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【第2章 理不尽賢者ローズマリーとリガイア共和国】
【理不尽賢者と麦畑Ⅰ】
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ローズマリーたちはリガイア共和国の南東部のノバクの街に来ていた。西の方に防風林がありその奥にかなり広い麦畑がある。西の大塩湖からの潮風で土地に塩害が生じ作物が育ちにくいせいで貧困にあえぐ国、それがこの国の現状だった。当然治安は悪い。貧困は人の心を容赦なくむしばむ。だがこの国はオルトリンという顔を除いて優秀な独裁者によって治安が維持されている。だから首都では犯罪者は1人もいなかった。しかしもらった地図通りに南に行けば行くほど治安が悪くなった。
油断してなかったローズマリーでさえ子供に財布を盗まれそうになったくらいだ。ちなみにその子供にはキツイ拳骨と少々の金を渡し、真っ当に生きろと説教をしてやった。
そのぐらいこの国は貧しいのだ。宿屋も外国人だと分かると一泊大銀貨一枚とか言いう法外な値段にするくらいだ。まあ値段の交渉は今まで数々の修羅場を乗り越えてきたローズマリーなので通常の賃金より多少高め位まで恫喝し値段を下げさせたが。
そういう、こちらまで心が荒む旅をしながらノバクの街に着いたら、そこはリンデンハイム王国のような明るい治安の良い町だったのでついつい長逗留してしまった。
「あーこの街を出たらまた人間不信になりそうな旅に逆戻りか……」エンデュミオンがぼやく。
「ホントによくこの国は崩壊しないで済んでるよな」
「貧乏過ぎて一揆や反乱を起こす力が国民にないのでしょうね」と、うちのパーティの常識人セレーナがお茶を飲みながら言った。
「……貧しさとは辛いものなのだな……」いつも優雅に振舞っているルーンベルトが貧困の悲しさに共感し落ち込んでいる。
「お客さん達リガイアの国の人ではないようですな」宿屋の主人が客室に荷物を運びつつ話しかけてきた。
「あたしたちはリンデンハイム王国からやってきたんだよ」
「ほう、だから身なりもよろしいのですな。ちなみにリガイアには何をされに来たのですか?」
「オルケイアとか言う国に行きたいんだよ」
「あーじゃあこの国をあと数週間は通らないと徒歩では出られませんな。治安が悪くて気が滅入ったでしょう」
「半端なくね……」
「ところでお客さん方は腕は立つ方ですか? 少し旅の話を聞きたいのです」少し真面目な顔になった。
これまでの旅の話をすると宿屋のオヤジは興奮し始めた。なんだか厄介ごとに巻き込まれそうだなとローズマリーの勘が働いた。だがローズマリーは元の世界でも仁義に厚い人間だった。なので話を最後まで聞くことにした。
「この街は首都シュナイアに良質な麦を供給する産地の一つなのです」
「蝗にでも困っているならあたしの魔法一発で解決できるよ」
「ほお、それは凄い。しかし困っているのはそこではないのです」
「近年、よその国からやってきた傭兵崩れの盗賊団に悩まされているのです」
「やり手のオルトリンのことだから警備は厚くしているんだろう?」
「それがそうもいかないのです。これは聞かなかったことにして欲しいのですが、オルトリン執政官は都での警護を厚くするあまり地方の守りが手薄になっておりまして……100人を超える盗賊団に為す術がないのです。連中がどこをねぐらにしているかも分からないのでこの街の領主様も頭を抱えている状態らしいのです」
「まあそれならこの街は完全にカモにされるよな」とエンデュミオン。
「……この国は酷過ぎる……」そして更にトーンダウンするルーンベルト。
「私たちでできることがあるなら協力してあげた方が良いのじゃないかしらローズマリー」とセレーナ。
無論だ。全ての元凶はあの不細工オルトリンだがこの街の人々には罪はない。助けなくて何が仁義だ。ローズマリーは元居た世界の狼図魔龍鰔ローズマリーで、悪逆非道な暴走族を蹴散らしていた時の感覚になっていた。
油断してなかったローズマリーでさえ子供に財布を盗まれそうになったくらいだ。ちなみにその子供にはキツイ拳骨と少々の金を渡し、真っ当に生きろと説教をしてやった。
そのぐらいこの国は貧しいのだ。宿屋も外国人だと分かると一泊大銀貨一枚とか言いう法外な値段にするくらいだ。まあ値段の交渉は今まで数々の修羅場を乗り越えてきたローズマリーなので通常の賃金より多少高め位まで恫喝し値段を下げさせたが。
そういう、こちらまで心が荒む旅をしながらノバクの街に着いたら、そこはリンデンハイム王国のような明るい治安の良い町だったのでついつい長逗留してしまった。
「あーこの街を出たらまた人間不信になりそうな旅に逆戻りか……」エンデュミオンがぼやく。
「ホントによくこの国は崩壊しないで済んでるよな」
「貧乏過ぎて一揆や反乱を起こす力が国民にないのでしょうね」と、うちのパーティの常識人セレーナがお茶を飲みながら言った。
「……貧しさとは辛いものなのだな……」いつも優雅に振舞っているルーンベルトが貧困の悲しさに共感し落ち込んでいる。
「お客さん達リガイアの国の人ではないようですな」宿屋の主人が客室に荷物を運びつつ話しかけてきた。
「あたしたちはリンデンハイム王国からやってきたんだよ」
「ほう、だから身なりもよろしいのですな。ちなみにリガイアには何をされに来たのですか?」
「オルケイアとか言う国に行きたいんだよ」
「あーじゃあこの国をあと数週間は通らないと徒歩では出られませんな。治安が悪くて気が滅入ったでしょう」
「半端なくね……」
「ところでお客さん方は腕は立つ方ですか? 少し旅の話を聞きたいのです」少し真面目な顔になった。
これまでの旅の話をすると宿屋のオヤジは興奮し始めた。なんだか厄介ごとに巻き込まれそうだなとローズマリーの勘が働いた。だがローズマリーは元の世界でも仁義に厚い人間だった。なので話を最後まで聞くことにした。
「この街は首都シュナイアに良質な麦を供給する産地の一つなのです」
「蝗にでも困っているならあたしの魔法一発で解決できるよ」
「ほお、それは凄い。しかし困っているのはそこではないのです」
「近年、よその国からやってきた傭兵崩れの盗賊団に悩まされているのです」
「やり手のオルトリンのことだから警備は厚くしているんだろう?」
「それがそうもいかないのです。これは聞かなかったことにして欲しいのですが、オルトリン執政官は都での警護を厚くするあまり地方の守りが手薄になっておりまして……100人を超える盗賊団に為す術がないのです。連中がどこをねぐらにしているかも分からないのでこの街の領主様も頭を抱えている状態らしいのです」
「まあそれならこの街は完全にカモにされるよな」とエンデュミオン。
「……この国は酷過ぎる……」そして更にトーンダウンするルーンベルト。
「私たちでできることがあるなら協力してあげた方が良いのじゃないかしらローズマリー」とセレーナ。
無論だ。全ての元凶はあの不細工オルトリンだがこの街の人々には罪はない。助けなくて何が仁義だ。ローズマリーは元居た世界の狼図魔龍鰔ローズマリーで、悪逆非道な暴走族を蹴散らしていた時の感覚になっていた。
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