11 / 40
予想外の出来事
しおりを挟む
タクシーから降りると、ちょうど反対側の車線にタクシーが停まり、そこから為純が降りてくる。目が合ったので軽く手をあげる。為純も手を振り返した。
左右を確認しつつ横断歩道を渡り、為純と合流する。
今日の為純は、髪をお団子風に結い上げてうなじをすっきりさせている。それに半袖のシャツにスニーカーという随分ラフな格好だ。
「ちょうどいいタイミングだった」
「店はすぐそこだ」
為純は、外で会ってもマスクや帽子といった変装の類はしない。変装するとかえって目立つため日中でもあまりしないそうだ。俺も夜はほとんどしないが、日中メンバーと移動中はマスクをする場合もある。
隣に並ぶ為純をちらちら見ていると、何? と目線で問いかけられる。
言うのも癪なので、無言で目を逸らすが、為純は俺の行動などお見通しだった。
「本当に俺の顔が好きなんだな」
ふっと噴き出した為純に、思わず言い返そうとして隣を見上げた瞬間、不意をつかれて言葉が出なくなる。嫌味や皮肉でもなく、声を出しておかしそうに笑っている。最近よくこんな表情をして笑うようになった。それに今日はどことなく機嫌がよく感じる。
「それとも髪の長い男が好きなのか?」
茶化した言葉も今は嫌味に聞こえない。否定しても肯定しても、揶揄われそうだと感じた俺はやけくそに「どっちもだよ」とかみついた。
まさか、そんなふうに返されるとは思ってもみなかったのか、表情が固まり、次の瞬間、もっと大きな笑い声をあげる。
「一緒にいて飽きないよ」
「あ、そう」
二人で店に入ったが、今日は珍しく居酒屋だ。
はじめて待ち合わせして食事をした場所がフランス料理店で、それほど堅苦しくないと為純は言ったが、ネクタイをしていなかったとはいえシャツにジャケットと革靴のインフォーマルな格好で行った俺は正解だったと思えるような店だった。
個室ではあったが、正直、普通の家庭で育った俺には馴染みのない場所過ぎて気後れしてしまった。食事も美味しいのか味がわからず、終始落ち着かない様子で畏まっていた俺を為純はそれなりに気にかけていたのだろう。
それ以来、もっとカジュアルな店を指定してくれるようになったので、ほっとしているが、居酒屋ははじめてだった。
部屋を案内してくれた女性は、為純をさりげなく見ている。俺なんかは目に入らないのか、話しかけるときも為純だけだ。奴の存在が際立って輝いて見えるので、誰が側にいても素通りしてしまうのは仕方がないことだった。
向かい合って座り、酒類を飲めない俺はウーロン茶で、あまり酔わないと言っていた為純も今では同じものを頼んで乾杯する。
お通しのナムルとおひたしを食べながら、最近の仕事の様子を互いに話しはじめる。そこで機嫌がいい理由を訊いてみた。
「解禁前だから詳しくは言えないが、大きな仕事が決まった」
喋る口元が綻んでいる。喜びを隠せない様子で喋る姿に、珍しいと思いながらどんな仕事だろうと考えを巡らせる。
「今だってどれも大きい仕事に見えるけど、それよりも大きいもの?」
「ああ。やりたかったことだ」
こう見えて、為純は仕事に対してかなりストイックだ。探求心が高く、その役のためならば、どんなことでも学ぼうとする姿勢が話の中から垣間見えることがあった。
「そうなんだ。おめでとう」
「そっちも新曲が出るんだって?」
まさか俺のスケジュールも知っていると思わなくて驚いた。
「よく知ってるな」
そこで俺はカバンからCDを取り出してテーブルに置く。
「もし、よかったらこれ。プロモーション用のサンプル品だけど」
渡すために持っていたわけではなかったが、話の流れから鞄に入っていたことを思い出したのだ。
今は曲を動画やサブスクリプションなどで聴く人も多く、CD自体売れない。だからあまり喜ばないだろうなと思っていたら、意外にも為純はCDを手に取り、興味津々にジャケットを眺めている。
「ありがとう。聴かせてもらう」
