっと奴隷たちのガス抜きに使われていたんだろう。あちこちに鞭の跡がついている。可哀想に思いローズマリーはギュッとギルを抱きしめた
「ローズマリーお客さんが来たわよ」セレーナが集まった獣人族を見て言った。
「どうしたお前たち? もう自由だろ」
「この恩は一生忘れません、ローズマリー様。私らにできるのはこれだけです」山ほどの魔法石が運ばれてきた。律義な奴らだなとローズマリーは思った。
「その代わりと言ったらなんなんですが……私らにも名前を付けてくれませんか?」コボルトの青年が言った。
ローズマリーは集まった数百人の獣人族に名前を付けていった。名づけは昼間から深夜に及んだ。
「じゃあな、ペコニャン! 達者でな」獣人たちには思いつく限りの名前を付けてやった。頭をフルスロットルで使ったローズマリーはぐったりとベッドで横になった。ギルは一緒に寝て良いかと聞いてきたから、良いぞと言ったらギルはまたローズマリーに抱きつき甘えてきた。
そして朝方ローズマリーは生れて初めて悲鳴を上げた。ギルが寝小便をし特攻服が小便まみれになってしまったからだ。
他の3人は青ざめギルを守るように囲んだ。あの特攻服に関してはデリケートに扱わないとキレるローズマリーだ。3人は命懸けでギルを守ろうと誓い合った。
しかしローズマリーは井戸の方へ行き石鹸で特攻服を洗うだけだった。しかもがっくりとして。
「ごめん、マリー母ちゃん。もう寝小便は垂れないから許して」
「良いぞ、寝小便くらいガキはするもんだ。ギルがもっと早く大人になれるように寝小便をしないおまじないをかけてやるからな」
「ふっ、まるで本当の母親のようだな……」ルーンベルトが冷や汗を拭きながら言った。
「ホントね、人間ってこんなに変わるものなのかしら」とセレーナ。
「いつまで続くか見ものだな」とエンデュミオン。
こうしてローズマリーは18歳ながら一児の母親になってしまった。
0
お気に入りに追加
8
あなたにおすすめの小説
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
愚かな父にサヨナラと《完結》
アーエル
ファンタジー
「フラン。お前の方が年上なのだから、妹のために我慢しなさい」
父の言葉は最後の一線を越えてしまった。
その言葉が、続く悲劇を招く結果となったけど・・・
悲劇の本当の始まりはもっと昔から。
言えることはただひとつ
私の幸せに貴方はいりません
✈他社にも同時公開
王太子さま、側室さまがご懐妊です
家紋武範
恋愛
王太子の第二夫人が子どもを宿した。
愛する彼女を妃としたい王太子。
本妻である第一夫人は政略結婚の醜女。
そして国を奪い女王として君臨するとの噂もある。
あやしき第一夫人をどうにかして廃したいのであった。
旦那様、どうやら御子がお出来になられたようですのね ~アラフォー妻はヤンデレ夫から逃げられない⁉
Hinaki
ファンタジー
「初めまして、私あなたの旦那様の子供を身籠りました」
華奢で可憐な若い女性が共もつけずに一人で訪れた。
彼女の名はサブリーナ。
エアルドレッド帝国四公の一角でもある由緒正しいプレイステッド公爵夫人ヴィヴィアンは余りの事に瞠目してしまうのと同時に彼女の心の奥底で何時かは……と覚悟をしていたのだ。
そうヴィヴィアンの愛する夫は艶やかな漆黒の髪に皇族だけが持つ緋色の瞳をした帝国内でも上位に入るイケメンである。
然もである。
公爵は28歳で青年と大人の色香を併せ持つ何とも微妙なお年頃。
一方妻のヴィヴィアンは取り立てて美人でもなく寧ろ家庭的でぽっちゃりさんな12歳年上の姉さん女房。
趣味は社交ではなく高位貴族にはあるまじき的なお料理だったりする。
そして十人が十人共に声を大にして言うだろう。
「まだまだ若き公爵に相応しいのは結婚をして早五年ともなるのに子も授からぬ年増な妻よりも、若くて可憐で華奢な、何より公爵の子を身籠っているサブリーナこそが相応しい」と。
ある夜遅くに帰ってきた夫の――――と言うよりも最近の夫婦だからこそわかる彼を纏う空気の変化と首筋にある赤の刻印に気づいた妻は、暫くして決意の上行動を起こすのだった。
拗らせ妻と+ヤンデレストーカー気質の夫とのあるお話です。
転生貴族のハーレムチート生活 【400万ポイント突破】
ゼクト
ファンタジー
ファンタジー大賞に応募中です。 ぜひ投票お願いします
ある日、神崎優斗は川でおぼれているおばあちゃんを助けようとして川の中にある岩にあたりおばあちゃんは助けられたが死んでしまったそれをたまたま地球を見ていた創造神が転生をさせてくれることになりいろいろな神の加護をもらい今貴族の子として転生するのであった
【不定期になると思います まだはじめたばかりなのでアドバイスなどどんどんコメントしてください。ノベルバ、小説家になろう、カクヨムにも同じ作品を投稿しているので、気が向いたら、そちらもお願いします。
累計400万ポイント突破しました。
応援ありがとうございます。】
ツイッター始めました→ゼクト @VEUu26CiB0OpjtL
異世界転生したらよくわからない騎士の家に生まれたので、とりあえず死なないように気をつけていたら無双してしまった件。
星の国のマジシャン
ファンタジー
引きこもりニート、40歳の俺が、皇帝に騎士として支える分家の貴族に転生。
そして魔法剣術学校の剣術科に通うことなるが、そこには波瀾万丈な物語が生まれる程の過酷な「必須科目」の数々が。
本家VS分家の「決闘」や、卒業と命を懸け必死で戦い抜く「魔物サバイバル」、さらには40年の弱男人生で味わったことのない甘酸っぱい青春群像劇やモテ期も…。
この世界を動かす、最大の敵にご注目ください!
天才女薬学者 聖徳晴子の異世界転生
西洋司
ファンタジー
妙齢の薬学者 聖徳晴子(せいとく・はるこ)は、絶世の美貌の持ち主だ。
彼女は思考の並列化作業を得意とする、いわゆる天才。
精力的にフィールドワークをこなし、ついにエリクサーの開発間際というところで、放火で殺されてしまった。
晴子は、権力者達から、その地位を脅かす存在、「敵」と見做されてしまったのだ。
死後、晴子は天界で女神様からこう提案された。
「あなたは生前7人分の活躍をしましたので、異世界行きのチケットが7枚もあるんですよ。もしよろしければ、一度に使い切ってみては如何ですか?」
晴子はその提案を受け容れ、異世界へと旅立った。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる