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第1章 雨宮凛
実はファンだった
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昼食中は、極めて平凡だった。電撃引退(建前としては活休だけど)した芸能人と一緒に飯を食べるのがこんなに平凡でいいのか、という程に平凡なものだった。
各自自己紹介をして、あとはだべりながら食べる。凛も愛梨とは気が合う様で、なんだかファッションについて話し合っていた。愛梨が女の子とこんなにはなしているのを見るのは初めてのことだった。純哉もあまり詳しくないくせに凛と話したいが為に口を挟んで、愛梨にバカにされている。
俺は遠巻きにそんな様子を見て、今朝コンビニで買ったパンを頬張っていた。凛も普通の女の子って事なんだろうか。
それにしても凛は一つ一つの動作が上品だ。お嬢様みたいに箸の使い方一つ見ても気品があって、感心してしまう。ふと、凛と目が合う。
「じゃあ……そろそろ聞かせてくれないか」
今日一日ずっと気になっていたことを切り出してみる事にした。
「え? 何を?」
お弁当を食べ終えた凛が素っ頓狂な様子で聞き返してくる。
何を、じゃないだろう。そもそもお前さんがここにいる事事態おかしい。
「なんで学校側に色々嘘吐いたんだよ。中学時代知り合いだった、とか。何とか合わせてきたけど、どれだけ混乱したと思ってるんだ」
不機嫌さを装いながらも正直な感想を言い、ペットボトルのお茶に口をつけた。
そもそも知り合ったのは夏休み最後の日だ。東京では会った事も見た事も無い。それをいきなり知り合い扱いだわ面倒見させられるわ、たまったものではない。
「あ……ごめん」
凛は謝りつつも、またあの傷ついた様な表情を見せた。どこか悲しそうな、あの最初に見た表情。だから、どうしてそんな顔をするのだろうか。
「私さ、こう見えて……その、初対面の人と話すのが凄い苦手で。誰も知らない人ばかりだと絶対に話せないし、口ごもっちゃうし……だから、ほんとは友達もあんまり居なくて」
意外や意外、天下のスーパーモデル女子高生は人見知りだったらしい。
「誰も話した事が無い人の中にいるより、一度話した事ある人が居ると心強いじゃない? だから、同じクラスになりたくて嘘吐いちゃったってわけさ。ごめん」
凛は申し訳なさそうに俯き、頭を垂れた。
そう言われてしまうと、何も言い返せなくなってしまう俺である。気まずい空気が俺達四人の上に舞い降りた。
愛梨が溜息を吐いて、俺を非難する様な視線で見る。いや、正しくは、睨む。
「小せぇ、小せぇぜ翔! 良いじゃねーかそんな嘘! このカス野郎が! こんな風に凛ちゃんに言わせて申し訳ないとは思わないのか! 金玉ついてんのか!?」
純哉が場を明るくするために語り始めた。いや、盛り上げて頂くのはありがたいが、とりあえずこいつは一発殴りたい。
「もう良いだろ。せっかく凛もこうして仲良くなれたんだし、アンタも満更でもない。問題無しで理由もわかって無事解決、おーけー?」
愛梨が珍しく仲裁に入った。いつもなら荷担して俺にトドメを刺しに来る女が、意外だ。彼女も凛が気に入ってるのだろうか。
「私も初日からこんなに友達できると思ってなかったから……翔くんには本当に感謝してるよ。ありがとっ」
凄く美しい笑顔で感謝されてしまった。
照れ隠しもあり、俺は溜息を吐いて掌を宙に向けた。そういう理由なら仕方ない。
ただ、引っかかる点が無いと言えば嘘になる。彼女が人見知りをする性格にはどうも思えなかったのだ。
まず、第一に見ず知らずの男に明け方いきなり悩み相談を打ち明ける点。次に、それ以後友人のごとく気軽に話しかけてきて、純哉達ともとけ込めている点。それに芸能界で活躍していたという点。人見知りなら、どうにもこれらは出来ない気がする。