礼を言われ、こそばゆさを覚えながら頷く。
料理が運ばれてきたのでそれらを摘まみながら、最近あった出来事を話した。
「この間、また訊かれた。いい加減もういいんじゃないか」
何が、などと言わなくても二人の間では通じる。
「話題がないんだろ。それか、いつまで経っても初々しい反応するから、面白半分に訊かれてるとか?」
「だって……慣れないんだよ」
「お前は役者に向かないかもしれないな」
余裕綽々な態度でそう言うので面白くない。為純はいつだって俺たちのことを訊かれてもスマートに答える。口ごもったりおたおたしない。かたや俺はぼろぼろだ。訊かれると想定して構えていても、いざ訊かれると、余裕がなくなって頭がパニックになる。いつも散々で、メンバーからは生暖かい目で見られている。
「そういえば、アナウンサーから恋人とデートするならどんなシチュエーションがいいか訊かれて、しどろもどろになって答えてたな」
テレビ出演したのを見られていたらしい。不意打ちのように突然訊かれた質問に、かなりテンパって思いつきそうなものを手あたり次第適当に喋ったが、あんな恥ずかしい場を見られていたなんて最悪だ。
「ドライブで夜景とか、一緒に流れ星を見るとか? 夕焼けを見ながら浜辺を歩くとか? 随分ロマンチックなんだなって思ったよ」
「それは……もういい。もう言うな」
恥ずかしさのあまり手で覆って顔を隠す。
「今度からは食事だけじゃなくて、それも候補に入れておこうか?」
いらない、と言い返しそうになって、疑問に思ったので訊く。
「もしかして車持ってる?」
「持ってる」
やっぱりと思ってはいけない。為純はたいがいなんでも持ってるし、なんでもできる。
こうして穏やかに会話が進み、一時間ほどで食事を終えた。
為純にトイレに行ってきてほしいと強引に背中を押して、その隙に会計をする。
いつも為純が支払ってくれたので申し訳なく思っていた。せめて割り勘にしようと提案したが、面倒くさいと却下され、俺が予約したんだから払うと言われてしまえば、もう口の出しようがなく「ごちそうさまでした」と頭を下げるしかない。それでも隙を狙って……というか無理やり割りこんだり、トイレに行ってもらったりして、数回に一回は支払うようにしていた。為純曰く「大人しく奢られろ」らしいが、いつだって対等でありたい。
この業界、大御所の人や上役、それから同じ事務所の先輩など、一緒に食事をする機会も多い。そのときは素直に奢ってもらうが、為純となるとやっぱり張り合ってしまう。それを負けず嫌いと言うんだ、と為純に指摘されても、なんか認めたくない。
会計が終わっても為純はなかなかトイレから帰ってこない。遅いなと待っていると、店の奥のほうから悲鳴があがった。何かあったのかと慌てて向かえば、為純がトイレの前で鼻を押えて蹲っている。
顔を上気させた女性が、縋るように為純の側にいたことから、彼女はオメガでしかも発情していると察した。
バースハラスメントという言葉が生まれた頃に、もう一つバース性に関する言葉が有名になった。
ヒートテロだ。
発情期であるオメガが公共の場で故意にフェロモンを振りまき、特定のアルファ、もしくは不特定のアルファを誘惑させることを言う。アルファは発情期のフェロモンに抗えない。オメガのフェロモンを悪用したその行為から、テロリストと同じように扱われている。過去に、片思いだったアルファと既成事実を作ろうとしたオメガが逮捕されたこともあった。
今の場合はどういう状況かわからないが、一刻も早く為純を彼女から遠ざける必要がある。
素早く駆け寄り、俺は着ていた薄手のシャツを脱いで、為純の鼻に押しつけた。フェロモンを遮断すれば多少はよくなる。とにかく離れることが優先だ。店の人もいたので女性を任せて、為純に肩を貸して立ち上がらせる。俺たちは慌てて店を出て、しばらく歩き、人気のない暗がりに座りこんだ。
「大丈夫か?」
