目指すは新天地!のはず?

水場奨

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50話 ハゲ劇場を観るシャリオ

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ハゲラーダに連れられて内宮に入ると、子供達の収容されている扉の前まで来た。
内宮は足を踏み入れた瞬間から空気が重く、気持ち悪さが続く。
こんなところにずっと居たら、具合悪くなるの当たり前だろ。

室内もベッドなどはあるようだが、格子状の壁のせいで生活が丸見えだし、まんま牢獄だ。
中の身代わり戦士達は俺の顔を見て驚いているが、ちゃんと空気をよんで他人の振りをしてくれた。
まだ残っている子供達は俺のことは知らないから無反応だ。

俺は着いてきてくれたリウールとザイドに教えてもらいながら、彼らの食事を準備する。
簡素なパンとスープのみの味気ない食事だ。
これでは子供達の健康は維持できまい、なんて考えていたら、フン1号が急に俺の腕を捻り上げた。

「痛った!何するんですか!」
せっかくの食事が1人分床に落ちちゃっただろ!
ただでさえ少ないのに!

「家畜の餌やりはソイツらにやらせとけ」
こいつら、この子達を家畜だと?
キッと睨みつけると、ニヤニヤとフンが笑っていた。

「生意気な雌に、誰の方が上かわからせてやらないとな」

「お前ら、そんな卑劣な!」
「うるさい!お前の家族がどうなってもいいのか?」
その言葉に、リウールが押し黙る。
こんな助けも呼べない場所で暴力とか、被害にあってるのは今回の俺だけじゃないかもしれない。
まあ、殴られるのぐらい、我慢してやるわ。

「だいたい、こんな美人がデヨーテの嫁とかあり得ないだろ」
「アイツにはミュゼルぐらいがお似合いだっつうの」
「デヨーテが突っ込む前に、ちゃんと躾てやらんとな」
「ははは、そのせいでデヨーテに捨てられても、私たちの雌奴隷として飼ってやるからな」
「案外、デヨーテの粗チンよりも私達のモノに夢中になって、自分から跨ってくるようになるかもしれないですよ」

ギャー!
え?どういうこと?
暴力じゃないの?
いや、これもある意味暴力だけどさ!
ハゲラーダとフンの股間がモッコリしてるぅ。
え、何?
コイツら俺をここで輪姦やろうとしてんの?

いや、待て。ファガルの時も大丈夫だったしな。
今回もだいじょー……ばないから!!
ちょっとはイケるかなーなんて思えねえから!!
ムリ!!
ハゲのちんことか、キーモーチーワールーイ!!
無理だったよ!
無理だった!
俺、面食いだった!!

ファガルのヤツ、乱交パーティーを無碍にするとかなんてもったいねえとか思ってたけど、いや、無理無理、無理でした!!
ごめんなさい!
無理でした!!

ど、どうしよう。殺してもいいなら抵抗するんだけど、どうしたらいい?
ボコボコのサンドバッグになる覚悟はしてきたけど、そういう目で見られる覚悟はしてなかったから、パニックだよ。

ハゲが俺の上に乗りかかって、首舐められてるー!
無理ー!!
ハゲの手が俺のズボンにかかって、うぎゃー!ちんこ触られてるぅ!!

「シャリオ!」
リウールが駆け寄ろうとして、ザイドが止めた。

「うるせえ!黙ってろ!」
「それとも何かあ?お前も混ぜて欲しいってか?」
「なんだあ、それならそうと言えよなあ。ここに穴は2つしかないけど、棒は3つもあるからなあ」
「よく見れば、リウールのヤツもいい顔してるじゃねえか」

「く、来るな!」
「よせ!リウールに触るな!」

プッチーン。
あんだよ、コイツら。
俺だけじゃなくて、他にも手ぇ出す気なのかよ。
これ、今回許したら次からもっと悲惨になるヤツじゃね?
ここでなら同僚犯しても大丈夫とかいう前例、作ったらダメだろ。

よし、殺すか。

精霊に頼んで、適当な人間をハゲ達に変身させてもらって、暫く凌げ……ねえわなあ。
外見は似せられても、性格を真似るのは無理だ。コイツらクソ過ぎるもんな。
まあ、いいや。

「お前らいい加減にしとけよ?」
上に乗ってたフン1号とくるりと場所を入れ替えると、肘で固めて首を締め上げる。

「き、貴様、何してやがる!」
「見てわかんないか?」
殺ろうとしてるのに決まってんだろ。
「そ、そのままだと死ぬぞ?お前、人殺しかよ!」
はあ? 
「その言葉、そのままお前らに返すわ」
どの口で言ってんだよ。

「シャリオ様!」
牢からの声に振り向くと、フン2号が棒切れを持って叩きつけてくるところだった。
それを腕で受けると、腹に蹴りを1発入れる。
俺の腕から逃れようやく息ができたフン1号と、思いっきり入った蹴りでフン2号がゲロを撒き散らして倒れ込んでいるけど、浄化の魔術でかじわじわと綺麗になっていく。

「お、お前、お、おい!貴様らアイツを押さえろ!!」
焦ったハゲがリウール達に命令するけど、まさか俺が暴れて反抗するなんて思いもしてなかったんだろう。
リウール達もアホ面晒して呆然と座り込んでいる。

「シャリオ様!殺るつもりならここを開けてください。私にいい案があります」
「いい案?」
「はい。これです」
牢の中にいる護衛戦士の手にある小さな瓶。

「なんだ、それ」
「これ、宴の時に使用されるんですけどね。コイツらのやってきたことを思えば、殺すなんて生温い。今日の分をそいつらから絞り取ってやろうかと思いまして」
「へ?」
「精と血を、カスも出ないほど」
あ、もしかしてソレ、媚薬的なヤツか。
ま、それも有りか。
殺す前に役に立ってもらうの、大事よな。

フンの懐を探ると鍵がいくつかある。
どれだ?
「おい、貴様!勝手なことをするな!!」
ガチャガチャと回しているとハゲが殴りかかってきた。
拳、よっわ!
パシッと受け止めたまま横っ腹を蹴り倒す。

へなちょこパンチ過ぎてこっちが泣きたくなるわ。
俺、こんなヤツにケツ掘られるところだったってのかよ。
俺より強いか、俺よりカッコいいか、俺より天才か、なんかそういうのないとトキメかないんだよ。わかる?


「お前の相手はコイツらがするってよ。もう少し大人しく待ってろ」





お前の相手はコイツらがするってよ。もう少し大人しく待ってろ。

とは確かに言ったけどな。


「なあ、シャリオ……。俺ら何見せられてるのかな」
遠い目で問うてくるのはリウールさんだ。
「ああ、うん。俺もちょっとまだよくわかんない」
「中の奴らも、鬱憤溜まってたんだな。発散させてやろうぜ」
ザイドの目はもう死んでいる。

牢から出た戦士達は、3人を残して床や壁の模様削りをしている。それぞれの模様に1本線を足して、違う文字にするんだ。
ゆっくり線を引く分には、魔術式を作り出しているってことになるんだろう。

俺ももちろん、リウールとザイドも訳もわからず壁を削っている。
あ、でも壁を削るとちょっと空気が軽くなるんだよな。この気持ち悪さに魔術の影響はやっぱりあるんだろう。


そして3人はと言うと……。

「おら、コレが欲しかったんだろ!」
「ひぃぃぃ!」
「逃げんじゃねえよ!」
「ふひぃぃぃい!」
「おら、ご主人様だろうが」
「ごしゅひんしゃまぁぁぁあ!」


媚薬漬けになったハゲとフン1号2号を掘りまくっているのだ。
よくそのおっさん達相手に勃つね。感心しちゃうよ、ぼく……。

「おら、まだ精子が足りねえってよ!」
「あぁぁぁあ!」
「まだ出るんだろうが!」
「イクイクイクイク~!」
「出せなきゃ血ぃ絞るぞ、ゴラァ!」
「出りゅ、出しましゅぅぅう!」

「まあ、いいんじゃないですかね」
「今日のノルマは余裕で果たせそうですしね」
「ははは」
それでいいのか?
まあ、いいか。




ん?
これ、要石じゃねえか?

なんとか掘り起こせないかな……。
持って帰ってファガルに渡せたら、何か視えるかもしれない。
ぐっ、いけ、そう。
うっし取れたぁぁぁあ!

って、
「うぎゃー!」

要石を掘り起こしたら、ドサっと埃が落ちてきた。
「ど、どうした?シャリオ」
「どうしました?シャリオ様!」
「え、どうしたって……お前らコレ見えてねえの?」
「何もありませんけど」

え、めっちゃ埃じゃね?
え?他のヤツら見えてないの?

ん?ちょっと待てよ?
最近なんかで見たような。

《穢れにまみれた精霊の末期は吹けば飛ぶほどの小さな黒いモノとなる》

こいつら、精霊の成れの果てか?
吸い寄せられて、力を使い果たした、精霊達か?

《そうした精霊は消えて滅びるか、浄化を通して産みなおされ復活するか》

産み直すってどんなんだったっけ?
んー、身体に入れて、どうするんだったっけ?
明日、教会で調べ直しだな。

「『精霊』よ、ここで塵となり消えるか、俺の中に入り教会へ運ばれるか、選べ」
小さく問うと、黒い埃が体内に吸い込まれていく。
あああ、気持ち悪ぅ。
ゾワゾワする。
壁を削って空気と気分が良くなった分を、一気に超越していくぐらいの気持ち悪さだ。吐きそう。

まあ、でも仕方ないか。


「シャリオ、顔色悪いぞ?疲れたか?」
「初めてがこんなじゃ気分も悪くなるよな。定時になったし、帰るか?」
「え、でもハゲ達は?」
置いてくの?
「ああ、シャリオ様大丈夫ですよ。もう少し躾ておきます」
ええ、そんなのアリなの?

「えっと、俺達だけで帰って不審がられないか?」
「門番に『ハゲラーダ様はお楽しみ中です』とか言っとけばいいっしょ」
「ザイド頭いい~」
「うわー」
それでOK出るとかマジ屑じゃん、コイツら。
「じゃあ、またな」
「はい、シャリオ様」



「なあ、シャリオ。牢の中のヤツらと知り合いなのか?」
「あ、あー」
流石にバレるか。
どうするかなあ。
口止めしたら、黙っててくれるか?
まあダメだったらちょっとの間、拘束させてもらうか。

「あのさ、俺ら弱身握られてるからさ、シャリオがやろうとしてること、積極的に手伝うことはできねえけど……見なかった振りならできるから」
え?
いいの?

「……ありがと。助かるよ」
「おう。俺達だって、なんとかしてやりたい気持ちはあったんだし」
そっかー。そうだよな。
「うん」

「シャリオ、あのな」
「ん?」
「ありがとうな」
「おう」

こうして俺は、消極的な協力者を得たのだ。




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