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「お前、ちょっと来い」
健斗の腕を引っ張り、アパートまでの帰り道を急ぐ。
道の真ん中で健斗から告白されるとか……場所を考えろと言いたい。周りの人から注目を浴びていて、顔から火が出そうだった。
とりあえず、俺の部屋まで引っ張ってきて、二人きりになったところでやっと口を開いた。
「あんな場所で言うことじゃないだろ」
「ごめん」
項垂れて謝罪する健斗は、かわいそうなほど落ち込んでいる。
俺は深いため息をついて額に手を当てる。
さきほどは人に見られていたから、健斗のことより先に立ち去るほうを選んだが、どうして告白まで思い至ったのか……どうして俺を好きなのか、疑問がわく。
ただ、そんなことを訊いたところで、俺はどうしたらいいのかわからなかった。
だから、逆に訊いた。
「で、お前はどうしたいんだよ」
「一緒にいたい」
弱々しい声に、俺は言い返した。
「今はたいてい一緒にいるじゃん。夕飯、俺がバイトの日以外ほぼ、お前の部屋で食ってるし」
大きく首を横に振った健斗は思い切ったように言う。
「触れたい」
具体的に明言した健斗に少し考えてから問う。
「……キスとかセックスしたいってこと?」
「そ……んなこと……じゃなくて、特別になりたい」
顔を赤らめて途端に言いよどんだ健斗は、またぼんやりとした言い方をする。
「特別……特別なあ……」
キスとかセックス以外具体的なことが考えつかずに、俺は手に持っていた買って来たものを片付けることにした。健斗は突っ立ったまま、そんな俺の様子を下から窺うように見ている。
「星矢くんは……俺のことどう思う?」
「友達。隣人」
きっぱりと告げると、健斗はあからさまにがっかりと肩を落とした。当たり前だ。今まで健斗を恋愛対象に見たことがない。男同士の恋愛にも偏見はないが、自分がその対象になるとは思わなかった。
「気持ち悪くは……ない?」
「お前のこと? それはないけど……まあ、驚くよな」
相手が健斗ということもあるが、不思議と嫌いになったり、友達付き合いをやめたいとは考えない。
「じゃあデートしたい。手をつなぎたい」
急に攻めてきた健斗に、ここまで強気で言うのも珍しいと感心する。
「この間、映画観て買い物したじゃん。それじゃだめなのかよ」
「ん」
大きく何度も真剣に頷く健斗に、俺は呆れた声をあげつつ、承諾した。
「……わかった。いつがいい?」
「やった!」
健斗はがばっと抱き付いてきた。無邪気に喜ぶ健斗に苦笑しつつ、こんなに喜んでくれるなら別にデートくらいいいかという気になる。
なぜか健斗に頼られたりお願いされたら嫌とは言えない。それで納得して喜んでくれるならと、俺はあまり深く考えずに、健斗の高鳴る鼓動を感じていた。
健斗の腕を引っ張り、アパートまでの帰り道を急ぐ。
道の真ん中で健斗から告白されるとか……場所を考えろと言いたい。周りの人から注目を浴びていて、顔から火が出そうだった。
とりあえず、俺の部屋まで引っ張ってきて、二人きりになったところでやっと口を開いた。
「あんな場所で言うことじゃないだろ」
「ごめん」
項垂れて謝罪する健斗は、かわいそうなほど落ち込んでいる。
俺は深いため息をついて額に手を当てる。
さきほどは人に見られていたから、健斗のことより先に立ち去るほうを選んだが、どうして告白まで思い至ったのか……どうして俺を好きなのか、疑問がわく。
ただ、そんなことを訊いたところで、俺はどうしたらいいのかわからなかった。
だから、逆に訊いた。
「で、お前はどうしたいんだよ」
「一緒にいたい」
弱々しい声に、俺は言い返した。
「今はたいてい一緒にいるじゃん。夕飯、俺がバイトの日以外ほぼ、お前の部屋で食ってるし」
大きく首を横に振った健斗は思い切ったように言う。
「触れたい」
具体的に明言した健斗に少し考えてから問う。
「……キスとかセックスしたいってこと?」
「そ……んなこと……じゃなくて、特別になりたい」
顔を赤らめて途端に言いよどんだ健斗は、またぼんやりとした言い方をする。
「特別……特別なあ……」
キスとかセックス以外具体的なことが考えつかずに、俺は手に持っていた買って来たものを片付けることにした。健斗は突っ立ったまま、そんな俺の様子を下から窺うように見ている。
「星矢くんは……俺のことどう思う?」
「友達。隣人」
きっぱりと告げると、健斗はあからさまにがっかりと肩を落とした。当たり前だ。今まで健斗を恋愛対象に見たことがない。男同士の恋愛にも偏見はないが、自分がその対象になるとは思わなかった。
「気持ち悪くは……ない?」
「お前のこと? それはないけど……まあ、驚くよな」
相手が健斗ということもあるが、不思議と嫌いになったり、友達付き合いをやめたいとは考えない。
「じゃあデートしたい。手をつなぎたい」
急に攻めてきた健斗に、ここまで強気で言うのも珍しいと感心する。
「この間、映画観て買い物したじゃん。それじゃだめなのかよ」
「ん」
大きく何度も真剣に頷く健斗に、俺は呆れた声をあげつつ、承諾した。
「……わかった。いつがいい?」
「やった!」
健斗はがばっと抱き付いてきた。無邪気に喜ぶ健斗に苦笑しつつ、こんなに喜んでくれるなら別にデートくらいいいかという気になる。
なぜか健斗に頼られたりお願いされたら嫌とは言えない。それで納得して喜んでくれるならと、俺はあまり深く考えずに、健斗の高鳴る鼓動を感じていた。
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