咳きこんでいる背中を撫でながら訊くと、為純は頷いたが、発情に当てられたせいで息が荒く目が血走っている。為純がアルファだと確定した瞬間だった。
「お前は大丈夫なのか?」
訊かれて、はっとする。為純は俺をアルファだと思っていたのだ。
曖昧に頷くと、為純は何か言っていたが、再び咳きこんだので言葉は聞き取れない。
俺は顔をあげて自動販売機を探した。遠くでそれらしき明かりが見えたので、走って行きペットボトルの水を買って戻る。飲み口を開けて、為純の前に差し出した。
震える手で受け取り、口から溢れるくらいの勢いで水を飲み、乱暴に口元を拭うと、為純は吐き捨てるように呟いた。
「くっそ……これだからオメガは嫌いなんだ」
一気に血の気が引いた。
為純にオメガだと自分から明かすつもりはなかったが、ばれたらそのときはちゃんと説明するつもりだった。だが、オメガを嫌いと口にする為純に、その甘い考えは瞬時に霧散する。
決してばれたらいけない。ばれたら嫌われてしまう。
面倒だと思いつつも、気が重いと言いつつも、為純に会えばなんだかんだ気を許してしまう……そんな気のゆるみを見透かしているような出来事だった。
為純とはいつか別れる。でも今じゃない。まだ続いている。このままの関係を続けるなら、隠し続けなければならない。
背中を撫で続けていると、徐々に呼吸が落ちついてくる。
「タクシーで帰れそう?」
できれば一緒に乗って送って行きたいところだが、この状態のアルファの側にずっといるのもよくない気がする。
「ああ、悪かった」
立ち上がった為純は少しふらついていたが歩ける。そのことにほっとして俺はタクシーを止めて、為純を乗せる。
「また今度連絡する」
いつもは為純から言うセリフを俺から告げた。為純が頷いたのを確認してタクシーから離れる。
ドアが閉まり、為純を乗せたタクシーが瞬く間に走り去っていく。
俺はその姿を見送り、これからどうやって隠していくか頭を悩ませた。
左右を確認しつつ横断歩道を渡り、為純と合流する。
今日の為純は、髪をお団子風に結い上げてうなじをすっきりさせている。それに半袖のシャツにスニーカーという随分ラフな格好だ。
「ちょうどいいタイミングだった」
「店はすぐそこだ」
為純は、外で会ってもマスクや帽子といった変装の類はしない。変装するとかえって目立つため日中でもあまりしないそうだ。俺も夜はほとんどしないが、日中メンバーと移動中はマスクをする場合もある。
隣に並ぶ為純をちらちら見ていると、何? と目線で問いかけられる。
言うのも癪なので、無言で目を逸らすが、為純は俺の行動などお見通しだった。
「本当に俺の顔が好きなんだな」
ふっと噴き出した為純に、思わず言い返そうとして隣を見上げた瞬間、不意をつかれて言葉が出なくなる。嫌味や皮肉でもなく、声を出しておかしそうに笑っている。最近よくこんな表情をして笑うようになった。それに今日はどことなく機嫌がよく感じる。
「それとも髪の長い男が好きなのか?」
茶化した言葉も今は嫌味に聞こえない。否定しても肯定しても、揶揄われそうだと感じた俺はやけくそに「どっちもだよ」とかみついた。
まさか、そんなふうに返されるとは思ってもみなかったのか、表情が固まり、次の瞬間、もっと大きな笑い声をあげる。
「一緒にいて飽きないよ」
「あ、そう」
二人で店に入ったが、今日は珍しく居酒屋だ。
はじめて待ち合わせして食事をした場所がフランス料理店で、それほど堅苦しくないと為純は言ったが、ネクタイをしていなかったとはいえシャツにジャケットと革靴のインフォーマルな格好で行った俺は正解だったと思えるような店だった。
個室ではあったが、正直、普通の家庭で育った俺には馴染みのない場所過ぎて気後れしてしまった。食事も美味しいのか味がわからず、終始落ち着かない様子で畏まっていた俺を為純はそれなりに気にかけていたのだろう。
それ以来、もっとカジュアルな店を指定してくれるようになったので、ほっとしているが、居酒屋ははじめてだった。
