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第1章 雨宮凛

よくある朝⋯⋯のはずだった

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 翌日の朝、いつも通り登校した。
 でも、気分はどんよりで最悪だった。失恋という感覚なのだろうか。脱力してしまって何のやる気もでなくて、でも心の中は木枯らしが吹き抜けた様に寒い。俺は一体何に期待していたんだろうか?

「なーに湿気たツラしてんだ、男のくせに」

 口の悪い女子が、あからさまに呆れた表情を作って話しかけてきた。正直今の気分では相手にしたくない奴だった。
 そこには、この学校では比較的目立つ女性がいた。彼女は、ピンクベージュの髪を腰まで伸ばしており、ツーサイドアップにしていた。長い襟足はコテでゆるく巻いて、巻いた部分は肩から胸元へ流している。前髪は目にかかるくらいのラインで、サイドは顎のラインで切りそろえてある。そして、鈴の髪飾りをツーサイドアップの結び目につけていた。

(あれ、そういえばこの髪型どこかで見たような⋯⋯)

 一瞬思うが、とりあえず今はそんな事はいい。彼女は宮里愛梨《みやざとあいり》。スタイルやルックスは良い部類に入るのだが、性格にかなりの問題があって、とにかく怖い。どうにもこうにもドがつくサディスティックな性格の持ち主で、ことある毎に俺や純哉を虐めてくる。声も低くドスが効いていて、動作の一つ一つに貫禄があって怖いのだ。たまに意味なく舌打ちするし。
 反抗しようものなら、『あぁ?』の一言で蛇に睨まれた蛙状態である。元ヤンかと訊いたら、無言で睨まれた後、「な訳ねーだろ?」と、とても明るい笑顔で言われた。心身共に凍り付いたのは言うまでもない。
 愛梨も俺や純哉と普段から絡んでいるのだが、どうしてこんなメンツが集まったのかはわからない。何となく連む様になっていたのだ。

「男か女かは関係ないだろ。それ言うなら、お前はもっと女らしくしろよ」

 思った事を言ってしまった途端に後悔する。喧嘩を売ってどうする。

「あ?」

 冷たい笑顔を作っておられる愛梨サンがそこには居られた。

「何でもないです⋯⋯」
「よろしい」
「はぁ、何なんだよもう」

 こっちのムードもちょっとは考えてくれ。俺は今そういう気分じゃないんだ。

「あんまり虐めてやんなよー、愛梨」

 クラスメートの斎藤が見かねて助け舟を出してくれる。

「あ、斎藤! 彼女できたー?」

 愛梨が作ったのが丸わかりな明るい笑顔で、助け舟を出してくれた斎藤に切り返す。ひくっ、と斎藤の表情がひきつった。

「できるか! 昨日もそれ訊いただろ! てか二学期始まってから挨拶がそればっかだろ!」
「ワザとに決まってんだろ、童貞」

 真顔に戻って冷徹に切り返す愛梨。酷すぎる。
 斎藤はワナワナと震え上がってるが、言い返すだけ被害が増すので怒りを何とか我慢しているようだ。結局何も言い返すことなくしょぼくれて撤退していった。
 ちなみに、愛梨がこうして俺やクラスメイトへの攻撃が激しいのは理由がある。どうやら夏休み中に彼氏に振られたらしいのだ。その腹いせというか完全な八つ当たりで俺らは毎日言葉の暴力を浴びせられているわけである。
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