拗らせリアコネクト

山吹レイ

文字の大きさ
上 下
19 / 27

19

しおりを挟む
「お前、ちょっと来い」
 健斗の腕を引っ張り、アパートまでの帰り道を急ぐ。
 道の真ん中で健斗から告白されるとか……場所を考えろと言いたい。周りの人から注目を浴びていて、顔から火が出そうだった。
 とりあえず、俺の部屋まで引っ張ってきて、二人きりになったところでやっと口を開いた。
「あんな場所で言うことじゃないだろ」
「ごめん」
 項垂れて謝罪する健斗は、かわいそうなほど落ち込んでいる。
 俺は深いため息をついて額に手を当てる。
 さきほどは人に見られていたから、健斗のことより先に立ち去るほうを選んだが、どうして告白まで思い至ったのか……どうして俺を好きなのか、疑問がわく。
 ただ、そんなことを訊いたところで、俺はどうしたらいいのかわからなかった。
 だから、逆に訊いた。
「で、お前はどうしたいんだよ」
「一緒にいたい」
 弱々しい声に、俺は言い返した。
「今はたいてい一緒にいるじゃん。夕飯、俺がバイトの日以外ほぼ、お前の部屋で食ってるし」
 大きく首を横に振った健斗は思い切ったように言う。
「触れたい」
 具体的に明言した健斗に少し考えてから問う。
「……キスとかセックスしたいってこと?」
「そ……んなこと……じゃなくて、特別になりたい」
 顔を赤らめて途端に言いよどんだ健斗は、またぼんやりとした言い方をする。
「特別……特別なあ……」
 キスとかセックス以外具体的なことが考えつかずに、俺は手に持っていた買って来たものを片付けることにした。健斗は突っ立ったまま、そんな俺の様子を下から窺うように見ている。
「星矢くんは……俺のことどう思う?」
「友達。隣人」
 きっぱりと告げると、健斗はあからさまにがっかりと肩を落とした。当たり前だ。今まで健斗を恋愛対象に見たことがない。男同士の恋愛にも偏見はないが、自分がその対象になるとは思わなかった。
「気持ち悪くは……ない?」
「お前のこと? それはないけど……まあ、驚くよな」
 相手が健斗ということもあるが、不思議と嫌いになったり、友達付き合いをやめたいとは考えない。
「じゃあデートしたい。手をつなぎたい」
 急に攻めてきた健斗に、ここまで強気で言うのも珍しいと感心する。
「この間、映画観て買い物したじゃん。それじゃだめなのかよ」
「ん」
 大きく何度も真剣に頷く健斗に、俺は呆れた声をあげつつ、承諾した。
「……わかった。いつがいい?」
「やった!」
 健斗はがばっと抱き付いてきた。無邪気に喜ぶ健斗に苦笑しつつ、こんなに喜んでくれるなら別にデートくらいいいかという気になる。
 なぜか健斗に頼られたりお願いされたら嫌とは言えない。それで納得して喜んでくれるならと、俺はあまり深く考えずに、健斗の高鳴る鼓動を感じていた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

鬼上司と秘密の同居

なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳 幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ… そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた… いったい?…どうして?…こうなった? 「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」 スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか… 性描写には※を付けております。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

病気になって芸能界から消えたアイドル。退院し、復学先の高校には昔の仕事仲間が居たけれど、彼女は俺だと気付かない

月島日向
ライト文芸
俺、日生遼、本名、竹中祐は2年前に病に倒れた。 人気絶頂だった『Cherry’s』のリーダーをやめた。 2年間の闘病生活に一区切りし、久しぶりに高校に通うことになった。けど、誰も俺の事を元アイドルだとは思わない。薬で細くなった手足。そんな細身の体にアンバランスなムーンフェイス(薬の副作用で顔だけが大きくなる事) 。 誰も俺に気付いてはくれない。そう。 2年間、連絡をくれ続け、俺が無視してきた彼女さえも。 もう、全部どうでもよく感じた。

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

家事代行サービスにdomの溺愛は必要ありません!

灯璃
BL
家事代行サービスで働く鏑木(かぶらぎ) 慧(けい)はある日、高級マンションの一室に仕事に向かった。だが、住人の男性は入る事すら拒否し、何故かなかなか中に入れてくれない。 何度かの押し問答の後、なんとか慧は中に入れてもらえる事になった。だが、男性からは冷たくオレの部屋には入るなと言われてしまう。 仕方ないと気にせず仕事をし、気が重いまま次の日も訪れると、昨日とは打って変わって男性、秋水(しゅうすい) 龍士郎(りゅうしろう)は慧の料理を褒めた。 思ったより悪い人ではないのかもと慧が思った時、彼がdom、支配する側の人間だという事に気づいてしまう。subである慧は彼と一定の距離を置こうとするがーー。 みたいな、ゆるいdom/subユニバース。ふんわり過ぎてdom/subユニバースにする必要あったのかとか疑問に思ってはいけない。 ※完結しました!ありがとうございました!

平凡なSubの俺はスパダリDomに愛されて幸せです

おもち
BL
スパダリDom(いつもの)× 平凡Sub(いつもの) BDSM要素はほぼ無し。 甘やかすのが好きなDomが好きなので、安定にイチャイチャ溺愛しています。 順次スケベパートも追加していきます

鬼ごっこ

ハタセ
BL
年下からのイジメにより精神が摩耗していく年上平凡受けと そんな平凡を歪んだ愛情で追いかける年下攻めのお話です。

見ぃつけた。

茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは… 他サイトにも公開しています

処理中です...