目指すは新天地!のはず?

水場奨

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52話 捕まるシャリオ

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「暫く休んでいたようだが、気分はどうだ?少しやつれたな」
イケおじ風な陛下が、俺の手を両手でにぎにぎとしながら心配顔でデコを合わせてきた。
陛下、俺のこと何歳だと思ってんのかな。
相変わらずちょっとズレたキモいおっさんなんだよな。

「ご、ご心配をおかけしました。少しばかり体調を崩しまして、ははは」
スッと顔を遠ざけると、陛下が目を細めた。

なんだろう。
陛下も王太子殿下もグェインもアルベルトも、王族って皆イケメンなのよ。
なのに陛下は気持ち悪いのよな。

「ああ、今日は其方のために滋養に効く物を用意したのだ。たくさん食べるといい」
「ありがとうございます」

目の前に並べられたのはお粥みたいなものと、ケーキとかの甘味だ。
種類も豊富。すげえ金持ちの晩餐感。
昼間からコレでどうするよ。
人がたくさんいたらバイキングじゃん!って喜べるんだけど、ここにいるの俺と陛下(と必要がなければ動かない使用人)しかいないのよ。

「美味しいです」
「そうであろう。其方のために遠方から取り寄せたのだ」
え?
「そ、それはご迷惑をお掛けしました」
てか、手厚過ぎじゃね?
いくら自分に媚びへつらわない人間ゆうじんが貴重だとか言っても、やり過ぎじゃね?

「ほれ、食が進んでおらんぞ?どれ、食べさせてやろうか」
「い、いや、自分で食べますから」
陛下自らスプーンで『アーン』とかどうなんだ?とか思いながらも咀嚼していると、お腹がパンパンになってきた。

「ふわ」
やばいなあ。
欠伸出ちゃったし、なんか眠い。
「まだ本調子じゃないようだな。仕事の始まる時間まで、少し寝ていくといい」

うーん、それはダメだろ。
いくら休憩中とはいえ、上司の部屋で昼寝とかダメだろう、と思ったところまでは、覚えている。





「ここ、どこだ?」
ふと意識が浮上すると、見知らぬベッドで寝かされていたことに気づく。
誰もいないのか?

「やべ!」
仕事サボっちまった!
慌てて起き上がり近くに置いてあった上着を着込むとバタバタと廊下に出た。

「うっ!」
な、んだ?
内宮に仕事をしに入った時の感覚に似てるけど、それよりも酷い。
2、3歩進んで、空気の重さに膝をついた。

「大丈夫か!」
遠くからかけられた声に視線をあげると、陛下が走って来るのが見える。
「すまなかった。所要で少し席を外していたからな。薬の効果でよく寝ていたから大丈夫かと思っていたのだが」

「い、いえ?」
なんで、陛下が?

「まだ具合が悪そうだ。ここは精霊にはキツイ場所だからな。さあ、寝室に戻ろう……

「え?」
えっと、誰って言った?
ん?精霊にはキツい場所?
「わ!」
「歩けない、ですか」
そう言いながら陛下が俺を抱き上げる。

「心配なされるな、兄上。前のような失敗はしませんから」
「あ、兄上?」
兄上って、誰だ?
えと、前の王様?
俺のじいちゃんのことか?

「前は術式が強過ぎて、兄上があっという間に消耗してしまったから少し弱めたのです。部屋の中なら安全ですよ」
人の話、聞いてないな。
せっかくベッドから抜け出したのに、またぐったりと舞い戻ってしまったではないか。
ベッドではなく外に出たい。

「陛下、俺、シャリオなんですけど」
そもそも陛下に兄と呼ばれるほど年くってねえし。
「わかっておりますよ。シャリオとして、現れてくれたのですよね、私の前に」
うっとりと声を出す陛下が、俺の手を握り指先に口付ける。

「ち、違うけど?」
気持ち悪さに手を引き抜こうとしても、廊下に出たダメージで力が出ない。
「何をおっしゃっているのか」
え、そのままその言葉返すけど?とか思っていたら、陛下の手が服にかかり、一気に引き裂かれた。

「ああ、この模様。先程も確認しましたが、兄上のモノと同じ。顔も声も話し方までよく似ていらっしゃる。兄上、兄上ではないなどと、このルーズラーダに意地悪しないでください」
陛下が俺の腕にある模様を撫で、顔が近づいてくる。
「い、いや、マジで違うから言ってんだけど」
ちょっ、マジ近過ぎだから!

「兄上が悲しまないように、兄上の大事にしていたモノは私も大切にしてきたのですよ」
兄が大切にしてたモノってなんだ?
「奥方も子も、兄上のためだと思ってにすることなく大切にしてきたのです。兄上、ご褒美をください」
「何言ってるのか、わかんないんだけど」
エサって、何だ?