そんなことを考えながら凛と愛梨を見ていると、ふとしたことに気付いた。
各自自己紹介をして、あとはだべりながら食べる。凛も愛梨とは気が合う様で、なんだかファッションについて話し合っていた。愛梨が女の子とこんなにはなしているのを見るのは初めてのことだった。純哉もあまり詳しくないくせに凛と話したいが為に口を挟んで、愛梨にバカにされている。
俺は遠巻きにそんな様子を見て、今朝コンビニで買ったパンを頬張っていた。凛も普通の女の子って事なんだろうか。
それにしても凛は一つ一つの動作が上品だ。お嬢様みたいに箸の使い方一つ見ても気品があって、感心してしまう。ふと、凛と目が合う。
「じゃあ……そろそろ聞かせてくれないか」
今日一日ずっと気になっていたことを切り出してみる事にした。
「え? 何を?」
お弁当を食べ終えた凛が素っ頓狂な様子で聞き返してくる。
何を、じゃないだろう。そもそもお前さんがここにいる事事態おかしい。
「なんで学校側に色々嘘吐いたんだよ。中学時代知り合いだった、とか。何とか合わせてきたけど、どれだけ混乱したと思ってるんだ」
不機嫌さを装いながらも正直な感想を言い、ペットボトルのお茶に口をつけた。
そもそも知り合ったのは夏休み最後の日だ。東京では会った事も見た事も無い。それをいきなり知り合い扱いだわ面倒見させられるわ、たまったものではない。
「あ……ごめん」
凛は謝りつつも、またあの傷ついた様な表情を見せた。どこか悲しそうな、あの最初に見た表情。だから、どうしてそんな顔をするのだろうか。
「私さ、こう見えて……その、初対面の人と話すのが凄い苦手で。誰も知らない人ばかりだと絶対に話せないし、口ごもっちゃうし……だから、ほんとは友達もあんまり居なくて」
意外や意外、天下のスーパーモデル女子高生は人見知りだったらしい。
「誰も話した事が無い人の中にいるより、一度話した事ある人が居ると心強いじゃない? だから、同じクラスになりたくて嘘吐いちゃったってわけさ。ごめん」
凛は申し訳なさそうに俯き、頭を垂れた。
そう言われてしまうと、何も言い返せなくなってしまう俺である。気まずい空気が俺達四人の上に舞い降りた。
愛梨が溜息を吐いて、俺を非難する様な視線で見る。いや、正しくは、睨む。
「小せぇ、小せぇぜ翔! 良いじゃねーかそんな嘘! このカス野郎が! こんな風に凛ちゃんに言わせて申し訳ないとは思わないのか! 金玉ついてんのか!?」
純哉が場を明るくするために語り始めた。いや、盛り上げて頂くのはありがたいが、とりあえずこいつは一発殴りたい。
「もう良いだろ。せっかく凛もこうして仲良くなれたんだし、アンタも満更でもない。問題無しで理由もわかって無事解決、おーけー?」
愛梨が珍しく仲裁に入った。いつもなら荷担して俺にトドメを刺しに来る女が、意外だ。彼女も凛が気に入ってるのだろうか。
「私も初日からこんなに友達できると思ってなかったから……翔くんには本当に感謝してるよ。ありがとっ」
凄く美しい笑顔で感謝されてしまった。
照れ隠しもあり、俺は溜息を吐いて掌を宙に向けた。そういう理由なら仕方ない。
ただ、引っかかる点が無いと言えば嘘になる。彼女が人見知りをする性格にはどうも思えなかったのだ。
まず、第一に見ず知らずの男に明け方いきなり悩み相談を打ち明ける点。次に、それ以後友人のごとく気軽に話しかけてきて、純哉達ともとけ込めている点。それに芸能界で活躍していたという点。人見知りなら、どうにもこれらは出来ない気がする。
そんなことを考えながら凛と愛梨を見ていると、ふとしたことに気付いた。
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