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第一章 日常ラブコメ編

第11話 私は、彼以外の誰も好きにならない

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 退屈とはまでは行かないまでも、日曜日はそれなりに楽しかった。彼女と一緒に人生ゲームをやって。普段は「つまらない」と感じるゲームも、彼女と一緒なら楽しく感じられた。
 彼女はゲームの中で……ある意味律儀なのか、生涯独身を貫いた。学校は大学まで卒業、就職も結構良い職種に就いたのに。結婚にだけは、一ミリも興味を示さなかった。「あなた以外の男に興味はない」と。
 彼女は財産(不動産、資産などを含む)、スキル、モラル等を最大にしながら(恋愛に関しては、ドベだったけど)、堂々の一位を取った。
 
 彼女は、その結果に微笑んだ。

「現実の人生では、あなたと一緒になりたい」

 俺は、その言葉に押し黙った。こうもストレートに言われると、恥ずかしさよりも、気まずさが勝ってしまう。「それにどう応えれば、良いのか?」と。彼女の好意は素直に嬉しかったが、それにうなずく勇気は(「俺と一緒に生きてよ」とか言ったくせに)、どうしても持てなかった。

 左の頬をポリポリと掻く。
 
 俺は月曜日になっても……はないか。月曜日の朝は、憂鬱だったし。学校の制服に着替えて、家の玄関から出て行く時も、それを見送る母ちゃんに何故か苦笑してしまった。
 
 俺は庭の自転車に跨がり、いつもの学校に向かって進みはじめた。俺の通う学校もとへ、公立高校は、俺の家から出発して、いくつもの道路を渡った先にあるが……校門の前には、服装検査と称して、風紀委員の奴らが立っている。
 
 風紀委員の奴らは(全員ではないものの)、その大半が堅物だ。髪型が崩れているだけでも、「なに、その髪型は? さっさと直して来なさい」と怒るし。
 その髪型が崩れていなくても、そいつらの前であくびをしただけで、「だらしない!」と叱られてしまう。まったく以て厄介な連中だ。
 かくいう俺も……何故か、風紀委員長の神崎かんざき宇美うみに目を付けられているが。その神崎宇美に何度も怒られていた。
「はぁ」と、溜め息が漏れる。本当は、漏らすつもりなんてなかったのに。学校の校門を潜ろうとした瞬間、例の神崎宇美に「時任君!」と呼び止められてしまったからだ。

 憂鬱な顔で、彼女の方に目をやる。
 
 俺は、彼女の顔に溜め息をついた。

「何だよ?」
 
 の言い方が気に入らなかったのか。普段よりも厳しめに、「『何だよ』じゃない」と言い返してきた。

「今日もだらしない顔で。そんなじゃ」

「はいはい。『学校の風紀が乱れる』ってね。俺が悪るぅございました」

 神崎の顔が赤く、なっちまった。不味い! こいつは、怒りが爆発する前兆だ。神崎の身体もプルプル震えている。

 俺は彼女に「ごめん」と謝り、その場から一目散に逃げ出した。「あっ! こら、待ちなさい!」の声を無視して。
 まったく! あんな性格じゃなきゃ、十分可愛いのに。あのサラサラの髪(優等生っぽいショートカット)も、少しキツメの目つきも。
 男子達の間では、彼女を愛するファンクラブなるものも存在した。
 
 俺は昇降口の中に入ると、学校の上履きに履き替えて、自分の教室に向かった。教室の中には、いつものメンバーが集まっていた。男子と女子が丁度、半々になるように。男子のグループは、教室の後ろに集まっていた。
 
 俺はそれらのグループに挨拶しつつ、自分の席に行って、鞄の中から教科書類を取り出し、机の中に教科書類を仕舞い入れた。それに合わせて、俺の仲間達が「おはよう、時任君」と話し掛けてきた。妙に嫌らしい声で。
 
 俺は、その声に違和感を覚えた。

「お、おう。おはよう」

 仲間の顔が、さらに怪しくなった。仲間達は俺の横腹を殴ったり、その肩に腕を回したりした。

「彼女とのデートは、楽しかったかい? と、き、と、う、君」

「ふぇ?」

 の声に動揺したのは、言うまでもない。

「彼女とのデート?」

 仲間達はまた、俺の身体を殴った。

「誤魔化すんじゃねぇよ」

「こっちには、ちゃんと証拠があるんだぜ?」

 彼らは「ニヤリ」と笑って、俺にスマホの画像を見せた。
 スマホの画像には……いつの間に撮ったのだろう? 俺とラミアが写っていた。町の服屋に並ぶ俺達が。
 
 俺は、その写真に固まった。

「親戚の子、だよ。こっちに遊びに来たから」

「ん? 一緒に服屋に行ったのか?」

「ああ」の声が裏返ってしまった。「『服を買いたいから』って。その子とは、昔から仲が良かったからさ」

「ふうん」と、明らかに信じていないご様子。「そっか。ならさ」

「何だよ」

「その子の事、紹介してよ」

「え?」

「嫌」の声が聞こえた。

 俺は、その声に驚いたが……気づいた時にはもう、鞄の中から彼女が飛び出していた。
 
 彼女は俺達の周りを飛び回り(教室の全員が、驚いている)、適当な場所で人間の姿になった。

「私は、彼以外の誰も好きにならない」

 仲間達は、その言葉に絶句した。
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