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1話 刀片帰還編

9.反撃開始

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『明日になれば見つかるよ、今日は帰ろう』
彼女が時計柱に寄っ掛かりながら、退屈そうに言った

『待ってくれ、もう少しで見つかりそうなんだよお、あと少しでいいから』
東は砂場を素手で掘りすすめる。
それを見た彼女は呆れた顔で東とその砂場に遠くから手をかざすかのようにして
一言つぶやいた

『屠れ』

かまいたちと表現するべきだろうか、
風神と表現するべきか。
砂場を超え、はるか遠くにある滑り台が
重苦しい金属音を上げながら切り刻まれ四方八方にその破片が飛散していく。
突然の崩壊。
その後。砂場とその周辺の地面から砂煙が一メートル程直線上に巻き上がったかと思うと割れた。
ゴゴゴゴゴ…と聞きなれない地鳴りのようでそうでないような不気味な音が此処、
トバリ公園に響き渡る。

風だ。
強靭な風で作られた無数の鎌や斧や短刀が
縦横無尽に彼女の命じた場所を屠ったのだ。
どんな仕組みなのかは知らないが
彼女は東に言った
『 2年前ある男から引き抜いた刀が私の中に入った』と。
その後、東も怪しげな刀を抜いてしまう。
しかし、この刀を抜いたことによる異能なる力は刀だけが原因ではない。
彼女と東はある事件が発端で呼び寄せてしまうようになったのだ。
刃を。


砂煙が舞い、ひどく荒れた地面と遊具たちが
キイキイと音を立てながら彼女の前に現れた。

『なんだよ。あるじゃんか』
平然とした顔でその斬撃から無地生還した東。
その姿を見てほくそ笑む彼女。
『やっぱりあんた強いねえ、私のアレ食らっても無傷とか、あんたの刀?絶対盾でしょ?いや壁?なによその桁違いな防御』

東は軽口を叩く彼女を前にして顎に手を当てて少し考えた

『いや、たしかにお前の風を切ったんだけど、なんつーか、俺の体の中から出てきた刀が、俺を包むかのようにしてお前の風をなぎ倒したっていう表現の方がしっくり来るんだよなあ…』

『は?』

『いや、俺の方が、は?なんだけどさ、、』

あたりが段々暗くなっていく、
東は目を開けているのに、
目を閉じている化のような感覚に陥った
そして段々、暗さになれたその目は
今見るべきものを投映し始めた。

『思い出した。そういえばあの時から徐々におれはこの刀を鎧として使っていたんだった』

血みどろな階段で見えないはずの障壁を体に纏った東の体には重厚かつ生命体のような異形なるもので構築、生成された鎧のようなものが全身を覆っていた。

『知っている。噂には聞いていたし、この目でその姿を見たことだってある。
まあこの私の姿で見るのは初めてに等しいがな』

海堂がゆっくりと階段を降りながら東に接近する。
しかしその足取りは先程とは異なりなにやら、慎重にさえ思える

東は左と右の手を交差して両肩にその手を添えた。
そして歯を食いしばった。
『さあて、こっから鬼退治して昔の武勇伝を復活させようかなぁぁぁあ!』

2つの禍々しい刀が東の両肩から引き抜かれた。

体から刀を抜いたのだ。
しかし東の顔に痛みのようなものはなく、
どちらかというとようやく取り出せてスッキリしているとでもいいそうな爽快な表情をしていた。

まるでマラソンランナーがゴールして
満身創痍のまま仲間に抱き抱えられて水を飲み自分の戦いは終わったのだと満足そうに笑っている時の表情そのものにさえ思えてしまうほどの爽快さを放っていた

『空巻の仇、討たせてもらうぜおっさん』

東は双刀を構えて鋭い眼光で階段を降り終えた海堂へ今突撃する。



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