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1話 刀片帰還編
12.その破片は。
しおりを挟む自業自得。
先程からの攻防により海堂の手のひらの肉は裂け、刀を握ることすらやっとだったのだ。
それを知りながらも限界を越えようと足掻いたのだ。
しかし限界など等に超えており、東の障壁を最初の一撃で破ったのもまぐれであったため、決着は見えていた。
しかし海堂は自らの力を過信した。
東はただ怯えていたのだ
自分の刀が、また人を貫いてしまうことを。
海堂はけたたましい女の叫び声を上げる竜巻とともに階段を崩壊させながら血だまりと瓦礫の海の底へと消え失せた。
『まことに恰好だな。』
東のすぐ後ろから声が聞こえた。
男の声だ。
しかし、少年ではないことはたしか、
振り向くとそこには、自分よりいくつか年が上のように見える男が立っていた。
気配なんてものがしない。そんなものではない
今目の前に立っているのに認識するのがやっとなのだ。目を少しでも話したら見失ってしまうほどに平明的幻覚感に襲われる。
『凡骨な力だ。ただ、お前自身は凡庸ではない。お前自身は異質だ。』
東には突如現れた黒いコートの男がなにを言ってるのか分からず装備を解いてしまった。
もはや戦う気すら起きない。
謎なのだ。
しかしそんな東のことなど御構い無しだと言わんばかりに男は話す
『お前の力は凡愚。単なる刀でもないそのかけら。それがお前の力。大事なものをすべて捨て去った刀の刃こぼれの破片の一部がお前の力だ。不完全にも程がありすぎる。そんな刀をお前は一本の刀に生成させ、しまいには鎧として纏った。 容量など無視して、進化させている。 わかるか?お前があまりにも矛盾した存在なのだ。障壁は刀の力を数式化したお前の技。お前は刀の中に自らの器を作りそこに自分の分身でありながら別の人格、否、別の人間を飼っている。私たちはお前のようなものを混片者(こんぺんしゃ)と呼んでいる。要するに刀持ちではない。』
東は男の言ってることの半分は理解できたがそのほかは聴く気にもなれず耳をほじっていた。
『んー、よくわからないけど、まあその金平糖みたいなのがどーした?お前が言ってるのはカレーパンの中のカレーはカレーではない。ライスの横にいるのがカレーでありパンとの共存を図るカレーなどまがい物に過ぎないみたいなことだろ?それを言いにきたのか?愚かとか言ってるけど俺のこと知ってるんだろ?その詳しさからしてさ?だったらわかるだろう?俺が破綻してるって。』
『ふ。お前の探してる女、』
男がそう言いかけた時
東の目に殺意にも似た愛情がこもった
東にはわからなかったのだ。
この感情が。
あまりにも刃こぼれしすぎた愛情が、
殺意を超えた粘着質な憎恋であることに…
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