部屋を案内してくれた女性は、為純をさりげなく見ている。俺なんかは目に入らないのか、話しかけるときも為純だけだ。奴の存在が際立って輝いて見えるので、誰が側にいても素通りしてしまうのは仕方がないことだった。
向かい合って座り、酒類を飲めない俺はウーロン茶で、あまり酔わないと言っていた為純も今では同じものを頼んで乾杯する。
お通しのナムルとおひたしを食べながら、最近の仕事の様子を互いに話しはじめる。そこで機嫌がいい理由を訊いてみた。
「解禁前だから詳しくは言えないが、大きな仕事が決まった」
喋る口元が綻んでいる。喜びを隠せない様子で喋る姿に、珍しいと思いながらどんな仕事だろうと考えを巡らせる。
「今だってどれも大きい仕事に見えるけど、それよりも大きいもの?」
「ああ。やりたかったことだ」
こう見えて、為純は仕事に対してかなりストイックだ。探求心が高く、その役のためならば、どんなことでも学ぼうとする姿勢が話の中から垣間見えることがあった。
「そうなんだ。おめでとう」
「そっちも新曲が出るんだって?」
まさか俺のスケジュールも知っていると思わなくて驚いた。
「よく知ってるな」
そこで俺はカバンからCDを取り出してテーブルに置く。
「もし、よかったらこれ。プロモーション用のサンプル品だけど」
渡すために持っていたわけではなかったが、話の流れから鞄に入っていたことを思い出したのだ。
今は曲を動画やサブスクリプションなどで聴く人も多く、CD自体売れない。だからあまり喜ばないだろうなと思っていたら、意外にも為純はCDを手に取り、興味津々にジャケットを眺めている。
「ありがとう。聴かせてもらう」
礼を言われ、こそばゆさを覚えながら頷く。
料理が運ばれてきたのでそれらを摘まみながら、最近あった出来事を話した。
「この間、また訊かれた。いい加減もういいんじゃないか」
何が、などと言わなくても二人の間では通じる。
「話題がないんだろ。それか、いつまで経っても初々しい反応するから、面白半分に訊かれてるとか?」
「だって……慣れないんだよ」
「お前は役者に向かないかもしれないな」
余裕綽々な態度でそう言うので面白くない。為純はいつだって俺たちのことを訊かれてもスマートに答える。口ごもったりおたおたしない。かたや俺はぼろぼろだ。訊かれると想定して構えていても、いざ訊かれると、余裕がなくなって頭がパニックになる。いつも散々で、メンバーからは生暖かい目で見られている。
「そういえば、アナウンサーから恋人とデートするならどんなシチュエーションがいいか訊かれて、しどろもどろになって答えてたな」
テレビ出演したのを見られていたらしい。不意打ちのように突然訊かれた質問に、かなりテンパって思いつきそうなものを手あたり次第適当に喋ったが、あんな恥ずかしい場を見られていたなんて最悪だ。
「ドライブで夜景とか、一緒に流れ星を見るとか? 夕焼けを見ながら浜辺を歩くとか? 随分ロマンチックなんだなって思ったよ」
「それは……もういい。もう言うな」
恥ずかしさのあまり手で覆って顔を隠す。
「今度からは食事だけじゃなくて、それも候補に入れておこうか?」
いらない、と言い返しそうになって、疑問に思ったので訊く。
「もしかして車持ってる?」
「持ってる」
やっぱりと思ってはいけない。為純はたいがいなんでも持ってるし、なんでもできる。
こうして穏やかに会話が進み、一時間ほどで食事を終えた。
為純にトイレに行ってきてほしいと強引に背中を押して、その隙に会計をする。
いつも為純が支払ってくれたので申し訳なく思っていた。せめて割り勘にしようと提案したが、面倒くさいと却下され、俺が予約したんだから払うと言われてしまえば、もう口の出しようがなく「ごちそうさまでした」と頭を下げるしかない。それでも隙を狙って……というか無理やり割りこんだり、トイレに行ってもらったりして、数回に一回は支払うようにしていた。為純曰く「大人しく奢られろ」らしいが、いつだって対等でありたい。