「私は以前、兄上に成り代わりたいと思っていました。けれどそれが間違いだと気づいたのです。兄上を殺めてしまってから気づいたのです。兄上のご遺体はすぐに朽ちてしまって、長く愛することができませんでしたし」
今、サラッとすげえこと言ったな!
びっくりし過ぎて身体が震えたわ!

「ああ、怯えないで。もう同じ過ちは犯しませんから。私は、兄上に成り代わりたいのではなく、兄上と結ばれたかったと、気づいたのですから」
「…………なんと?」
な、なんか動揺してて、聞き間違えちゃった。

ふぅー、ないない。
兄上、男。
陛下も、男。
そもそも血が繋がった兄弟だし、国の為政者だ。
そんなお偉い人がそんなおかしなこと言うとかあるわけない。
政治家は清らかさが大事なんだよ。

はー、結婚もして子沢山なのに、同性愛で近親相姦とか、ナイナイ。
えらい聞き間違えしちった!

「兄上、愛しております」

………………っ!!
ぎゃーーーー~!!!

聞き間違えじゃ、なかったー!!

「な、な、なな」
何が起きてんの?

待て待て、冷静になれよ、シャリオ。
俺、シャリオ。
陛下の想い人、兄上。

つまり、人違い。

よし、まずはそこからだな!

「陛下、俺、陛下の兄上ではなくて、シャリオです」

「あ、ああ、そうであったな。今世はシャリオとして生を得たのだ。シャリオとして、愛して欲しいよな?」
ちがーう!
愛して、欲しく、ない!

「い、いえ、俺、もう婚約者もおりますし」
「ん?ああ、そうであったな。後で始末しておく」
ぎゃー!
それも違う!!

「い、いえ、そうではなくて!俺、陛下のこと、好きじゃないんで無理です!ぐはっ!!」

めっちゃ叩かれたんだけど!!
DV?DVやる人なの?陛下様って。

「あああ!痛くないですか?こんなに腫れて。ああ、すみません」
いや、お前の頭どないなっとるねん。
自分で叩いておいて、何ショックうけとるねん。
思わず関西弁にもなるわ。

って、何やってんの?
ビリビリに引き裂かれた服を剥がされ、ズボンまで引き抜かれそうになっている。
「わ!ばか、やめろ!ぐっ」
なんとか暴れて逃げようとすると、降って来るのは強烈な平手だ。

「兄上、私を怒らせないでください。優しくしたいのです、ね?」
「や、だ!」
「こんっ、の!!」
また強い張り手が飛んでくると思ってグッと目を瞑れば、振ってきたのは激しい口付けだった。

「んー!」
やだ。
本当にやだ!
やだ!!
まだ拳の方がいい!
「うー!」
この部屋には、ボロボロ落ちて来る涙を吸い取りに来てくれる精霊すらいない。
ファガル助けて!
無理だったよ。なんでもやれると思ってたけど、無理だった!

「ファガル、助けっ!」
バシッときた強烈な一手に、目から星が飛ぶ。
クラクラしている間に、陛下の口から逃れようと暴れた腕は纏められて、頭上に紐で固定されてしまった。
大股を開かされて蹴り上げまくってた足も、尻を剥き出しにしたまま固定されてしまった。

「他の人間の名など呼ぶな」
口にも何か入れられて、陛下が俺のケツを唾液まみれになって舐めてるのを、見てることしかできない。
泣くしかできないとか、こんなの想定していなかった。

「うっ、ぐすっ」
陛下も服を脱ぎ捨てて、おっさんにしては引き締まった身体を見せられてもトキめきもしない。
そそり立ったブツを見てしまって絶望感に苛まれただけだった。

もう現実逃避しよう。
あのドス黒いモノが自分の中に入ってきても、違うことだけ考えよう。
ケツん中に指が入ってきたけど、もう見ない!

だから俺はふと視線を外して、たまたま床を見たんだ。
そしたら真っ黒のタールみたいな、ネバーっとしたのがゆっくりとベッドに近づいてきていた。

ぎゃー!!

俺のケツもピンチだけど、床もピンチ!!
あれ、絶対悪いヤツだから!!

「んー!うー!」
「ちっ、大人しく観念しろ!」
違うよ、違うから!!
あれ!アレ見てよ!

んぎゃー!陛下が怒ってちんこ押し付けてきたー!
ぎぇー、黒いの登ってきた!!

ぎゃー、黒いの、陛下のちんこ飲み込んだ!!
へ?
へ、陛下、見えてないの?
黒いのにちんこ突っ込んで、めっちゃ気持ち良さそうに動いてるけど。

あ、陛下イッたみたいだ。
なんか幸せそうな陛下にちゅっちゅされてるんだけど。

あれ?俺のケツ、突っ込まれないで済んだんじゃね?
え?黒いの良いやつだったの?
マジで?
助けてくれたの?

えー、クロちゃんいい子やん。
はー良かった。

いや、良くない。





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