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第1章 雨宮凛

修羅場への階段

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『来週、たくさん盗んでね?』──これの意味は、東京で、という事だ。
 そう、俺達は、来週東京に行く事になっていた。
 二学期の中間テストが終われば、修学旅行。それが終われば文化祭。高二の二学期は忙しい。
 ただ、その修学旅行の行先が……なぜか、東京なのだ。
 何の特別性もなく、修学旅行という感じでもない。凛に関してはつい最近まで行ったり来たりしていたので、全く旅行感は無いだろう。勿論、俺だってない。
 ただ、うちの学校は少し変わっていて、修学旅行と言っても、普通の修学旅行とは少し異なる。
 東京にある提携校の生徒と合同で授業や調べもの、勉強会を行うという、全く旅行っぽくない旅行なのだ。これを修学旅行という扱いにしていいのか、と疑問を持ったが、この高校ではそういう文化らしい。金がかからなくて済むと親は言っていたが、それにしても、と思う。
 ただ、ちゃんとホテルには泊まれるし、自由行動もあるみたいだし……最初は文句こそ出るが、東京の提携校との交流で、新しい友達や恋人などができる事も多いらしく、終わってみれば毎年案外不評は少ないのだそうだ。
 まあ、自由行動があるならそれでいいか、と思えた。今は、凛と過ごせるのなら何処でも良かった。
 そんな軽い気持ちで、俺達は再び東京の地を踏んだ。
 そう、俺はこの時浮かれていたのだ。
 東京にはあいつがいる。それを忘れていた。いや、忘れていたわけではない。忘れていたわけではないが、あれだけ人が行きかう東京で、出くわすだなんて考えなかったのだ。
 この時の気のゆるみを、憎んでも憎み切れない。
 そこで俺達を待っていたのは、ただの修羅場だった。
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