この業界、大御所の人や上役、それから同じ事務所の先輩など、一緒に食事をする機会も多い。そのときは素直に奢ってもらうが、為純となるとやっぱり張り合ってしまう。それを負けず嫌いと言うんだ、と為純に指摘されても、なんか認めたくない。
会計が終わっても為純はなかなかトイレから帰ってこない。遅いなと待っていると、店の奥のほうから悲鳴があがった。何かあったのかと慌てて向かえば、為純がトイレの前で鼻を押えて蹲っている。
顔を上気させた女性が、縋るように為純の側にいたことから、彼女はオメガでしかも発情していると察した。
バースハラスメントという言葉が生まれた頃に、もう一つバース性に関する言葉が有名になった。
ヒートテロだ。
発情期であるオメガが公共の場で故意にフェロモンを振りまき、特定のアルファ、もしくは不特定のアルファを誘惑させることを言う。アルファは発情期のフェロモンに抗えない。オメガのフェロモンを悪用したその行為から、テロリストと同じように扱われている。過去に、片思いだったアルファと既成事実を作ろうとしたオメガが逮捕されたこともあった。
今の場合はどういう状況かわからないが、一刻も早く為純を彼女から遠ざける必要がある。
素早く駆け寄り、俺は着ていた薄手のシャツを脱いで、為純の鼻に押しつけた。フェロモンを遮断すれば多少はよくなる。とにかく離れることが優先だ。店の人もいたので女性を任せて、為純に肩を貸して立ち上がらせる。俺たちは慌てて店を出て、しばらく歩き、人気のない暗がりに座りこんだ。
「大丈夫か?」
咳きこんでいる背中を撫でながら訊くと、為純は頷いたが、発情に当てられたせいで息が荒く目が血走っている。為純がアルファだと確定した瞬間だった。
「お前は大丈夫なのか?」
訊かれて、はっとする。為純は俺をアルファだと思っていたのだ。
曖昧に頷くと、為純は何か言っていたが、再び咳きこんだので言葉は聞き取れない。
俺は顔をあげて自動販売機を探した。遠くでそれらしき明かりが見えたので、走って行きペットボトルの水を買って戻る。飲み口を開けて、為純の前に差し出した。
震える手で受け取り、口から溢れるくらいの勢いで水を飲み、乱暴に口元を拭うと、為純は吐き捨てるように呟いた。
「くっそ……これだからオメガは嫌いなんだ」
一気に血の気が引いた。
為純にオメガだと自分から明かすつもりはなかったが、ばれたらそのときはちゃんと説明するつもりだった。だが、オメガを嫌いと口にする為純に、その甘い考えは瞬時に霧散する。
決してばれたらいけない。ばれたら嫌われてしまう。
面倒だと思いつつも、気が重いと言いつつも、為純に会えばなんだかんだ気を許してしまう……そんな気のゆるみを見透かしているような出来事だった。
為純とはいつか別れる。でも今じゃない。まだ続いている。このままの関係を続けるなら、隠し続けなければならない。
背中を撫で続けていると、徐々に呼吸が落ちついてくる。
「タクシーで帰れそう?」
できれば一緒に乗って送って行きたいところだが、この状態のアルファの側にずっといるのもよくない気がする。
「ああ、悪かった」
立ち上がった為純は少しふらついていたが歩ける。そのことにほっとして俺はタクシーを止めて、為純を乗せる。
「また今度連絡する」
いつもは為純から言うセリフを俺から告げた。為純が頷いたのを確認してタクシーから離れる。
ドアが閉まり、為純を乗せたタクシーが瞬く間に走り去っていく。
俺はその姿を見送り、これからどうやって隠していくか頭を悩ませた。
6
お気に入りに追加
232
あなたにおすすめの小説
コワモテαの秘密
たがわリウ
BL
コワモテ俳優α×兎獣人Ω
俳優の恵庭トキオは撮影の疲れを癒やすために、獣人の添い寝店に通っていた。
その店では兎の獣人、結月を毎回指名し癒やしてもらっていたトキオ。しだいに結月に合うこと自体が楽しみになっていく。
