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【第4章理不尽賢者と魔導皇国グリムズガーデン】

【理不尽賢者と魔剣士Ⅰ】

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あたしは困り果てていた。ダチ公3人をカイザードラゴンのもとで修行の為に残し一人旅をしていた。『原初』なる存在がグリムズガデーデン皇国にいると分かり、新たに覚醒した【未来予知】なる能力を得て魔王をぶち殺す前に会わなければならないと分かったからだ。しかし、このグリムズガデーデン皇国は虹色が浮かぶ不思議な霧でなかなか入ることができなかったのだ。

魔法技術国オルケイアの最新鋭の高速飛空船には透明化できるという便利な機能があったのでグリムズガデーデン皇国に最も近い村アデンの村の近くの森に隠しておいた。



 アダンの村はそこそこ大きな村だった。もしかしたらグリムズガデーデン皇国に行くことも可能かもしれないと思い村長の家を訪ねた。



「旅のお方グリムズガデーデン皇国に行くのはやめなされ」

 村長はあたしの話を聞いたとたんにこやかな笑顔から悲痛な顔に一変した。

「あの国に入って出てきた者を私は見たことがありません。やめておいた方が良いと思います」

「どうしても入らなきゃいけないんだよ。おっちゃん、教えてくれよ?」

 村長はますます渋い顔になった。

「やれやれ仕方がない、この村の近くの大きな池の近くに小屋がたっています。そこに住んでる者ならば何か知っているかもしれません」

「あんがとな、おっちゃん」

「どうかご達者で」

「村長の言っていた池はこっちか……それにしてもモンスター1匹も見当たらないとはどういうことなのだろう?」

 なにやらありそうだなこの村にも……。

「何者だ。その覇気ただ者ではないな」突然森の木の上から剣士が現れた。念のため盗賊王のスキル【探知阻害】を使っていたのにバレた。この男のエルフの方もただの剣士ではないと思った。

「あたしは池のそばに住んでる奴に会いに行く途中なだけだよ」

「ならば話が速い。それは俺のことだ」

「あたしの名はローズマリーだ。一介のしがない魔法使いだ」

「大賢者ローズマリーとは貴様のことだろう?この村にまでその名声は届いている」

「え……そうなのか?ちなみにあんたの名前は?

「カーヴァインだ。人呼んで『魔剣士カーヴァイン』だ」

「魔剣士? 聞いたことがあるな、えーと確かノバクの街の図書館で読んだ童謡の中で……」

 カーヴァインはやれやれと言った感じで質問に答えた。

「『リラの調べ』だろう?」

「もしかして本人とか? ……なわけないかエルフの寿命は長くても700歳を超えないってセレーナが言ってたしな」

「いやそれは私のことだ……」えっ?嘘だろ?!

「じゃあシンダリア帝国ができて滅んでなお生きているのか?」

「私はエルフ族の始祖とヒュームの間にできた、古代のエルフ、『古エルフ族のハーフ』魔剣士カーヴァイン本人だ」

「信じられないな……証拠はあるのかよ」

「フッ!」

 目の前にいたはずのカーヴァイン本人が真後ろに一瞬で移動した。転移の秘魔法だ。間違いなくカーヴァイン本人だろう。

「これで納得してくれたかな?」

「あ……ああ、分かったよ」

「それにしてもこんな辺鄙なところで何やっているんだ?」

「時を待っている。グリムズガデーデン皇国へ入るには月の満ち欠けを見極める必要がある……」

「どういうこと?」

「貴様本当に大賢者本人なのか?」

「それは本当だけど……」

「グリムズガデーデン皇国に入るには特別な証が必要になる。例えば貴様が持っている杖などがそうだ。『原初』が欲するものが必要になるのだ。あとは入り方だが最初の街レベナに入るには新月の時ではないとこの村からは入れない。月の満ち欠けで街や都市の位置が変わるのだ」

「めんどくさい国なんだな」

「特にお前は『原初』から見られているようだった。ゆめゆめヤツに捕まるのだけは気を付けることだ」

「カーヴァイン、あんたもグリムズガデーデン皇国に行くんだろ、ならパーティーを組まないか?」

「そうだが何故そうなる? さっき会ったばかりだろう?」

「あたしは今ダチ公と別れて1人なんだ。グリムズガデーデン皇国について詳しい奴とパーティーを組みたい」

「なるほど……ただの阿呆かと思ったが違うようだな」

「じゃあオッケーってことで良いのか?」

「構わん」

「で、あと何日で月の満ち欠けは新月になるんだ?」

「今夜だ。月があるかどうかでモンスターの現れ方やどう猛さも変わってくる。冒険者ならそのくらいはわきまえておけ」

「ちなみに聞くがなんの用があってグリムズガデーデンのような国に行くのだ?」

「あたしのダチ公が王さまやってる国にちょっかい出してるのをやめさせるのと、国の主に会ってみたいんだよね」

「ふん、つまらん理由だな」



ローズマリーはムカッとした。こいつには大事なものはないのか? そう思い抗議の声を上げようとした時カーヴァインはふと儚げな顔をした。



「友人が先に死んでいくのは辛いからな……できれば貴様とも友人にはならずに済むと良い……」

カーヴァインは池のほとりの小屋に帰っていった。背中は寂しさを背負っているに見えたのは気のせいではないだろう。
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