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2話 桐島優菜
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長い黒髪はツーサイドアップで綺麗に整えられており、化粧っ気がないのにくりっとした大きな瞳が印象的で、ぱっちり二重。鼻の形も整っていて、色白で⋯⋯もう、これぞ! という美少女がそこにはいたのだ。
(キタァァァァァァァァァ!)
僕は心の中でガッツポーズをした。
やはり、高校生活での勝ち組は、オタクで陰キャでぼっちなラノベ主人公系男子で間違いなかった。サッカー部や野球部なんて目じゃない。ぼっちで帰宅部か、美少女が作ったよくわからない部への入部こそが真の勝ち組なのだ。
彼女がこちらに歩いてくるにつれて、僕の心臓が一気に高鳴っていくのが、わかった。いや、待て。これはラノベじゃない。そう簡単にいくわけがないのだ。僕の教典にだって、最初はまずは美少女に恩を売るところから始めている。何もいきなり最初からイベントが発生するわけじゃない。
(まずは、ぼっちキャラを確立させてから⋯⋯)
などと考えていると、その美少女は、僕の隣の席にカバンを置いて、にこっとひたすら可愛い笑顔で笑いかけてくれた。
「こんにちは!」
「こ、こんにちは」
早速どもってしまった。まさか、向こうから話しかけてくれるなんて思わなかったのだ。ほんの先月、中学を卒業した時にも女子から話しかけられることなんてなかったのに。
これがぼっちラノベ主人公系の高校生イベントなのか⋯⋯おそるべし。ていうか、イベント早くない!? 僕、まだぼっち高校生になれてないよ!?
「私、桐島優奈っていうの。あなたは?」
「ぼ、僕は岩本春樹⋯⋯」
「そうなんだ? よろしくね、岩本くん!」
「よ、よろしく⋯」
「岩本くんはどこ中? 私は南中なんだけど」
「ぼ、僕は東中⋯⋯」
「あ、東中なんだー! 私、中学の時バスケ部だったんだけど、最後の試合で東中に負けたんだぁ」
おい、なんてことしてくれやがる東中のバスケ部! 早速僕の印象が悪くなってるじゃないか!
「女子キャプテンの相沢さんって知ってる? スリーポイントの名手だよね!」
だ、誰だそれ⋯⋯ぼっちの僕がバスケ部女子に知り合いなんているはずないじゃないか⋯⋯卓球部は端に追いやられてたし、僕はそんな卓球部の中でも隠キャだったし。そういう名前は聞いたことがある気がするけども。
「最後にスリーポイント決められて逆転された時は、悔しかったけど、敵ながら天晴れって感じで、かっこよかったな~」
「そ、そうなんだ。ぼく、バスケ部の女子には知り合いいないから」
「あ、そうなんだ⋯⋯ごめんね? 勝手にひとりで盛り上がっちゃって」
「ううん、こっちこそ、話合わせられなくてごめん」
「あはは、いいよ~。ともかく、これからもよろしくね、岩本くん!」
「う、うん。よろしく⋯⋯」
そこで、僕らの会話は一旦途切れた。
(キタァァァァァァァァァ!)
僕は心の中でガッツポーズをした。
やはり、高校生活での勝ち組は、オタクで陰キャでぼっちなラノベ主人公系男子で間違いなかった。サッカー部や野球部なんて目じゃない。ぼっちで帰宅部か、美少女が作ったよくわからない部への入部こそが真の勝ち組なのだ。
彼女がこちらに歩いてくるにつれて、僕の心臓が一気に高鳴っていくのが、わかった。いや、待て。これはラノベじゃない。そう簡単にいくわけがないのだ。僕の教典にだって、最初はまずは美少女に恩を売るところから始めている。何もいきなり最初からイベントが発生するわけじゃない。
(まずは、ぼっちキャラを確立させてから⋯⋯)
などと考えていると、その美少女は、僕の隣の席にカバンを置いて、にこっとひたすら可愛い笑顔で笑いかけてくれた。
「こんにちは!」
「こ、こんにちは」
早速どもってしまった。まさか、向こうから話しかけてくれるなんて思わなかったのだ。ほんの先月、中学を卒業した時にも女子から話しかけられることなんてなかったのに。
これがぼっちラノベ主人公系の高校生イベントなのか⋯⋯おそるべし。ていうか、イベント早くない!? 僕、まだぼっち高校生になれてないよ!?
「私、桐島優奈っていうの。あなたは?」
「ぼ、僕は岩本春樹⋯⋯」
「そうなんだ? よろしくね、岩本くん!」
「よ、よろしく⋯」
「岩本くんはどこ中? 私は南中なんだけど」
「ぼ、僕は東中⋯⋯」
「あ、東中なんだー! 私、中学の時バスケ部だったんだけど、最後の試合で東中に負けたんだぁ」
おい、なんてことしてくれやがる東中のバスケ部! 早速僕の印象が悪くなってるじゃないか!
「女子キャプテンの相沢さんって知ってる? スリーポイントの名手だよね!」
だ、誰だそれ⋯⋯ぼっちの僕がバスケ部女子に知り合いなんているはずないじゃないか⋯⋯卓球部は端に追いやられてたし、僕はそんな卓球部の中でも隠キャだったし。そういう名前は聞いたことがある気がするけども。
「最後にスリーポイント決められて逆転された時は、悔しかったけど、敵ながら天晴れって感じで、かっこよかったな~」
「そ、そうなんだ。ぼく、バスケ部の女子には知り合いいないから」
「あ、そうなんだ⋯⋯ごめんね? 勝手にひとりで盛り上がっちゃって」
「ううん、こっちこそ、話合わせられなくてごめん」
「あはは、いいよ~。ともかく、これからもよろしくね、岩本くん!」
「う、うん。よろしく⋯⋯」
そこで、僕らの会話は一旦途切れた。
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