しかし強面俳優という世間のイメージを崩さないよう、獣人の添い寝店に通っていることはバレてはいけない秘密だった。
ある日、結月が何かを隠していることに気づく。
変な触り方をしてくる客がいると打ち明けられたのをきっかけに、二人の関係は変化し──。
登場人物
・恵庭トキオ(攻め/24歳)
メディアでは強面イケメン俳優と紹介されることが多い。裏社会を扱う作品に多く出演している。
・結月(受け/19歳)
兎の獣人で、ミルクティー色の耳が髪の間から垂れている。獣人の添い寝店に勤めている。
日本一のイケメン俳優に惚れられてしまったんですが
五右衛門
BL
月井晴彦は過去のトラウマから自信を失い、人と距離を置きながら高校生活を送っていた。ある日、帰り道で少女が複数の男子からナンパされている場面に遭遇する。普段は関わりを避ける晴彦だが、僅かばかりの勇気を出して、手が震えながらも必死に少女を助けた。
しかし、その少女は実は美男子俳優の白銀玲央だった。彼は日本一有名な高校生俳優で、高い演技力と美しすぎる美貌も相まって多くの賞を受賞している天才である。玲央は何かお礼がしたいと言うも、晴彦は動揺してしまい逃げるように立ち去る。しかし数日後、体育館に集まった全校生徒の前で現れたのは、あの時の青年だった──
落ちこぼれβの恋の諦め方
めろめろす
BL
αやΩへの劣等感により、幼少時からひたすら努力してきたβの男、山口尚幸。
努力の甲斐あって、一流商社に就職し、営業成績トップを走り続けていた。しかし、新入社員であり極上のαである瀬尾時宗に一目惚れしてしまう。
世話役に立候補し、彼をサポートしていたが、徐々に体調の悪さを感じる山口。成績も落ち、瀬尾からは「もうあの人から何も学ぶことはない」と言われる始末。
失恋から仕事も辞めてしまおうとするが引き止められたい結果、新設のデータベース部に異動することに。そこには美しいΩ三目海里がいた。彼は山口を嫌っているようで中々上手くいかなかったが、ある事件をきっかけに随分と懐いてきて…。
しかも、瀬尾も黙っていなくなった山口を探しているようで。見つけられた山口は瀬尾に捕まってしまい。
あれ?俺、βなはずなにのどうしてフェロモン感じるんだ…?
コンプレックスの固まりの男が、αとΩにデロデロに甘やかされて幸せになるお話です。
小説家になろうにも掲載。
社畜だけど異世界では推し騎士の伴侶になってます⁈
めがねあざらし
BL
気がつくと、そこはゲーム『クレセント・ナイツ』の世界だった。
しかも俺は、推しキャラ・レイ=エヴァンスの“伴侶”になっていて……⁈
記憶喪失の俺に課されたのは、彼と共に“世界を救う鍵”として戦う使命。
しかし、レイとの誓いに隠された真実や、迫りくる敵の陰謀が俺たちを追い詰める――。
異世界で見つけた愛〜推し騎士との奇跡の絆!
推しとの距離が近すぎる、命懸けの異世界ラブファンタジー、ここに開幕!
【完結】元ヤクザの俺が推しの家政夫になってしまった件
深淵歩く猫
BL
元ヤクザの黛 慎矢(まゆずみ しんや)はハウスキーパーとして働く36歳。
ある日黛が務める家政婦事務所に、とある芸能事務所から依頼が来たのだが――
その内容がとても信じられないもので…
bloveさんにも投稿しております。
完結しました。
必然ラヴァーズ
須藤慎弥
BL
ダンスアイドルグループ「CROWN」のリーダー・セナから熱烈求愛され、付き合う事になった卑屈ネガティブ男子高校生・葉璃(ハル)。
トップアイドルと新人アイドルの恋は前途多難…!?
※♡=葉璃目線 ❥=聖南目線 ★=恭也目線
※いやんなシーンにはタイトルに「※」
※表紙について。前半は町田様より頂きましたファンアート、後半より眠様(@nemu_chan1110)作のものに変更予定です♡ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる