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【プロローグ】

【狼図魔龍鰔VS悪琉棲斗露滅離悪】

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筑波山の峠に50台弱のバイクが集まっていた。あたしら狼図魔龍鰔ローズマリーと雌雄を決すべく集まった悪琉棲斗露滅離悪アルストロメリアの連中だ。あたしらは少し距離をとってバイクを停めた。



「あまりに来るのが遅いんで欠伸が出たよ」向こうのトップの新垣玲だ。あからさまな挑発に乗るあたしではない。

「あたしとタイマン張るのが怖くてビビっちまった奴が言うセリフかい?」

「ふんっ2ヶ月で成り上がったからって調子こくのもいい加減にしなよ」新垣玲は吸っていた煙草を捨てた。

「あんたら潰してあたしらは茨城制覇するのは変わらないけれどね」

「クソビッチが何が茨城制覇だ!あんたら下してあたしのチームが茨城ナンバー1になるのさ」

「はっ笑わせるね。あんたらがのさばっていたのはあたしらが潰した男どもの後ろ盾があったからだろ」

「く、糞が!早く勝負しなよ、ルールは簡単こっからあの崖までどっちが早く走れるかのドラックレースだよ」

「どうせなんか企んでいるんだろう?」

「じゃあ用意した単車を良く調べてみなよ。ガソリンまで同じ容量にしてあるんだから」

「分かった。じゃあ早く乗んなよ」あたしはケロリと言いダッサイ色の単車にまたがった。

「調べもしないのかい?」

「あんたらが何しようがあたしには勝てないさ」

「クレイジーだとは聞いたけれどまさかそこまで頭がおかしいとは思わなかったよ」ドン引きする相手の総長。

「あたしらは全国制覇するんだ。これくらいのクソ度胸がなかったらてっぺんなんて目指せないからね」

「あ、あ、あんたの度胸だけは見習うよ」相手の総長も単車にまたがった。



 これはチキンレースみたいなものだ。どこまでスピードを上げるか、どこでブレーキを踏むかで速さを競う。もしブレーキが利かなければ100メートル先の崖から落ちて終わりになる。



 ブーン、ブーンと二人ともエンジンを吹かした。公平な勝負ではないのは明らかだ。向こうのバイクはエンジンが改造されていると麻衣が教えてくれた。しかしそれくらいでビビるあたしではない。



「エンジンの調子はどうだい?」

「ふ、ふん。分かってるんだろう。こっちのエンジンの方が性能が良いのを」

「当たり前だ。あたしのチームの参謀は優秀だからね」

「それで勝つつもりかい?」

「これは最初から勝負は決まっていたのさ。あんたの選択ミスだよ。度胸がある奴が勝つ。最後までアクセルを踏んだままでいればエンジンの差が決定的な差ではないのがあんたにもわかるだろ」

「ふん、じゃあその通りに死ぬんだね。審判用意は?」

 こちらはもちろん死ぬ気はないギリギリでブレーキをかけるだけだ。

「オーケーです、玲の姐御」

「サクサク頑張れー」麻衣がまたあの名であたしを呼ぶ。まあ手でも振っておいてやるか……。勝ったら皆でカラオケパーティーだと決めてあるのだ。あたしには勝利の二文字しか見えなかった。



「それではスタートします。旗が上がったら発進してください」と悪琉棲斗露滅離悪アルストロメリアの審判が大声で叫ぶ。



「死に晒さらせクソビッチ」新垣玲が言うと共に旗が上がった。

 あたしは全力でアクセルを踏んだ。しかしおかしなことに新垣玲の姿が前に見えない。後ろを振り返るとスタート地点から全く動いていない。勝負を捨てたのか? いや、あの女狐がそんなことをするつもりがない。

 しかしゴールはもう目の前だ20メートルくらい手前でブレーキを踏んだ。しかしあたしの乗る単車はスピードが減速しない。その時先程のアイツの言葉が頭に浮かんだ「死に晒せ」なるほどつまり最初からあたしをはめる気満々だったわけだ。もうすぐ崖だ。飛び降りてもそのままの勢いで崖に落ちてしまうだろう。ならば最後まで「アクセルを踏み続けるだけ。これであたしらローズマリーは茨城のてっぺんだ



「気を付けてね」お母さんの顔が浮かんだ。できれば生きてまたお母さんの顔が見たい。でもそれは無理そうだ。錆びついたガードレールを突き破りあたしと乗っていた単車は空を舞った。
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